魔王、初めての手料理
王都から帰ってきたイヴリスとルインが村に戻って来る頃には辺りはもう真っ暗、まだアリシア達は戻ってきていないようだったので自宅へと戻り眠りについた
そして翌朝、寝ぼけ眼で外を見ているとアリシアとサラの姿があった
扉を開けアリシア達を出迎えようとするとアリシアが突然ふらつきだした
「アリシア!」
ふらつき倒れる寸前のアリシアをイヴリスは間一髪で受け止めた。何かあったのかと様子を見てみるとただ寝ているだけのようだった
「相当無理をさせたようだな」
「この娘が自分で休まずに続けると望んでやってたんだ。当然壊れそうになったら吾輩が無理矢理止めてやったがな」
「とりあえずベッドに運ぶか」
イヴリスはアリシアをおんぶして部屋まで連れて行きベッドに寝かせた。こちらではまだ一日しか経過していないが、アリシアの体感ではおよそ十日は過ぎていることになっている
それだけの間休まずに特訓を続けていたらこうなるのは当然のこと
アリシアが起きるまでの間特に何かする予定がないイヴリス。ただアリシアが起きるのを待つだけでは暇を持て余してしまう
「そうだ、食事を用意した方がいいよな」
思い立ったら即行動、イヴリスはカミラに食事を分けてもらおうと家に向かった
しかし家に到着しても家に誰もいない、何処に行ったのかと探していたら他の者達と朝から収穫の仕事を行っていた
流石に作業を中断して飯を寄越せとは言えなかったイヴリスは仕方なく自宅に戻った
「しょうがない、今日は私が作るとするか」
「えっ・・・あるじが作るの?」
「なんだそんな心配そうな目をして。安心しろ、作ってるところは何度も見てるんだからそれを真似れば私にだって作れるさ」
「ちなみに料理の経験は?」
「あるわけないだろう?」
自信たっぷりに言い放つイヴリスを前にサラはそれ以上突っ込むことはしなかった
早速調理に取りかかるイヴリス、アリシアが来てからというもの家でも料理をしているので材料は一通り揃っている
「さて、何を作るか」
「ルーあれ食べたい!赤いのを卵で包んだやつ!」
「赤いのを卵で・・・あぁあれか、あれなら簡単そうだし材料もあるみたいだからやってみるか。ルイン、コカトリスの所から卵を採ってくるんだ」
「はーい」
ルインに卵を取りに行かせイヴリスは下ごしらえに入る。アリシアが以前作っていたので工程は理解している
「確か具材を細かく切っていたよな。"ウインドピーラー"」
風の魔法を使って用意した具材を細切れにしていく。だが加減が分からないイヴリスは具材を細かくしすぎて塵のようにしてしまう
続いて切った具材を炒めていくのだが、加減が分からないイヴリスはまたしてもやらかしてしまった
「火を通すならこっちの方が手っ取り早いだろ。"ヘルフレイム"」
今度は火の魔法を使用、だが当然そんな魔法を使ったら塵のように細かくした具材が跡形もなくなるのは目に見えていた
「おかしいな・・・同じようにやったはずなんだが」
「何処が同じようにだ。具材を選ぶ以外何一つ違うだろうが」
「むっ、じゃあそこまで言うならお前がやってみろ」
「はぁ・・・仕方ない、ちょっと貸してみろ」
今度はイヴリスの腕前を見兼ねたサラが厨房に立つ。先程と同じ具材を揃えたらサラは見事な包丁捌きで具材を均等な大きさに切っていき、切り終えるとフライパンに油を適量垂らして炒め始めた
イヴリスのように高火力ではなく適した火力で炒め、そこへいつの間にか用意していた艶のある白い穀物、米を混ぜ合わせていく
調味料を加え炒め終えたら皿に一度移し次はルインが持ってきた卵を使った調理に移る。溶いた卵を熱したフライパンに入れていき、完全に固まらないうちにくるくると巻いていく
それを先程皿に移した米と具材を合わせたものの上に乗せ、最後に包丁で卵に切れ目を入れて広げて完成
「どうだ」
「か、完璧・・・だ、だがどんなに見た目が良くても味が良くなければ話にならないからな」
そう言いながらイヴリスはサラが作った料理に手を伸ばす。結果的に普段食べているものと遜色のない出来だといのは認めざるを得なかった
「何故だ・・・何故お前が作れるんだ」
「一度見たらこの程度誰でも出来るだろ」
「・・・まぁいい、お前が作れる事はよく分かった。さっきのやり方を私に教えろ」
「はぁ~?教えてもらいたいのにその態度でいいと思っているのか~?教えて下さいって頭を下げるのが礼儀ではないのか~?」
「ぐっ・・・貴様!・・・・お、お願いします・・・」
「仕方ないのぉ!この吾輩が教えてやるとしよう」
サラに頭を下げて作り方を教授してもらうことになったイヴリス、それからアリシアが起きるまで猛特訓が始まった
「・・・・・ん。ここは・・・私の寝室?」
「おっ、目が覚めたようだな」
「イヴリス・・・・・村に戻ってきたところまでは覚えているんですがその後の記憶がないです。私結構寝ていましたか?」
「安心しろ、ほんの数時間だ。明朝に帰ってきてたからまだ昼前だぞ」
「そうですか、では十分休息も取りましたし私はまた鍛錬の方に・・・」
目覚めて早々また鍛錬に行くといい起き上がろうとするアリシア、しかしその直後お腹の音が鳴り響く。全員にお腹の音を聞かれてしまったアリシアは赤面する
「腹ごしらえしてからでも遅くはないだろう。無理に続けても却って効率が悪くなるしな」
「そ、そうですね・・・それにしてもなんだかいい匂いがしますがもしかして何か作っていたんですか?」
「あ、あぁ。お前が起きた時に食べさせる為にな」
そう言うとイヴリスは用意しておいた料理をアリシアの前に出した
「なんだか凄いグチャグチャですが・・・」
「卵がどうしても上手く出来なくてな。味の方は問題ないから安心しろ」
「まさか貴女が料理を作るなんて・・・何か企んでいるのでは?」
「そんなわけあるか、いいからさっさと食え」
イヴリスに勧められたアリシアはスプーンを手に取り恐る恐る料理を口に運んだ
「美味しい・・・」
「そうだろう!私が作ったんだ!不味いわけがない!」
「よく言うわ、これが出来るまで何回失敗したと思ってるんだ。貴様にはもう二度と教えてやらん」
イヴリスの背後でげんなりしている様子のサラ、イヴリスに料理を教えるということがどれだけ大変なのかその身をもって知り、金輪際教えない事を心に決めた
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