勇者の特訓
イヴリス達が村を留守にしている間、サラマンダーとアリシアの鍛錬は行われていた
ゴルドがオリハルコン鉱石で打った剣を完成させるまでの間は剣なしでの鍛錬となる
「それで今から何をするんですか?」
「まずは吾輩の力を受け取れるだけの器を大きくする鍛錬からだ。吾輩の手をとれ」
言われた通りサラの手をとる。すると暫くして手の先が徐々に温かくなってきているのを感じることができた
「吾輩の力が流れてきたのが分かるか?」
「はい・・・温かいのが伝わってきます」
「それが精霊と契約することで手にすることができる力、精霊力だ。今度はそれを体全身に行き渡らせてみろ。集中しろよ」
サラから受け取ったその精霊力を全身に張り巡らせる。感覚的には魔力に似ているものだったのでそこまで難しい行為ではなかった
精霊力が全身に行き渡ったのを感じた。するとサラが纏っていたような炎がアリシアの体にも同様に表れ始めた
始めは少し焦ったが熱は感じられず皮膚が焼けるなどのダメージもない
「今のお前のその状態を魔装という。どうだ?」
「凄いです・・・今までとは比べ物にならない程の力を感じます。体の奥からどんどん力が溢れてきて・・・っ!」
サラの精霊力を受け取ったアリシアは今までに感じた事のない力に高揚していた。しかしそれは長くは続かなかった
魔装状態になったはいいものの少しすると鼻の辺りに温かい感覚が伝わってきた。手で触れてみると鼻から血が垂れてきていた
更に脳に焼けるような痛みが走り先程まで熱を感じなかった纏っている炎が急に暴走し始めてアリシアを襲った
アリシアは暴走を必死に抑え込もうとするが、かえってそれが体の至る箇所から血が噴き出してしまう結果となりアリシアはその場で倒れて気絶してしまった
数分してアリシアは目を覚ます。自分の体を確認すると傷が無くなっている
「流石にまだ全身にやらせるのは早かったか」
「あの、さっきのは一体・・・」
「あれは吾輩の精霊力と貴様の魔力が反発し合った結果だ。反発してしまうとどうしても元から備わっている貴様の力が勝ってしまい吾輩の力が暴走を始める。暴走をさせない為には吾輩の力を受け取るだけの器を準備してコントロールしないとダメなんだ」
「な、なるほど・・・けどそういうのは事前に言ってもらった方が・・・」
「習うより慣れろだ。どうせこれから嫌という程失敗するんだから遅かれ早かれだ。さぁ分かったならさっさと再開しろ。時間は限られているんだからな」
魔装状態になって30秒も経過していないのにあの有様ではとてもじゃないが実戦では使えない。限られた時間を無駄にしない為にも回復して早々鍛錬を再開する
前回の失敗を踏まえて今度は体全体に力を行き渡らせず部分的に行っていくことに。だがそれでも維持し続けるのは難しく、サラに言われた通り何度も失敗が繰り返された
「はぁはぁ・・・中々上手くいきませんね」
「貴様センスないな」
「あの、私にはアリシアという名前があるので貴様というのはやめてほしいんですが・・・」
「名前を呼んでほしければ力を使いこなせるようになるんだな。半人前にすらなれていない今の貴様の名なんぞ呼ぶわけがなかろう」
そう言われてしまってはぐうの音も出ない。アリシアは一日でも早く使いこなせるよう鍛錬に励んだ
「そういえばもう随分と時間が経過したように思いますが全くお腹が空きませんね。眠気もない」
「この空間では食事や睡眠などの行為は必要なくなるからな。身体的疲労もなくなるが精神の疲労だけはどうにもならん、あまり精神を擦り減らしすぎるとここから出る頃には廃人になってしまうかもしれないから気をつけろよ」
それからもアリシアの特訓は続いた。最初は力をコントロールするのにかなり難儀したが休まずに続けたことで徐々に、本当に徐々にだが力の扱いを理解していった
まだ一定にコントロールすることは難しかったが暴走して気絶するということは無くなった
「最初に比べればほんの少しはまともになってきたようだがまだまだだな」
「サラ、貴女と以前契約していた方のこともこんな風に鍛えてあげていたんですか?」
「いや、奴は最初から吾輩の力を自分の力のように自由自在に扱っていたな。貴様とは出来が違っていたな」
「手厳しいですね・・・」
アリシアはサラマンダーの力を扱うだけでもこんなに苦労しているのに前契約していた人物は他の大精霊の力も使いこなしていた。自分に秀でた才はないのかもしれない、だがアリシアには勇者に選ばれる為に誰よりも努力した自負がある
「続きをお願いします」
「もう数日はぶっ続けでやってるが休息は入れないのか?」
「心配してくれるなんてやっぱりサラさんは優しいんですね。でも大丈夫です、凡人は人より何倍も努力しなくては追いつけないので」
「別に貴様の心配なんかしておらん、吾輩が割いた時間が無駄になるのが嫌なだけだ。そこまで言うならこれまでより一層厳しくいかせてもらうぞ」
「はい、よろしくお願いします」
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