魔王と王女
セルビニア王国の王女であり次期国王である彼女の名はセシル・フォン・ウィンストン。彼女には弟妹がいない、通常王族、貴族の間では不慮の事故や病等何かあった時の為に複数の子供を作る習わしがある。しかし現国王であるクロッサスと女王の間には中々子供が出来ず、このセシルだけしか授かることができなかった
幼い頃からセシル一人に圧し掛かる重圧は計り知れないもの。自分に万が一の事があれば王家の血を途絶えてしまう恐れがある・・・そう思って勉学や剣術、ダンスや作法など必要なものは必死に学んだ
だがそれでも今までは男が王として君臨していたので女であるセシルに務まるのかと疑問に思う貴族連中も少なくはない。その一方で一部の貴族からはセシルの結婚相手として立候補してくる者も多く、その理由は王族の血と地位を確立すること。そしてセシルを取り込むことで自分達が国の実権を握ろうと邪な考えを巡らせている
「それでも私は孤独に戦い続けたのです」
「おい、なんかこいつ聞いてもいないのに急に一人で喋り始めたぞ・・・」
「この人なんか怖い・・・」
「貴女達がいつまでも出ていかないからでしょうが。どうせなら暇な私の話相手位にはなりなさい」
部屋から出るタイミングを逃してしまったイヴリス達は何故か王女セシルの話に付き合わされる羽目になっていた
「で?何でお前はこんな所に閉じ込められてるんだ?」
「お前とは無礼な方ですね、私はこの国の王女ですよ」
「それはさっき聞いていたから知っている。いいから理由を話せ」
イヴリスに急かされセシルは淡々と話し始めた
セシルがこの部屋に幽閉されていたのはどうやらアリシアが原因で、アリシアが死刑と判決された日ただ一人だけ死刑の反対を提言した為国王の命によって閉じ込められたらしい
「アリシアは私と同じ女性で人の上に立つという境遇が似ていたから一方的にですが気にかけていたのです。だからこそ分かるのですが彼女は決して他人を裏切るような行為はしない人です」
「どうやら王族の中にもマシな奴はいるようだな」
「お父様・・・国王の様子はおかしい。以前はもっと冷静に物事を見極めていたはずなのに。様子が変わってしまったのはフェリックスという騎士隊長が新たに任命されたあたりからな気がするんです」
その名を何処かで聞いた事があったイヴリスは思い返す。そこでアリシアの救出の際に一人だけ立ちはだかってきてルインに相手をさせていた人物を朧気ながらに思い出した
遊び感覚とはいえルインの相手をしていた者だったからなんとなくは覚えている。その男が今回の件に関わっているのか定かではないが気にかけておく必要はありそうだ
考えているイヴリスにセシルは続けた
「貴女達、このタイミングの侵入者という事はやはり魔王軍の手の者ではないですか?」
「近からずも遠からずといったところか。私達は魔王軍とは関係ない」
「では勇者アリシアと何か関係があるのではないですか?」
「・・・そうだとしたらなんなんだ?」
「もしそうでしたら協力させてほしいのです」
「協力?」
王女からの提案にイヴリスは警戒した。こちらの懐に入り込むことで油断させようとしているのではないかと
そう思い看破の魔眼でセシルを暴こうとする。だが彼女の言葉には一切嘘はなかった
「どうやらお前の言葉に嘘偽りはないようだな。で?具体的にはどう協力してくれるんだ?お前ここから出られないんだろ」
「あっ、そうでした・・・」
「・・・じゃあ何かアリシアを嵌めた手がかりみたいなのに心当たりはないか?」
「・・・・・・」
「邪魔したな、他を当たる」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
少しでも期待していたイヴリスは後悔した・・・これ以上ここにいても意味は無いと思い部屋を立ち去ろうとするとセシルが足を掴んできた。引き摺られている姿は到底王女には思えない
「お、おい離せ。お前それでも本当に王女か?」
「お願いします!きっとお役に立ってみせますから!」
「嫌に決まってるだろ、お前と協力関係になったら面倒事が起こる気がする!」
「このまま叫んで衛兵を呼んでも構わないんですよ!」
セシルに脅されたイヴリスはそこで堪忍袋の緒が切れる
「離れろ」
「えっ!か、体が勝手に・・・」
「私が寛容なうちに諦めろ。それ以上突っかかって来るならお前もろともこの城を消すぞ」
イヴリスの迫力に圧されたセシルはそれ以上何かをを言ってくる事はなかった。イヴリスの言葉が脅しではなくそれだけの力があるのだと肌で感じ取ることはできた
「分かりました・・・最後に一つ教えて下さい。アリシアは無事なのですか?」
「あぁ、アリシアは無事だ。今は訳あって姿を現すことはできないが元気にやっている」
「そうですか」
「随分と素直に信じるものだな。嘘だとは思わないのか」
「人を見る目だけはそれなりに自身があります。貴女からは悪意を全く感じませんので。お話できて良かったです・・・魔王イヴリス」
「お前・・・気づいていたのか。どうしてあんな芝居をしていたんだ」
「私にも貴女と同じ眼があるので貴女が姿を変えていたのは最初から気づいていました。アリシアを連れて行った人物がどんな人か・・・言い伝えられた話ではなく直接話して判断したかったのです」
そう言い放つセシルの眼にも看破の魔眼が宿っていた。しかも言葉だけでなくイヴリスの変身した姿まで看破する程の魔眼となるとかなりのものだ。セシルはさっきまでとは様子が違い非常に落ち着いていた
「魔王イヴリス、先程アリシアを陥れた証拠を求めていましたね。それなら騎士隊長フェリックスを調べてみて下さい。私をここに閉じ込められたのもフェリックスが提言したのが原因なのです」
「お前の眼があっては困ることがあるから・・・か。分かった、感謝するぞ」
「魔王イヴリス」
「なんだ?」
「アリシアを頼みましたよ。あの子は真っ直ぐないい子ですから」
「言われなくとも」
予期せぬ出会いではあったが手がかりを入手することができたイヴリス、セシルの言う事を信じフェリックスを探すことにした
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