王都偵察
マーガレットと別れ町を出たイヴリス達が次に目指したのは王都、変身した姿のまま侵入し王都の偵察にやって来た。王都の空気はホルストンの町よりも殺伐としているようで物々しい雰囲気が漂っていた
ついこの間までこの王都には魔王が来ていたのだから無理はないだろう。と、当の本人であるイヴリスはそんな空気を気にする素振りはない、それよりも腕に纏わりついているルインに苦戦していた
「おいルイン、町にいた時からくっつきすぎだぞ。歩きづらいだろ」
「だって久しぶりにあるじと2人きりになれて嬉しいんだもーん」
イヴリスが離れるよう制するも2人でいられるのが相当嬉しいらしく頑なに離そうとしないルイン、ここ最近我慢していたからかその反動がきているのかもしれない
「そういえばルイン、お前この前王都に来るの楽しみにしていたな」
「え?うん」
「この前はアリシアの救出で大して見ることが出来なかったからな。どうせなら観光していこうじゃないか」
「ほんと!?わーい!」
「遊んでた事はアリシア達には内緒だぞ。怒られてしまうからな」
ルインの発散も兼ねて2人は観光を行うことにした。勿論その間の偵察も怠らない、色々な場所を見て回りながら周りの人間の会話に耳を傾けた
話を聞く限りどうやら町や村を襲う魔王軍・・・もとい謎の軍団から国民を守る為に王都に常駐していた予備兵士を派遣しているらしい。そのせいで王都は今普段より手薄な状態、それに対して王都に住まう国民もやはり不安に思うところがあるようでそれによってこの殺伐な雰囲気が生み出されていた
王都の一通りめぼしい場所を見て回った後、2人は城がある門の前までやって来た
「流石に王族がいる城なだけあって警備は厳重なようだな」
「あるじ、ここも観光する?」
「そうだな・・・せっかくだから入ってみるか」
イヴリスは不敵な笑みを浮かべ、王城への侵入を試みることに。ここより先に進めるのは限られた人物だけで容易に入ることはできない。そこでイヴリス達は自身の認識を阻害する魔法をかけて王城へと侵入した。王城の警備は人こそ多いものの魔法関連の対策はザルで誰にも気づかれずに王城の中を散策することができた
しかし無駄に広い上にどこを曲がっても似たような変わり映えの無い通路が続いて次第に2人は今どこにいるのか分からなくなり迷子になってしまった
「まよっちゃったねー」
「だな、何かアリシアを罠にかけた証拠みたいなのが見つかればと思ったんだが・・・そんな都合よくは見つからないか」
「何処か適当に開けてみよー。あっ、この大きな扉とか何かありそー。ん鍵がかかってるー・・・えいっ」
「あっおい、無闇に開けたりしたら・・・」
イヴリスの制止を聞かずルインはドアノブに手をかけるが、鍵がかかっていたので無理矢理その鍵を壊して扉を開けてしまった。すると扉の先にはベランダで何やら黄昏ている女性が立っていた
「はぁ・・・どうしてこんな事に」
「なんだか悩んでるみたいだね」
「そうみたいだな」
女性は物思いに耽けていてこちらが扉を開けたことにも気づいていない様子。バレないうちに部屋をあとにしようとゆっくりと扉を閉めた瞬間、女性が再び独り言を呟いた
「アリシア・・・」
「アリシア?」
「へっ?」
女性の口からアリシアの名が出たことでつい反応してしまったイヴリス、それに気がついた女性とバッチリ目が合う。認識阻害をかけていたイヴリス達だがこの魔法はあくまで他の対象に意識を向けさせて自分達の存在を誤魔化しているだけで、相手がこちらに意識を向けてしまうと効果が無くなってしまう
女性は突然現れたイヴリス達がこの城の者ではないと瞬時に判断して声を上げた
「な、なんですか貴方達は!」
「やばっ。落ち着け、私達は決して怪しい者じゃ・・・」
「誰か!誰かき・・・むぐっ!」
咄嗟に女性の背後に回り口を塞いで叫び声を遮った。女性は必死に抵抗してくるがイヴリスの前ではビクともしない。しかし先程の声を聞いていた兵士の一人が部屋の前まで駆けつけてしまっていた
「姫、どうかされましたか?」
(姫・・・?この女いい身なりをしているとは思ったがまさかお姫様だったとは)
まさか忍び込んだ部屋の一発目がこの国の姫の部屋だったことに自分の運の無さを恨む。イヴリスは扉の向こうにいる兵士をどうにかしろと目配せで指示を送った
「い、いえなんでもありません。ちょっと虫が入ってきて驚いただけです。下がってよろしいですよ」
「そうですか、畏まりました・・・ん?鍵が壊れている?まさか・・・」
ルインが壊した鍵に気づいた兵士、こちらの存在が勘づかれてしまったかと思ったが兵士の予測はその斜め上をいくものだった
「姫様・・・また部屋を抜け出そうとされたのですか?国王から罰を受けるのは私達なのですからどうか大人しくしていて下さい」
「ご、ごめんなさいね・・・」
「では私は巡回がありますので、何かありましたらお呼び下さい」
どうやらこの姫様は以前から部屋に閉じ込められているのか何度か抜け出そうとしていた前科があるようだ。そのお陰でイヴリス達は助かり兵士は部屋の前から離れていった。なんとか難を逃れたイヴリスは姫様に大声を出さない事を条件に拘束を解き自由にさせた
「いやぁ驚かせて悪かったな。まさか姫様の部屋に入ってしまうとは」
「何者ですか貴女達は。見たところ子供のようですがただの子供がバレずにここまで来れるとは思えません」
「私達は決して怪しい者じゃないんだ」
「そーだよー、ルー達は観光をしてただけだよー」
「コラッ、安易に名前を出すな」
「本当になんなのですか貴女達は・・・」
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