勇者強化計画
イヴリスが王国に現れた事は魔王国にも遅れて伝わった。その報告を受けたマリアは当然飛びついた
「なんですって!?イヴリスがセルビニアの王都に現れた!?それは本当なのシャドウ!」
「私が偵察していた町で聞いた特徴もそうですが自分で魔王イヴリスと名乗ったそうなので信憑性の高い情報かと思います」
シャドウはイヴリスに改竄された情報をマリアに報告をした後、近隣の町や村に赴いてイヴリスの捜索に励んでいた。そこで得た先日の騒動の情報を再び報告しにやって来ていた
シャドウの報告を一通り聞いたマリアは考えた。突拍子も無い行動をしてくるのはいつものイヴリスと変わらないが、まさか勇者を助けるという行動に出るとは予想だにしていなかった
「どうして勇者なんかを助けたかは分からないけど遂に尻尾を掴んだわよイヴリス・・・私が直々に王国へ行って確かめて来るわ。アイリーン」
「どうかしたかしらマリアさん」
マリアが四天王の一人アイリーンを呼ぶと彼女はまるで呼ばれるタイミングが分かっていたかのようにすぐ現れた
「私はイヴリスを探す為暫く魔王国を離れるわ、だからここを離れている間貴女に魔王国の管理をお願いしたいの、全指揮権を委ねるから何かあった時は貴女の判断でそれを行使していいわ」
「分かったわ、魔王様を連れ戻せるといいわね。それまで私がしっかりと留守を預かるわ」
アイリーンは四天王の中では一番の若手だが、何でもそつなくこなす万能タイプ。ドゥルージとグレイスは考えるよりも先に手が出るタイプだしドラグは少々頭が固いところがあるので柔軟な対応が出来るアイリーンに魔王国の管理を任せるようにしている
今回はいつもより長く魔王国を離れる事になるだろうが、先日大打撃を受けた王国は暫く攻めては来ないだろうしイヴリスの襲来でそれどころではないはず。魔道国も基本王国と連動しているから単独で攻めてくる事はないだろうと見越してマリアは魔王国を離れ転移門を使って王都へと向かった
「ハッ・・・ハッ・・・」
アリシアの朝は早い。陽が昇る前に目を覚まし朝から一時間の精神統一、それが終わった後は村の周りの安全確認をしながらランニングをする。ここの村には様々な魔獣が人と共に生活を送っているから見回りをする程の危険度はない。そもそもここには魔獣よりも畏怖の対象となるイヴリスがいる、人間よりも敏感にそれを感じ取ることができる魔獣は滅多にこの村に近づくことはないだろう
だが何事にもイレギュラーは存在する。それを身をもって経験しているアリシアは念入りな周囲の安全確認を怠らなかった
ランニングを済ませた後は剣の素振りを行う。ゴルドに作ってもらった剣の感覚に少しでも早く慣れようと普段より多めの練習量をこなす。これが毎日の日課で勇者になる前から欠かさず行っている
「ふぅ・・・そろそろ戻りますか」
朝の日課を終えた後は浴場で汗を洗い流してから家に戻り朝食の準備、家にはアリシアの他にイヴリスとルインがいる。その2人は朝食を作り終えても一向に寝室から出てくることはない
耐えかねたアリシアは二階へと上がり、ベッドで気持ちよく寝ている2人の布団を引っ剥がして無理矢理叩き起こした
「いつまで寝てるんですか。早く起きなさい」
「アリシア・・・いやまだお天道様が顔を出したばかりなんだが・・・」
「もう一日は始まってるんです、顔を洗って早く朝食にしますよ。ルインさんも早く起きて下さい」
「まだねむい~・・・」
流石に日課まで付き合わされるということはなかったが、朝食時になるとこうして必ず起こしてくる。お陰で朝寝坊なイヴリス達は今では規則正しい生活を送っている
朝食を終え片付けを済ませるとアリシアは再び外に出る。今度はアリシアやルインも一緒に連れて行く
「おい、朝から何処に連れて行くんだ」
「ルーお菓子食べたーい」
「今朝食食べたばかりだから駄目です」
目的地も伝えられずアリシアについて行くこと数十分。着いた場所は村から大分外れた場所で以前新築を作る為に大量の樹を伐採した所だった
「こんな所まで来て何をするんだ?」
「先日力を貸してくれると言いましたよね、早速貴女の力を貸して下さい。イヴリス、私を今よりも強くしてくれませんか」
「強くしろって・・・お前は人間の中で一番強いから勇者と呼ばれているんじゃないのか」
他の人間がどの程度の力量なのかイヴリスは知らないが、一度矛を交えたことのあるアリシアの実力は理解しているつもり。四天王と戦える位の実力があるアリシアであればただの人間にそうそう遅れをとることはないはずだ
「確かに一対一であればあの国で私と対等に戦える者は私の知る限りでは1人位しかいません。けど相手は国家、今の状態で乗り込んでも数で押され消耗されたところをやられるのがオチです。それに王国にはまだ私の知らない隠し玉があると思うんです」
「そいつらの相手は全部私して蹴散らせば問題ないんじゃないか?」
「貴女が暴れ回っては侵略と間違われてしまいます。イヴリスにはあくまで私のサポートをお願いしたいのです」
「なるほどな・・・よし!私に任せておけ!アリシアを今よりも格段に強くしてみせよう!」
こうしてアリシア強化計画が始まった。早速アリシアに頼りにされたイヴリスはノリノリ、しかしその一方でもう1人の方の機嫌は徐々に悪くなっていった
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