救出後
勇者アリシアの救出に成功したイヴリスはアリシアを村人達に紹介した
「あーもしかしたら知っている者もいるかもしれないがアリシアだ。訳あってここに暫く住むこととなったからよろしくな」
「アリシアって・・・まさか勇者様か?」
「えっ!本当に勇者様!?」
イヴリスが紹介をすると村人達がゾロゾロとやって来てホルストンの町の時のように瞬く間にアリシアは取り囲まれてしまった
「すごーい!勇者様にお会いするの初めて!」
「よしっ!今日は勇者様に満足して頂けるよう盛大に歓迎するぞ!」
「えっ・・・いや私は・・・」
盛り上がる村人を前にアリシアが口を挟む余地はなかった。まだあまり娯楽を取り入れていないのでこういう時は全員全力で宴会を楽しむことにしている。段取りも手慣れたもので突然決めた事にも関わらずあっという間に準備を終えてアリシアの歓迎会が行われた
村人達が盛り上がっている中、料理に手をつけている気配がないアリシアを見てイヴリスが声をかけようと近寄る。するとアリシアは露骨に険しい顔つきになり警戒心を強めた
「そんな怖い顔をしているところを子供に見られたら泣かれるぞ。ほれ、出来たての料理を持ってきたから食え。まともな食事をさせてもらえてなかっただろう」
「いりません、毒が入っているかもしれないですから」
「毒なんか入れるはずないだろ。はぁ・・・別に私を嫌うのは構わないがこれは村の人間がお前の為に作ったものなんだからちゃんと食え」
イヴリスが食べるよう進めても中々口に入れようとしないアリシア、そのの様子を見て心配になったルカがこちらに近寄ってきた
「勇者様これ嫌いだった?それともお口に合わなかった・・・?」
「うっ・・・」
「ほれほれ、勇者様が子供を心配させていいのか?」
いくら拒もうと子供の純粋な眼差しで見つめられては食べざるを得ない。ルカの援護によりようやく料理を口にするとアリシアの表情が僅かに緩んだ
「おいしい・・・」
「ほんと?良かった!こっちのお料理はね私もお手伝いしたから食べてみて!」
気を良くしたルカが他のテーブルからあれやこれやと料理をアリシアの前へと並べていく。すると今度はそれを見たカミラが皿にクリムシューを山盛りに乗っけてやって来た
「イヴさん、新しいクリムシューが出来たから良かったら味見してみてくれる?」
「ほぉ、どれどれ・・・ん!いつものクリムシューと違ってなんだかフルーティだな!クリーム以外にも何か入れたのか」
「そうなの、果物がたくさん採れたから果肉を入れてみたのよ。他にも色んな味があるから勇者様もよろしければ食べて見て下さいな」
「流石ママさんだ。ほら、お前も食べてみろ」
「では頂きま・・・ウムッ!」
アリシアが手に取ったクリムシューを口に近づけた瞬間、イヴリスがその手を押した事でクリムシューはアリシアの口に入ることなく顔面に直撃、顔中がクリームまみれになった
「ぶわっははは!暗い顔が随分といい顔になったじゃないか!ハハハハ・・・ムグッ!かっらぁああ!」
「食べ物で遊ぶなんて作った人に失礼ですよ」
イヴリスにやられた仕返しにと今度はアリシアが香辛料のたっぷり入った激辛料理を口に突っ込んだ。一瞬で汗が吹き出し口から火が吹き出る様な辛さにのたうち回るイヴリス
そんなこんなで歓迎会は滞りなく終了、終わった頃にはいい時間になっていたので自宅に戻り床に就くことにした
「で?なんでお前は私の家にいるんだ?勇者様用に用意した部屋があると村の人間が言ってたよな?」
「貴女が何をするか分からないのに離れるわけにはいきませんから」
「お前私の事好きすぎだろ」
「寝言は寝て言って下さい」
何を言ってもアリシアは聞く耳を持つ気配はなし、イヴリスも今日一日色々あって疲れたのでそれ以上は追求せず服を脱ぎ捨てベッドへと直行。家にはベッドが二つ、アリシアが片方使うことになるので自然とイヴリスがルインと添い寝する形になった
「ルーあるじとぎゅーして寝るー♪」
「あまりくっつかれると寝れないんだが。まぁそれはいいとして・・・お前は寝ないのか?」
「お構いなく」
イヴリス達が寝ている横でアリシアはそれを隣のベッドの上で座りながら監視をしていた。自分達が寝静まった頃に寝首でも掻こうとでも思っているのかと思ったがそんな雰囲気でもない。本当にただ監視をしているだけのようだ
仮に寝ている時に襲われたとしても今のアリシアには天地がひっくり返っても自分を害することはできない。気にせず寝に入ろうとしているとアリシアが問いかけてきた
「魔王イヴリス、貴女の目的は何ですか。この村やホルストンの町の事も・・・貴女の行動が理解出来ません」
「なんだ、やっぱり町の事も気づかれていたか・・・信じるか信じないかはお前次第だが私は人間に危害を加えるつもりはない。私はただ退屈だった日常から抜け出したかっただけでそれ以上もそれ以下もない」
「では何故私を助けたのですか。貴女と私は一度の面識しかなく助ける義理なんてないはずです」
アリシアが問うとイヴリスは押し黙った。中々問いかけに答えそうになかったので再度聞こうとしたところでイヴリスはようやく口を開いた
「アリシア、お前のフルネームはなんだ」
「なんですか急に。私の質問に答えて下さい」
「いいから答えろ」
イヴリスの意図が分からなかったが答えない限り先に進みそうになかったのでアリシアは自身の本名を明かした
「アリシア・アリアハートですが・・・」
その名を聞いたイヴリスは一瞬目を見開いた後、どこか懐かしむ様な表情をしていた
「・・・ふっ、アが多いな」
「馬鹿にしているのですか?」
「いやいい名だ。どうやら私の勘は正しかったようだな。先程の質問の答え、その名がお前を助けた理由さ」
「どういう意味ですか?ちゃんとした説明を・・・」
「私はもう寝る、お前もちゃんと寝るんだぞ」
意味が分からず問いただそうとするもイヴリスはわざとらしい寝息を立てて眠りについてしまった
疑問を残したままアリシアは宣言通りイヴリスが変な行動を起こさないか徹夜で監視を行うことにした
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