森に佇む追放者
マリアが放ったシャドウは嘘の真実を刷り込ませて追い返した。そしてイヴリスはマリアにここを覗かれても問題がないよう対策を始めた
「イヴ殿、また何処かに出かけるのか?」
「あぁ、ちょっとした仕掛けをな」
イヴリスは村の外れの方までやって来た場所にある樹を見つけるとその樹に魔法陣を刻み始めた。刻み終えた魔法陣に魔力を軽く込め、それが終わったら次の場所に移動し同じように樹に魔法陣を刻む
それを全部で六箇所、線で繋げると六芒星の形になるような位置に魔法陣を設置した
「これで最後だな」
最後に刻んだ魔法陣に魔力を込めると魔法陣が光り出す。他箇所も同様に光るが少しすると収束していき光は消えてしまった
魔法陣が光る前と特に何も変わってない為一見失敗したかの様に見えたがこれで問題なく展開できている。この魔法陣の内側にいる限りは手鏡等の道具や魔法で覗き見てもイヴリスを視認することはできない
「もう一つの方は実際に起こってからじゃないと確かめられないな」
マリア対策の他にも追加で他の結界も張っておいた。結界内に村に敵意を向ける者が入るとイヴリスに報せが来る仕組みとなっている
これでどんなに離れた場所でも異変を感じたら村に戻ってくることができる
「さてっ、これでこっちの件は片付いたな・・・っとそうだった、色々あって村の人間にまだアレを渡していなかったな」
マリア対策の方に気を取られていて他にやることがあったことを忘れていたイヴリスは村に戻ると村人達に声をかけた
「おーいお前達、一旦集まってくれー」
「なんだなんだ?」
作業をしている村人に手を止めてもらい集めると、イヴリスは村の人間達の為に商会で手に入れた洋服を目の前のテーブルに広げてみせた
ルイス宅にはそこそこの服はあったが、殆どの村人達は数着程度しか持っていない。その数着を使い回しているせいで袖口の部分等がボロボロになっていることを商会に並べられていた服を見た時に思い出し、急遽追加で購入して村人達に渡そうと決めていた
作業する時は今までの服でもでもいいかもしれないが、家にいる時位は汚れた服ではなく綺麗な服で過ごしたいだろう
「すごーい!お洋服がたくさん!これ貰っていいの?」
「あぁ、好きなのを選んでいいぞ」
「やったー!イヴお姉ちゃんありがとう!」
新品の洋服を見たルカや他の子供達は喜び、自分に合いそうな服を次々と選んでいった。子供達の食いつきもよかったがその中でも特に女性陣達の食いつきが凄まじく、数分もしない内に服はテーブルから無くなっていた。そこに遅れてゴルドがやって来る
「なんだ、随分と賑やかだったから来てみたが服を買ってきたのか」
「町でちょっと安く買えたんでな。ゴルドもいるか?」
「いや、儂は持ってきてた作業着がまだ使えるからそれでいい。それよりもわざわざ服なんぞ買わなくても頼んでくれれば儂が作ってやったってのに」
「なにっ?お前服も作れるのか?」
「勿論じゃ、出来損ないだったからその分色々な事に手を出していたんじゃ。言ってなかったかの?」
「いや初耳なんだが」
それを先に言っておいてくれれば服よりも安い布を大量に買ってきていた。イヴリスは服装には無頓着だし自分が着れば何でも似合うと自負しているから特に拘りがない。しかし人によっては好みがあるだろうからゴルドが作れるのなら自分好みの服をオーダーして作ってもらうのがいいだろう。家が完成した後、余った木材で追加で家屋や魔獣達の小屋を作り終えてからのゴルドは手持ち無沙汰にしているようだったし物が良ければ売りに出して村の資金の足しにするのもいいかもしれない
「町で布を仕入れるのもいいがシルキィワームとネットスパイダーという魔獣を捕まえればここで布から作ることもできるぞ」
「ほぉ面白そうだな。よし、今度見つけたら捕まえておくとしよう」
この森にいなかった場合は町で情報を集めればいいだろう。なんて事を考えていると、イヴリスの頭に警告音が鳴り響く。その音は何者かが結界の内側に入った事を知らせる音である
「誰かこの村に近づいてきているな」
「なんじゃと?こんな辺鄙な村にか?」
「ちょっと見てくる。念の為お前は隠れておいた方がいいぞ」
先程張ったばかりの結界が早速役に立ってくれた。この村を知る者であれば元々村の住人ではなかったゴルドがいることを良くは思わないだろう。村に入る前に対処するので大丈夫だとは思うが身を潜めておいてもらうことにして、ルインにもしも村に誰か来たら誰だろうと入らせないよう言いつけてイヴリスは報せがあった場所へと様子を見に行った
ものの十数秒で到着すると樹の上を気配を殺しながら相手を観察、そこには馬車が数台停まっていてその周りには兵士と思われる者が何人かいた
「ほら、さっさと降りろ!」
強い口調で兵士に促され降りてきたのは若い男女、全員で10人に満たない人数。あの人間達はこの村の人間と同じような事で捕まったのか顔は麻袋で覆われ、手には枷が付けられていた
全員が馬車から降り一列に並ばされると顔を覆っていた麻袋が外される。ここが何処なのかと辺りを見渡す人間達に兵士が言い放つ
「ここを真っ直ぐ進んでいけばお前らと同じ奴らが住んでいるそうだぞ。そこに行けば枷を外してもらえるかもな。この辺りは魔獣がうようよいるらしいからもう居ないかもしれないが」
「精々足掻くといいさ」
兵士達は笑みを浮かべながらそう言うと馬車に乗って帰っていった。それを追いかける者もいたが当然追いつくことは出来ずに振り切られてしまい、森の中に取り残された人間達は途方に暮れていた
「くそっ、これから一体どうすれば・・・」
「一先ずあの兵士が行っていた村に向かった方が」
「あいつが言っていた事が本当とは限らないわ。引き返せなくなるかもしれないからここは慎重に・・・」
「村はあっちにあるから私が案内してやろう」
「え?・・・・きゃあ!?」
突然現れたイヴリスに声をかけられた女性は悲鳴を上げそれに釣られ他の者達を一斉に身構える
「驚かせて悪かったな、私は村に住んでいる者だ。困っていたようだから案内しようと声をかけたんだ」
「本当にこんな場所に村が・・・?」
「ここには魔獣がそこら中にいるんじゃないのか?信じられないな・・・」
「来るか来ないかはお前らで決めろ」
突然のイヴリスの登場で戸惑いを隠せない人間達はどうするかと決めかねていたが、この場に留まっていても解決策は見い出せないと考えたのか結局はイヴリスの後ろについていき共に村を目指していた
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