勇者と魔王、意図せぬ二度目の邂逅
ホルストンの町に突如やってきた勇者軍、思いもよらぬ来訪者にイヴリスはダラダラと冷や汗が流れ始めた
(なんでこんな場所に勇者達がゾロゾロとやってきたんだ!もしかして私の居場所を嗅ぎつけて?いやそれだったらマリア達の方が先に気づくはず)
勇者達にもし気づかれでもしたら大事になってしまうのは明白、逃げることは容易だが魔王が生きていた上に人間の町に侵入していたとなると今後他の村や町においそれと足を踏み入れることが出来なくなってしまう。それはどうにか避けたいところ
前回のお店でクリムシューでも買ってのんびりしてから帰ろうと思っていたが予定を変更、早々にこの町を出る準備に取り掛かる
「じゃあマーガレットこれは有難く貰っていくな。私達はこれをしまってもう帰るから、行くぞルイン」
「えっ、もう行かれるのですか?それにしまうって・・・こんな大量の品馬車なしでは運べないですよね」
「いや、私にはこれがあるから大丈夫だ」
そう言うとイヴリスは収納魔法を使い貰った品どんどん入れていった。その光景を見ていたマーガレットが驚いた様子で聞いてきた
「イヴさん収納魔法も使えるんですね!」
「おぉそうだが・・・どうしたそんな急に興奮して」
「収納魔法を使える人材は商人からしたら喉から手が出る程欲しい人材なんですよ。しかもあれだけの量を入れたっていうのにイヴさんの収納魔法の許容量はまだまだ余裕があるみたいですし・・・イヴさん是非私達の商会に!」
「いやそれは興味ない」
「ですよねぇ・・・」
即答で断られたマーガレットはガックリと項垂れる。収納魔法なんて大なり小なり皆使える特段珍しいものでもないと思っていたが、よくよく考えてみると村や町でも使っているところを見たことがない事に今更ながらに気がついたイヴリス
マーガレットは口が堅いタイプに見えるから他人に言いふらすことはないだろうが、これからは目立たぬように使うことにすると決めた
「とりあえず一度帰るがまた近いうちに来るからその時はまたここで買わせてもらうぞ」
「はい!お待ちしております」
マーガレット達と別れたイヴリス達は勇者達のいる町の門の方へと向かう。この町には出入口となる門は一つしかない、反対方向から城壁を飛び越えて接触しないようにすることもできるが、怪しい行動をすれば怪しまれるかもしれないので敢えて正面突破を選択
門の方に近づくにつれて人だかりができてきた。一目だけでも勇者を見たいという野次馬達が町中から集まってきている様だ
そこに先程通りすがった男もいたので勇者達がこの場に来た目的を知っていないか聞いてみる事に
「おいそこのお前、勇者・・・様達はこの町に何しにきたのか分かるか?」
「あぁ、なんでも今回の戦でかなりの痛手を負ったらしいぞ。それで一時休息を取る為にこの町に寄ったそうだ」
男の言葉で勇者軍がこの町に来たのはただの偶然で自分目当てではないと分かりホッと一安心、しかしここに長居していてはいずれ自分の正体がバレてしまうかもしれない。イヴリスは一刻も早くこの町を出る為人の波を掻き分けて進んでいく
「っとその前に・・・奴らだと流石に私の姿は知られているだろうからな。仕方ない、姿を変えるか」
イヴリスは人気のない場所まで行き変身の魔法で姿を変えることに。みるみるうちに体が縮んでいきあっという間にルインと同じ位の子供の姿へと変身が完了した
「わぁ~!あるじがルーと同じ位になった!可愛い~」
「そうかそうか、どんな姿になろうとやはり私の魅力は抑えられないか・・・ってそんな事を言っている場合じゃない、気づかれないうちに町の外に出るぞ」
この姿であればそう簡単にはバレはしないだろう、あとは魔力で勘づかれないよう細心の注意を払いながら再びイヴリス達は町の外を目指した
ルインと手を繋ぎながら歩いていれば傍からは姉妹のようにしか見えないはず、コソコソとせず堂々と歩いていく。移動している最中町の人間が話しているのを耳にしたが、どうやら町の中に勇者軍全員は入れることが出来ないらしく一部は町の宿を借りることができたが、その他の大半は町の外でテントを張って野営をしているようだった
外で野営をしている人間達は恐らく一般兵、宿を利用しているのは指揮官級の人間達と予測、勇者軍は疲労しきっていて自分達の事で手一杯だろうし町の外に出ることができれば安全は確保できるだろうとイヴリスは考えていた
進むにつれ段々と人が多くなっていったがそれは逆に身を隠すのに都合がよく、体を小さくしたこともあり人混みの中をスイスイとすり抜けていき2人は順調に門の前までやって来ることができた
「ぷはぁっ!ようやく抜け出せたな・・・ん?」
「ん?貴女達は・・・」
「うへぇあ!?勇者!?」
ようやく人の壁を抜け出したと思ったらなんと勇者が目の前に姿を現した。突然のことで変な声を出してしまったがすぐに平静を装う
「失礼しまーす・・・」
「そこの2人、ちょっと待って下さい」
あまり顔を見られていないうちにさっさとトンズラしようとしたイヴリスだったが勇者に呼び止められる。バレてしまったのかと思い一瞬身構えたが、その心配は杞憂に終わった
「子供2人・・・ですかね?町の外へ行くのなら十分に気をつけて下さい。外には危険がたくさんありますから。良ければ兵士を数人護衛として・・・」
「け、結構!失礼します!」
勇者は子供と分かると外に行こうとするイヴリス達に護衛をつけようとしてきたが、イヴリスはそれを突っぱねて門へと一直線で走っていった。それに対して勇者は特に怪しんだりさしている様子はなく、再び町の人達の方へ向き直り歓声を受けていた。その時に聞こえてきた名前が足を止めさせた
「アリシア様ー!」
「アリシアだと・・・?」
「どうしたのあるじ?」
「・・・いやなんでもない。行くぞ」
ルインの言葉で我に返る。勇者の名前がアリシアだという事が気になるイヴリスは後ろ髪を引かれる思いでその場をあとにした
門を出た後、外には兵士がたむろしていてがバレることなく抜け出すことができた2人は村へと帰って行った
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