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魔王、お酒を作る

クリムシューの調理を村で成功させることができたイヴリスは数週間が経った後次なる目的に取りかかった

ネイチェルに頼んだアレがどうなったかを確認しに野菜農園へと足を運ぶ



「おーい、そろそろ出来たか~?」


「あっ、イヴさんちょうどいいところに。今呼ぼうと思っていたんですよ。こっちへ来て見てみて下さい」



ネイチェルに案内されグレプスを育てている場所に向かう。そこには元あった樹よりも低めの樹辺り一帯に広がっていて、その樹の枝にはたくさんのグレプスの実がなっていた

町で教えられたものと形は完全に一致。試しに一粒味見してみたが甘さと酸味の調和が程よく感じられた



「ど、どうですか?」


「よくやったな、これだけあれば酒を作ることが出来るぞ」



ネイチェルに頼んだグレプス作りは無事成功、村の人間を使って大量にあるグレプスを収穫し牛に籠を付けて運ばせた。未だ人間を警戒しているネイチェルは木の陰に隠れてその様子を見守っていた

収穫したグレプスを村に運び終えるとゴルドがやって来る



「イヴ殿持ってきたぞい」


「おぉ、ここに置いてくれ」



ゴルドが持ってきたのはお酒を貯蔵しておく樽と巨大な桶、お酒を作ると決めた時から作り方を知る人間から樽と桶が必要となると聞かされていたので、ゴルドに家の建築の合間を縫って作っておいてもらっていた。数人は入れる深めの桶の中へ採れたてのグレプスを投入していく。そして綺麗に汚れを落とした足で桶の中に入りグレプスをどんどん潰していく

足で潰し液体となったグレプスは桶の一部を加工してある場所から流れていき、用意された樽の中へと注がれていった



「あはははっ!これおもしろーい!」



泥遊び感覚で楽しんでいるのか子供達は躊躇なく潰していく。柔らかい実を足で潰す独特な感触はなんとも形容しがたいが確かに癖になる感覚だった

しかしグレプスは大量にあり全てを潰すとなると骨が折れる。ずっと同じメンバーでやっていると体力が尽きてしまうので時間を決めて交代制で行っていくことに



「よし、俺達も手伝うぞ」



次は自分達の番だと男達がズボンの裾を捲り靴を脱ごうとする。しかしイヴリスはその必要はないと男達を制止した



「いや、これは女性陣に任せてもらおう。むさ苦しい男達の足で踏まれて作られた酒よりも子供や麗らかな乙女達に踏まれて作られた酒の方が味もひとしおだろう?」


「まるでおっさんみたいだな・・・」


「それよりも男共はゴルドの家造りの手伝いをしてやってくれ。もう木材は出来上がっているんだよな」


「あぁ、数が多くて苦労したがなんとか終わったぞい。ようやく本格的に家造りの開始じゃ」


「よし分かった、男共はゴルドさんの手伝いをするぞ!」



こうして男性陣は家造り、女性陣はグレプス踏みと二手に分かれ作業を行っていった

最初に作業をしていた子供達は一樽分を終える頃には疲れてしまったようなので桶から上げて他の者と交代させ、頑張ったご褒美として今しがた搾ったグレプスを差し出した



「ほら、搾りたてのグレプスジュースだ。飲んでみろ」


「ンクッンクッ・・・プハァッ!甘酸っぱくて美味しい!」


「働いた後だと余計に美味いだろう。ほれ、もう一杯飲め」



ジュースは子供達にかなり人気だったようなので、今回の分の殆どは酒にしてしまうがまた実がなったら色々試してみるのも面白いかもとイヴリスは思案を巡らせた

他の用途を考えながらグレプスを踏み続けること数時間、日が暮れる前には収穫していたグレプスを全て踏み終えお酒作りは終了した。全部で6樽分作ることが完成しあとはこのまま寝かせるだけ。半端に残ったグレプスは各家に分け与え各々好きなようにして食した



発酵(ファーメント・)促進(アクセラレーション)


「イヴさん今のは?」


「酒には発酵?とかいうのが必要らしいからそれが早く出来るように魔法をかけた。早く呑みたいからな」


「へぇ、そんな魔法があるなんて初めて聞いたな」



さっき何となく思いついたから作ってみた、とイヴリスは言いかけたが口を閉じた。村の人間達と生活して分かったが使える魔法が生活に役立てられるような初歩的な魔法ばかり、そもそもイヴリスと違ってただの人間の魔力量は微々たるもので数回程度しか魔法を使うことができない。その上使える属性は一属性のみ

魔王国に攻め入って来た兵士達はそれに毛が生えた程度、勇者や一部の者は複数の属性の魔法を使うことが出来るらしいが基本は似たり寄ったり。イヴリスからしたら全属性を使えるのは当たり前であって、こうしたいと思うことがあったらイメージすることによって大抵の事は今のように魔法で実現できる

ただでさえ目立ってしまっているのに思いつきで魔法を作ったなんて言ったら怪しまれてしまうかもしれない



「さっ、そんな事よりもこれを運ぶぞ」



適当に話を逸らしつつ酒樽を温度変化の少ない暗所へと運び、あとはちゃんとお酒になるのを祈りながら置いておいた

これを呑む時は決まっている。この酒樽を開けるのはゴルド達が新たな家を完成させた時の祝い酒として、何も無い日に呑むのもいいがせっかく一から作ったものならめでたい時に呑んだ方が美味いというもの。その日が来るまでイヴリスは

もうひと辛抱だと自分に言い聞かせ家の完成を待った


読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など少しでも気に入ってくれていただけたら幸いです

次回は日曜日20時に投稿予定です。よろしくお願いします!

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