魔王、村に帰還する
思わぬ邂逅を果たしたドワーフを村へと呼ぶことができたイヴリスは町で過ごす最後の夜をドワーフの歓迎会と称して盛大に祝うことにした
町を離れたらまた暫くはお酒を呑む事ができない、なので今日は好きなだけ呑んで呑み溜めをすることにした
「さぁ遠慮するな、今日は好きなだけ呑んで食おうじゃないか」
「ではお言葉に甘えさせてもらおうかの」
イヴリスに勧められるとドワーフはジョッキに入っているお酒を顔色一つ変えず一気に呑み干した後、ジョッキを勢いよくテーブルに叩きつけた
「カーーッ!美味い!暫く呑んでいなかった分酒が普段の数倍美味く感じるわい!」
「いい呑みっぷりだな!さては相当イける口だな?」
「ドワーフ族は皆大酒飲みじゃからの。一樽分位余裕で呑むぞ」
「気に入った!今日は限界まで呑むぞ!乾杯!」
飲み仲間ができたイヴリス達の酒を煽るスピードは更に加速する。ホールのスタッフが空になったジョッキを片付けてはまた新しいのを運んでと2人のいる席をひたすら往復するという光景を周りはただただドン引きしながら眺めていた
「そういえばまだ名乗っていなかったな。私の名はイヴ、お前の名は?」
「ゴルドじゃ、改めてよろしく頼むぞイヴ殿」
「よーしゴルド!もう一度乾杯だ!」
2人はその夜、持っていたお金を使い果たす勢いで呑みまくった。周りにいた他の客が徐々に帰っていってもその勢いは衰えることはなく、結局2人は日付けが変わろうかという時間まで呑み続けた
翌日、二人は散々呑んだにも関わらず何事もなかったかのようにいつも通りの朝を迎え出立の準備に取り掛かった
「さて、準備は整ったかゴルド」
「あぁ、こっちは問題にないぞ。しかしイヴ殿、昨日話を聞いた限りではその村までかなり距離があるんじゃろ?そんな場所まで行くとなると時間もかかるじゃろうし馬車や護衛を使うとかなりの金額になると思うんじゃがそこまでどうやって行くんじゃ?」
「馬車も護衛も必要ない、そんなものがなくても私の脚でどうとでもなる」
イヴリスはそう言って自分の脚を叩いて見せる。ゴルドには何を言っているのか理解できなかったがその意味を数分後に思い知らされることとなる
「ひぃぃぃぃぃ!!助けてぇぇぇぇ!!」
「おい暴れるな、走りづらいだろう」
イヴリスは行きと同様帰りも駆け足で道を進んでいき村へと向かう。イヴリスの背中には必死にしがみつき振り落とされまいと耐え続けるゴルドの姿があった
聳え立つ岩壁は跳躍で飛び越えていき崖は躊躇することなく飛び降りていく。相手の乗り心地など考えもせず一直線で走り続けること数時間、昼過ぎ頃には村に帰ってくることができた
数日ぶりに帰ってきた村に変わった様子は特に見当たらなかった
「さっ着いたぞ、ここが私の住む村だ」
「ハァハァ・・・死ぬかと思ったわい。あの並外れた身体能力、イヴ殿は本当に人間か?」
「フッ細かい事は気にするな、それよりもお前を村の人達に紹介するぞ」
ゴルドの疑問を軽く受け流し村の中へと入っていく。村の中に入ると狼達が狩ってきた獲物の解体作業をしている村人を目にした。イヴリスがいない間も狼達はしっかりと役目を果たしていたようだ
やがて村長ルイス宅に到着するとイヴリスは既にここが自分の家であるかのようにノックもせず中へと入っていった
「おーい、帰ってきたぞー」
「え・・・?イヴさんもう帰ってきたのか?帰ってくるのにもうあと数日はかかると思っていたんだが。もしかして町に辿り着けずに途中で引き返してきたのか?」
「いや町にはしっかり行ってきたぞ。その証拠に家を直せる者を連れてきた」
イヴリスはルイスにゴルドを紹介をした。突然イヴリスの背後から現れた小柄な男性に驚き、更にその人物がドワーフ族だと知ると更に驚いていた
人間の町に行った筈なのにどうやってドワーフを見つけて連れてきたのかなどの経緯を色々と聞かれたが、一から話すのは面倒だったのでゴルドに任せることに。その後村人達にも自己紹介をさせた
ドワーフという異種族がやって来て村人がどういう反応を示すかという点だけが気がかりだったが、村人達の反応は同じ人間と接する様子と大して変わらなかった。元々国が同じという事以外接点がなかった様々な人間達が集まっているからか、そういった種族的な偏見はなかった
「まだまだ修行中の身ではあるが宜しく頼むぞ村長」
「こちらこそ、大した事は出来ないかもしれないが力仕事とか雑用の手が欲しくなったらいつでも呼んでくれ」
こうして滞りなく自己紹介を終えたゴルドは荷物をルイスの自宅に置き、村の案内がてら各家を見て回ることに。
途中狼の魔獣達が村を闊歩している様子を目にした時は腰を抜かしていた。ゴルドの口から初めて狼達の名前を知ることとなったがイヴリスが従えている狼はアビスウルフという魔獣で、巷では"奈落の番犬"とも呼ばれていて非常に凶暴な魔獣だと説明された
しかし今の狼達は獲物を狩る時以外は完全に牙を抜かれていて飼い犬も同然、ゴルドは驚愕していたが子供達と遊ぶ狼の姿を見て危険性はないと判断してくれたようでそれ以上何か言うことはなかった
一通り村の家を見て回った後、イヴリスはゴルドに家屋の状態がどの程度のものなのか尋ねてみた
「どうだ?どの位で直せそうだ?」
「うーんイヴ殿、全ての家を見たがこりゃダメじゃな。家を支えている柱が中まで腐っていていつ倒れてもおかしくない。補修をするより一から建て直した方が良さそうじゃな」
「そうか・・・仕方ない、時間はかかるだろうが頼むぞ」
「儂の初仕事じゃ。腕が鳴るわい!」
その夜、今日収穫された食材がふんだんに使われた料理で村人達はゴルドの歓迎会を行った。村の人達からの手厚い歓迎を受けたゴルドは翌日から張り切って建築作業に取り掛かった
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