魔王、新たな人材を求め町へ行く
狼の魔獣、樹木精霊ネイチェルによって村の食糧は充実し村人達の食生活も改善され活気が出てきた。村にやってきた頃は余所者扱いであまり深く関わらないようにしようとしていたが、村の食糧難に病気と短期間で問題を解決していったことからイヴリスに友好的になっていった
しかし村の問題はまだまだ残されている。その一つが今朝寝起きのイヴリスを襲った
「イヴお姉ちゃん朝だよぉ」
「ふぁ~良く寝た。さて、今日の朝食はなんだろうな・・・うおっ!」
ルカが起こしにやってきたタイミングでベッドから起き上がり朝食を食べに行こうと歩いていると突然床が抜けて体が完全ハマってしまった。抜けた穴から這い上がり調べてみるとその部分が既に腐ってしまっていた
イヴリスが来る前からこの家は既に大分ガタがきていたのは歩いている時に鳴るミシミシという危険な音で察してはいた。嵐でも来た日にはこの家程度軽く吹き飛ばされてしまうだろう
カミラに作ってもらった朝食を食べながらこの家の住居問題をルイスと話し合った
「やっぱりすぐにでも家は新しくするべきだな。家を建てられるような人はこの村にいないのか?」
「いないな・・・今まで家の補修をしてくれていた人は一年位前に病で亡くなってな。その人は例の病とは別の病気だったんだが」
修繕が出来る者がいなくなった事で脆くなっている箇所の補修が疎かに。他の村人達の中で専門的な知識を持っている者がいない。そんな状態で下手に直そうとしても却って悪化する可能性もある為中々手を出せずにいたという
当然イヴリスも建築技術なんてものはない。しかしその程度のことでは諦められないと行動に移すことにした
この村に建築技術を持っている者がいないというのなら他から呼んでくればいいだけのこと
「よしっ!何処かの町に行って家を作ってくれそうな人材を探してくるか!出来るだけ人が多い場所の方が見つけやすいだろうしな」
「でも俺の把握している限りではここから人口の多い町に行くとなると数百の道のりになると思うんだが。それにこんな場所に来てくれる物好きが果たしているかどうか・・・」
「問題ない。私がなんとかしてやろう」
「ハハッ、イヴさんにそう言われるとなんだか出来そうな気がしてくるな」
こうしてここから一番近くにあり最も栄えている町に建築技術を有している人材を探しに行くとことが決まったイヴリスは翌日には町へと向かうことになった。
準備をしている最中、町へ行くのなら同行しようとルイスと他の村人数名が立候補してきた。確かに食糧も増えて保存食の方にも回すことが出来ているので数日程度の移動は可能だろう。村の人間達も自分の住む場所を自分の手で良くしていきたいという想いがあるようだ
「いや、町には私一人で行く」
しかしイヴリスはその申し出を断った。理由としてはイヴリス一人の方が移動速度は断然早いから
町までの道のりにはいくつもある険しい山を乗り越えていかないといけない。人間の足並みに合わせていたらいつ到着するか分からない
それにもしも道中で戦闘があった場合まともに戦うことが出来るのはイヴリスのみ、数人程度守りながら戦うなど朝飯前だが基本自分の身は自分で守れという考えなので集団戦闘は好むところではない
あとは単純に他にも人間の住まう街並みを久々に見たいという私欲の為である
そういった諸々の理由で同行は拒否、代わりに町までの地図を描くように頼んでおいた。そして翌日、イヴリスはカミラに用意してもらった食料数日分を背負い町へと向かうこととなった
「気をつけてねイヴお姉ちゃん」
「あぁ、すぐ戻る」
ルカに見送られルイスに描いてもらったこの村周辺の地図を見ながら村の外れまで歩いていく
「空を飛んだ方が早く着くだろうがここ最近動いてなくて身体が鈍っていたからな。運動不足解消の為に走るにはちょうどいい距離だろう」
身体を解し準備が整ったところで思い切り踏み出し地面を蹴った。蹴ると同時に地面には大きな窪みが生まれそれが無数に出来上がっていく
急勾配の坂などお構いなしに一定の速度で走り抜ける。途中で魔獣と出くわすかと思ったが、異常な速度で走っているイヴリスを襲ってくるような相手はいなかった
途中カミラに作ってもらった弁当を食べながら一休み、食べて昼寝をした後に移動を再開した。そうして日が暮れるまえに目的地である町に到着した
「着いたか、ここが地図に書いてあるホルストンという町だな」
村とは違いやはり規模や人の多さは段違い、これだけの人間がいれば建築に詳しい人はすぐ見つかるだろうとイヴリスは楽観していた
一先ず町に入り中を見て回ろうと思い入口の方へと歩き出す。すると入口付近にいた鎧を身に着けた人間が荒くした声で呼び止めてきた
「おいそこの!何をしている」
「何って町に入ろうとしているだけだが?」
「ならこの列に並んで町に税を納めろ。大人1人なら銀貨5枚だ」
「なにっ?町に入るには金がいるのか?」
ルイスからはそんな話を全く聞いていなかったのでお金なんて全く用意していない
そもそもイヴリスはお金という概念こそ知ってはいたものの見たことがない。欲しいものは周りが用意してくれていた為使う機会もなかった
「おいおい、そんな事も知らないなんてアンタ一体どんね辺境の地に住んでいたんだ。とにかく払えないんだったらここを通すわけにはいかないぞ」
「う、うむぅ・・・」
想定外の事態にどうしたものかと頭を悩ませる。殴り飛ばして強引に町に入ることは容易だがそうすると人材を探すどころの話ではなくなってしまう
ここまで来た苦労が水の泡になってしまうと思った矢先、列が作られている方から声をかけられた
「姉ちゃん困ってんのか?なんなら俺達が代わりに払ってやってもいいぜ」
「なにっ!いいのか!」
声をかけてきたのは数人組の男性達、イヴリスよりも大柄で迫力がありその周りだけ余分に間隔が開けられていた
だがイヴリスにとっては渡りに船、そんな事気にすることなく男達の行為に甘えることにした
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