第82章
その長身の男性は、良作と目が合うと、草原を吹き抜けるような、さわやかで優しい笑顔を彼に見せた。
「高田良作君だね・・・よく来てくれた。いつか君が、ここに来てくれると信じてたよ。・・・いいタイミングだった。」
彼は、良作の肩に手を置くと、うれしそうに言った。
「妻の時子はね・・・君を憎んでいる。心底恨んでいるんだ。私の義理の母もそうだった。その母・・・山田セツも、亡くなってしまったがね・・・ちょうど、葬儀が済んだところなんだ。」
「えっ、セツさんが・・・?」
「私たちが今回Y市に来たのはね、葬儀に参列するためだったんだ。その葬儀も、こうして、無事終わった。おそらく、このY市に来ることは、今後二度とないだろう。だから良作君。今日、君がここに来てくれたのも、何かの巡りあわせなのかもしれないな。」
良作は思った。
(これが、美絵子ちゃんのお父さんか・・・。なんてさわやかで、あたたかく優しい笑顔だろう。まるで、全身が、やわらかい羽毛で包まれるようだ・・・美絵子ちゃん、こんな魅力的で、素敵なお父さんに育てられたのか・・・。)
「良作君。その妻だがね・・・ちょうど今、公民館で集会に出ている。今なら、またとないタイミングだよ。・・・美絵子は、中だ。奥の部屋にいる。呼んでくるから、そこで待っていてくれたまえ。」
美絵子の父は、そう告げると、身をひるがえして、奥の部屋に消えていった。
やがて部屋の奥から、すらりと背の高い、さらさらしたロングヘアーの似合う、魅力的な美少女が現れた。




