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『たからもの』  作者: サファイアの涙
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第42章

 「お母さん、俺、今から学校に行ってくる。」


 「え・・・? お前、まだ十分じゃないでしょう? まだゆっくり休んでいないと。」


 「もう、こんなに元気になったんだから、大丈夫だよ。・・・なんかさ、学校のことが気になってしょうがないんだよね。」


 「そっか・・・。お医者もね、もういつでも退院できます、とは言ってくれたんだけどね。じゃあ、送っていくから、支度しな。」


 「あ、いや、自分で歩いていくよ。学校は、すぐそこじゃないか。」


 「うん、そうだね。・・・母さん、ちょっと、医者の先生に告げてくるからね。」


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 母が病室を出ると、良作はさっそくパジャマを脱ぎ、テーブルの上にたたんであった洋服に着替えはじめた。


 そして、別の長テーブルの上に飾られた、ふたつの「花飾り」をじっくりと眺めながら、自分のために、この病室まで足を運んでくれたクラスメートや、一年生たちの様子に思いをはせていた。


(もしかしたら、今まで俺は、みんなのことを一方的に憎んでいただけなのかも・・・。)


 良作は、校庭で倒れたとき、薄れゆく意識の中、「高田君、大丈夫か!」という声も聞いていたのだ。


 一年生たちだって、普段の休み時間は、一見、良作の存在なんか忘れてしまったように「淡白」だったけれども、実は心の内では、ひそかに自分を心配してくれていたのかもしれない・・・そんなことも考えていた。


 (ともかく、学校へ行ってみれば・・・すべてはっきりするだろう。美絵子ちゃんだって、もしかしたら、七夕祭りの体育館の中にいるかもしれないしなぁ・・・。)


 こうして良作は、母が病室に戻ってくるのを待ちきれなくなり、すばやく着替えを済ませると、そっと病室を出て、病院の玄関を抜け・・・いそぎ、K小学校の体育館へ向かったのだった。

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