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第39章
・・・美絵子の手は、あたたかかった。
七夕の日・・・あの日、互いに、強い愛を誓い合った、大切なあの日・・・あの日と同じように。
ぎゅっと固く、お互いの手の感触・・・そして、あたたかい体温、お互いを想うあたたかい心までも感じた、大切なあの日とまったく変わることなく・・・。
・・・ただひとつだけ。
たったひとつだけ、以前と違うことがある。
美絵子が、良作の手を、握り返してこないのだ。
彼女の手のひらからは、良作への「愛の返答」が感じられなかった。
「・・・美絵子ちゃん!?」
良作は、ぎょっとして、美絵子を凝視する。
(以前と違う・・・いったい、どうしたんだ!?)
混乱する良作は、駆け出した美絵子に右手を振り払われ、思わずしりもちをついた。
しりもちをついた際、コンクリートの固い地面に右手を打ちつけた良作は、すりむいた手の甲から、痛みとともに赤い血がじんじんとにじむのを感じていた。
・・・そうしている間にも、美絵子は良作を振り返りもせず、まっすぐ通学路を自宅へと駆けてゆく・・・。




