第29章
新しい年度がスタートし、良作は六年生になった。
K小学校も、新しく赴任した教師、新一年生を迎え、前年度とはすっかり趣が変わっていた。
というのは、これまで全学年とも「ひとクラス」しかなかったK小学校に、はじめて「ふたクラス」の学年が出来たからだった。
今年度の新一年生は、昨年度の倍の人数が入学してきたので、ひとクラスの教室では収まりきれなかったのである。
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入学式の日、前年度と同じように、校庭で新入生たちの記念撮影があり、「ふたクラス」となった新しい仲間が、ひとクラスずつ順番に撮影に臨む。
良作は、この新しい仲間に、美絵子の姿を重ね合わせてみた。
・・・しかし、その中の誰一人として、彼女を「超える」魅力的な子は見つからなかった。
ただ単に「ルックス」という面から見てみると、美絵子が在籍していた、今年度の「二年生」と比較しても、粒ぞろいのかわいい子が非常に多かった。
残念ながら良作には、彼女の魅力を超えられる対象を見いだすことはできなかったのである。もちろん、そのような子がたとえいたとしても、彼には美絵子「しか」いなかった。
・・・彼女だけしか。
もちろん、彼女の「匂い」も、そこにはなかった。




