78.サーシャと一緒にリベンジマッチです!
午前中はひたすら各種ポーション作りに励んだリーンです、こんにちは。
新しい調合設備のおかげで、調合作業が捗るのが悪いのです。
材料と加工法をセットしたら、あとはできるのを待つだけ、という優れものになってしまいました。
なので、ポーションを作りつつ、料理を作る、なんてこともできますよ!
さて、そんなことより、カースドジャガーへのリベンジです。
今回は高品質初級HPポーションに高品質MPポーション、アンチポイズンポーション、アンチカースポーションと四種類ほど揃えてみました。
アンチカースポーションは、還らずの森で採取した解呪草というアイテムからできたポーションですね。
還らずの森でも採取活動はしてたのですよ。
役に立つかはわかりませんが、いちおう持っていきます。
これで、準備万端、いざ出陣!
と思ったら、サーシャに捕まりましたよ。
「こんにちはリーン、二日ぶりね。今日はどこに行くの?」
「こんにちはなんだよ。還らずの森っていう場所にいって、ボスにリベンジしてくるつもりだよ」
「ふーん、そのボスって強いの?」
「レベル30だからボクよりも格上なんだよ、でも頑張って倒すつもりだよ」
「……そう、それ、面白そうね。私も一緒に行っていい?」
サーシャがニコニコ笑顔で同行を希望してきました。
彼女が同行ですか。
ボクのパーティはまだ、二枠余ってますし、サーシャなら召喚獣で埋めてくれるはずです。
今度は数の暴力で圧倒してやるのですよ!
「構いませんよ、サーシャ。一緒に行きましょう」
「やった! それじゃあ、私も召喚獣を用意するから少し待ってね」
サーシャは普段、召喚獣を連れていないのですよね。
ボクは、常にシズクちゃんと一緒なのですが。
サーシャが呼び出したのはドラゴンのブレンと、ハウンドドッグのファインでした。
ハウンドドッグはうちの黒号と比べると、かなり大きく迫力がありますね。
それから、ブレンもなんだか雰囲気が違います。
進化したのでしょうか?
「サーシャ、ブレンって進化したの?」
「したわよ。念願のクラウドドラゴンにね!」
「クラウドドラゴンですか。どんな種族なのです?」
「まずは【騎乗】と【飛行】持ちだから空を移動できるわね。それから、【太陽魔法】と【雷魔法】が使えるから、攻撃や補助もバッチリよ。欠点はMPが少なめだから、ポーションを常備するか、魔法の使用を抑えるかしないといけないことね」
なるほど、確かに便利そうですね。
MPが少ないのは、レベルが上がってくると化けるかも知れないので、欠点かどうかは微妙でしょう。
「それで、今回はどういう布陣で行くの? タンクだったら、黒号よりファインのほうが強いと思うけど」
「そうなのですか? ファインのレベルっていくつなんです?」
「いまは33ね。ちなみにブレンは35よ」
得意げに語る、サーシャです。
……私よりもあとにゲームを始めたのに、すでに私より強いじゃないですか!
「それなら、タンクはブレンに任せるんだよ。代わりに、ボクはセレナイトを連れて行くよ」
「了解。今日は頑張りましょうね」
「うん。……ところで、サーシャは還らずの森にある女神像の転移設定ってしてあるの?」
「大丈夫よ。ただ、還らずの森は、スケルトンに追い返されて未探索だけど」
サーシャはうんざりしたように首を振りながら、教えてくれます。
あれは嫌ですよね。
「あの森は、戦闘中以外に回復魔法を使うと、スケルトンが寄ってくるらしいのです。なので、HPポーションを余計に持っていく必要があるのですよ」
「……なるほどねぇ。いやらしい仕掛けだわ。リーン、HPポーション、余ってたら売ってくれない?」
「大丈夫ですよ。新しい調合設備も買ったので、初級HPポーションはたくさん用意してあります!」
「それは頼もしいわね。六十個くらい買っても平気?」
「大丈夫ですよ。どんとこいです」
ポーション作りが捗るようになったので、マイホームの畑も拡張したのですよね。
フォルミは、まだ管理できる畑の総数に余裕があるみたいですが、一度にあまりたくさん増やすとボクが大変なので、控えめな数にしました。
サーシャに初級HPポーションを売ったら、早速還らずの森に転移です。
今回の目的は、カースドジャガーを討伐すること。
なので、森の中は早めに抜けたいところです。
そこで活躍するのが、セレナイトの【視覚共有】スキルです。
ある程度進んだら、木の上まで飛んでもらい、【視覚共有】で周囲を確認、ボスエリアがあるはずの広場の方向を調べます。
そうして、ボスエリアまで最短距離を歩くことで、一時間ちょっとで辿り着くことができました。
「セレナイトの【視覚共有】、こういうフィールドでは便利ね。私もナイトオウルをコントラクトしようかしら」
「便利なのですよ、【視覚共有】。サーシャはコントラクト枠、いくつ残っているんですか?」
「えーと、十三枠ね。全然契約しないからたくさん余ってるわよ」
サーシャは笑って答えますが、なんともったいないことでしょう。
ボクならそこをモフモフで埋めるのに。
「……さて、満腹度も回復したし、パートナーたちも十分に回復した。いよいよ決戦ね」
「そうですね。では、カースドジャガーにリベンジマッチです!」
ボクたちは、ボスエリア内に足を踏み入れます。
すると、前回と同じように閉じ込められてしまい、カースドジャガーがお目見えです。
「さって、行くわよ。ファインはカースドジャガーをブロック、ブレンは私とレゾナンスを組んでからバフと雷魔法行くわよ!」
「スズランとアクアは、ファインやブレンたちの邪魔にならないように攻撃です! セレナイトとシズクちゃんは上空から魔法を撃ってください!」
ボクたちふたりの号令から、パートナーたちが一気に行動を始めます。
まずファインがカースドジャガーに飛びかかり、相手の動きを制限します。
黒号だと、簡単に振りほどかれていたので、その差は歴然ですね。
やっぱり、レベル差は痛いところです。
サーシャはというと、ブレンと光の線でつながった状態からいろいろな魔法を使っています。
あれが『レゾナンス』状態なのでしょうか?
サンダーボルトも、シズクちゃんと同じスキルなのに、威力が全然違うように思えます。
さて、うちのパートナーたちですが、アクアとスズランは隙を見つけて襲いかかり、攻撃を当てたらすぐ離脱という、ヒット&アウェイ戦法で戦っています。
万一、カースドジャガーの攻撃が直撃したら、一撃で瀕死もあり得るので、ナイス判断ですよ。
それから、上空から魔法を撃っているシズクちゃんとセレナイト。
こちらも、少しずつですが確実にダメージを与えていってますね。
カースドジャガーが、ファインにかかりきりになっているため、上空は割と安全地帯なのです。
時々、黒い炎が飛んでいきますが、二匹とも余裕を持って回避なのです。
さて、最後にボクですが、ヒーラーとしててんてこ舞いです。
ファインはカースドジャガーと互角に渡り合っていますが、HPの差は歴然。
じわりじわりとHPが削られていくので、回復魔法で体力を維持し続ける必要があります。
なので、ボクはMPポーションを頻繁に飲む必要があって、このままではポーション中毒を起こしてしまいますね。
……確か、ポーションは投げつけても効果があるはずなので、HPポーションを投げつけてみますか。
そんなことを考えていたら、サーシャから指示が飛んできました。
「リーン! ファインに呪いのバステが付いたわ! 回復ってできる!?」
呪いですか。
魔法では回復できませんが、解呪草から作ったアンチカースポーションがありますね。
「回復用のポーションならあります! そーれっ!」
アンチカースポーションはファインの背中に当たり、呪い状態を解除してくれました。
……先程まではなんともなかったのですが、時間経過によるバステ付与なのでしょうか?
その後も、時折付与されてしまう呪いを解除しながら、地道に戦っていきます。
街と街の間を封鎖しているエリアボスとは違い、一定フィールドの中にいるタイプのボスって、レベルよりもかなり強いんですよね。
ただ、ファインとブレンが高レベルという事もあり、このまま行けばなんとか倒せそうです。
そして、残りHPが二割を切ったころ、お約束のパワーアップがきました。
全身から黒い炎を吹き出して襲ってくる姿は、まさに呪いの塊といったところでしょうか。
厄介なことに、あの炎に長時間触れてしまうと、確実に呪い状態にされてしまいます。
そのため、ファインは何度も呪いにかかってしまい、かなり大変です。
アンチカースポーションはまだ余裕がありますが……ファインが耐えられるかが微妙なところですね。
「リーン! ファインがまた呪いにかかったわ!」
「わかってますよ!! そーい!!」
今度もファイン目掛けてポーションを投げます。
ですが、ファインが動いたせいでファインには当たらず、代わりにカースドジャガーにぶつかりました。
すると、カースドジャガーは苦しそうにのたうち回り、全身から吹き出していた黒い炎の勢いも、若干弱まった気がしますよ。
「お、これは、ひょっとして使えますかね?」
この隙にファインの回復をすませたボクは、カースドジャガーに向けて、二本目のアンチカースポーションをぶつけてみます。
すると、先程以上に苦しそうにのたうち回っています。
炎の勢いも先程より弱まってますね。
「……リーン、これってどういう状況なのかしら?」
「よくわかりませんが、アンチカースポーションで行動制限ができるようです。とりあえず、このまま、アンチカースポーションを当て続けてみましょう。この炎がなくなれば戦いやすいですし」
「それもそうね。それじゃあ、リーンお願い」
「任されましたよ!」
その後も、立て続けにアンチカースポーションを当て続けるボク。
最初の頃は大きくのたうち回ってましたが、段々大人しくなっていき、同時に黒い炎も消えていきます。
そして、通算二十本目くらいのポーションをぶつけたところ、カースドジャガーの様子が激変しました。
先程までは黒い体毛に覆われていたのに、毛の色合いが白からアイボリーといった感じに変わり、吹き出していた黒い炎も白い炎へと置き換わりました。
これはなんだかイベントの予感ですよ!
『娘、私の呪いを解いてくれたようだな。礼を言うぞ』
お、なんだか声が聞こえてきます。
目の前の白ジャガーはガウガウ言っているだけですので、【意思疎通】スキルが発動しているんですかね?
『さて、呪いを解いてもらっておいてなんだが、今日はどのような用件でここに来たのだ? 人があまり近づくような森でもないと思うのだが』
「カースドジャガーに一度挑んで負けたので、リベンジマッチに来たのですよ。呪いを解いたのはたまたまです」
「ちょっとリーン。相手が言っていることがわかるの?」
少し困惑気味に、サーシャが会話に割り込んできます。
……サーシャには、言葉が届いていないのですかね?
「サーシャ、【意思疎通】のスキルは持ってます?」
「ええ、覚えてるわよ」
「スキルランクはいくらですか?」
「ランクⅡね。……ああ、私のスキルランクが足りないってことね」
「多分そうですね。サーシャも、【使役】スキルを上げて、【意思疎通】を鍛えたほうがいいと思います」
「了解、そうしましょうか。実害も出てるしね」
ジャガーさんをみながら、サーシャはそんなことを言います。
実際、話すことができていないのですから、仕方がありませんよね。
『話は終わったかな、娘たちよ』
「ああ、はい。お待たせしてしまって申し訳ありません」
『いや、気にはしていない。それで、このあとはどうするのだ?』
「どうすると言いますと?」
ジャガーさんの意図がつかめませんね。
このあと何をすればいいんでしょうか?
『お前はカースドジャガーとの再戦に来たのであろう。ならば、このあとも私と戦うかと聞いているのだ』
「ああ、なるほどですよ」
確かに、このジャガーさんはカースドジャガーでしたね。
ただ……。
「うーん、今回はやめておきます」
『ほう、なぜだ?』
ジャガーさんは興味深げに聞いてきますが、理由はひとつです。
「話し合いができる相手と、殺し合いはしたくないじゃないですか。こちらを襲ってくるモンスターならともかく、いまのジャガーさんは落ち着いてますし」
『ふむ、なるほど。それが本心か。……いや、気に入ったぞ、娘』
「そうですか。ありがとうございます」
『お前はテイマーのようだな。お前が望むのであれば、テイムを受け入れてやろう。どうする?』
おお、ボクにもボスモンスター級の仲間ができることになりましたよ!
強かったですし、期待大です!
「それは是非お願いします! さあ、テイムしますよ!」
テイムの光はジャガーさんを包み込み、そのまま吸い込まれるように消えていきました。
……テイム、成功したんですかね?
『テイムは成功したようだな。ただ、実力的にはギリギリだったようだ。……さて、私に名前をもらえるか?』
そうですね、テイムできたのですから名前をつけてあげないといけないですよね。
とりあえずは、ステータスを確認させてもらいましょうか。
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名前:未設定
種族:ホーリーフレイムジャガー Lv.30
HP:192/192 MP:125/125
STR:110 VIT:136 DEX:98
AGI:166 INT:114 MND:105
スキル:
【牙撃Ⅱ】 【爪撃Ⅱ】
【強襲Ⅱ】 【奇襲Ⅱ】
【神聖魔法】 【太陽魔法】
【暗視】
特殊スキル:
【魔法ダメージ軽減】
【闇属性耐性・中】
【呪い耐性・大】
【騎乗】
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うわー。
なんというか、ボクのパートナーの中でも最上位になったよ。
これで、挑発系のスキルがあったら、完全に黒号の上位互換だし、魔法も二種類使える。
接近戦もできるし、とっても便利な子がパートナーになってくれたんだよ!
さて、気になることがひとつありますが、まずは名前を決めてあげなくちゃいけませんね。
うーん、ホーリー、神聖、フレイム、炎……どれもしっくりきませんね。
元がカースド、呪いで真っ黒だったんですから、その真逆の名前もいいかもしれません。
となると、これですね。
「うん、決めました。あなたの名前は『ブレス』です。これからよろしくお願いしますね」
『わかった。私の名前は『ブレス』。今後ともよろしく』
これで、契約は完了ですよ。
ただ、契約が完了してしまいましたので、現在、同時同行数をオーバーしています。
つまりどうなるかというと、最後に仲間になったブレスはマイホームへ強制送還です。
『どうやら、主人の家まで送還されるようだな。何か聞きたいことがあれば私の所に来るといい』
「はい。聞きたいことがいくつかありますから、すぐにでも聞きに行きますね」
『わかった。それでは、またあとで』
光に包まれて送り返されたブレスを見送り、サーシャにこのあとの予定を告げます。
「サーシャ、予想外のパートナーが増えましたので、一旦、街に戻りましょう。ブレスもいろいろ教えてくれるみたいですし」
「わかったわ。私も気になるし、一緒に戻ることにする」
カースドジャガーへのリベンジマッチは、想定外の結果となってしまいました。
ボク個人としては、とっても優秀なパートナーが手に入ってホクホクですけど、いろいろ調べなきゃいけないですね。
ユエさんのホームページをみればすぐ解決する気がしますが。
章始めの時点で仲間になる予定のなかったホーリーフレイムジャガーのブレスくん加入。
元がフィールドボスのなので、非常に強個体です。
まあ、ほかのパートナーたちも育てば追いつけるのですが。
なお、フィールドボスでも課金パートナーには届かない模様





