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13.火遊びとおばあちゃんのお薬

『火遊びをすると、おもらしするぞ!』


 そんな風に言われた人、いますかね?


 私はよく言われました。

 ええ、火遊び大好きっ子だったので。

 今でも変わらず好きですね。畑のゴミを焼く時なんか、嬉々として名乗り出ますから(笑)


 秘境にいた頃も、よくお風呂を焚く時の火をじーーーーっと見ていました。

 小さな日がごうごうパチパチと音を立てて燃える姿を見ると、なんだか気持ちがスッキリとするんです。

 火吹き竹でフーっと空気を送ると、メラメラーーーッと燃えて、楽しいんですよねー!


 そんな風に長い間、風呂の竈で火遊びしている私を見て、おばあちゃんが言いました。


「さらさ、火遊びしよったら、トイレちこうなるで!」

「?」


 多分、小学生にはなっていなかったと思う。

 今ならそれは、火遊びは危険だからやめさせようとしているんだと分かるんですが、当時の私には分かりませんでした。

 そもそも、『トイレが近くなる』の意味が分からなかったさらさ少女。

 こういうときは、おばあちゃん本人に聞かず、お母さんに聞く私です。


「お母さん、トイレちかなるってどういう意味?」

「うん? トイレが近くなる? しょっちゅうトイレに行くって意味やよ。なんで?」

「おばあちゃんが、火遊びしてたらトイレ近くなるって言うてた。そんなわけないやんね〜」

「うーん、どうやろね? 結構ほんまかもしれんよ。昔から言われやることやから」


 トイレが近くなるの意味を知って、火遊びしただけでなんでトイレにしょっちゅう行く羽目になるんだと一笑に付した私でした。

 なのでその後も、枝に火をつけて松明〜と遊んだり、松ぼっくりを放り込んだりスギ芝を放り込んでガンガン燃やして遊びます。


 すると、なんだかトイレに行きたくなってきました。

 ささっと、トイレに入って用を足します。

 しかしそのわずか5分後、またトイレに行きたくなってしまったのです!!

 またトイレに行く、でもまた5分後……その繰り返し。


 うそ……おばあちゃんの言ったこと、本当だった?!


 青ざめるさらさ少女。意地になっていつまでも火遊びしていたことを後悔しました。

 しょっちゅうトイレに行っている私に、お母さんが気づいてくれます。


「さっきから何回もトイレいってない?」

「どうしよう、めっちゃトイレ行きたくてとまらん!」

「おばあちゃんの言うこと、きかんからやで。おばあちゃんに相談してみよ」


 そう言って、お母さんがおばあちゃんに事情を話してくれました。


「じゃあ、さらさにお薬つくったるわ」


 お母さんの話を聞いたおばあちゃんが、そう言ってくれました。

 お薬……嫌な響きです。

 何を隠そう、さらさ少女はお薬が嫌いです。

 お母さんと待っている間、私は半泣きになっていました。

 しばらくしておばあちゃんが持ってきてくれたのは、何やら黒いぶつぶつが入った、お茶のような飲み物でした。



挿絵(By みてみん)



「これ飲んだら、すぐ治るわ」


 なぜ水分を採ってトイレに行かなくなるのかが、さらさ少女には理解できません。

 でも、おばあちゃんの言うことは正しいのです。おばあちゃんの言葉を聞かずに火遊びして、こうなってしまったのだから。


 おばあちゃんは私に謎の液体を渡して、どこかに行ってしまいました。

 残されたのは、私とお母さんのふたりだけ。


 匂いを確かめると、今までに嗅いだことのないムッとした匂いがしました。


「こんなの、よう飲まんっ」


 だって、黒いナニカが入ってる!

 お茶ではない!

 こんなの、飲めない!!


「でも、飲まな治らんよ?」


 それは困る!!

 でもどうしても勇気がでない!


 そんな私を見かねたお母さんが、先に一口飲んでくれました。


「ど、どう?」

「うーん、飲めんことはないね……」

「飲まなあかん?」

「おばあちゃんがせっかく作ってくれたんやから、ちゃんと飲んで」

「この黒いぶつぶつ、なんなん?」

「多分、黒ゴマかな」

「これはよう飲み込まん!」

「じゃあ、それは残してもええから」


 さらさ少女は意を決して、グイッと飲み込みました!

 何が入っているか分からないものを飲むというのは、本当に気持ち悪いものです。

 でもさらさ少女は、ゴマを残したものの、飲み切りました!

 味は、くっっそ不味かった記憶しかないです。

 今でもなにが入っていたのか分かりません。草臭い匂いもしたので、ゴマの他にもナニカが調合されていたんでしょう。


 しかし、あーーら不思議!!

 飲んだ瞬間から、トイレに行きたいという気持ちが、きれいさっぱりなくなっていたのです!


 おばあちゃん、すげえ!!

 おばあちゃんの作ったお薬、すげええええ!!


 さらさ少女は、真剣にそう思いました。

 完全におばあちゃんの手の平で転がされ……げふげふ。

 いえ、うちのおばあちゃんはすごい人なのです!!

 おばあちゃんの謎のお薬は効くのです!!



 ってわけで、最近夜中に目を覚ましてトイレに行く、おばさんになった私は考えました。

 あの時の薬を再現できれば、夜にトイレに起きることはなくなるのでは?


 早速黒ゴマを買って、それを炒ってから煮出してみました。

 味は不味かったです(笑)

 でも、飲めないほどじゃなかったので、やっぱり多分、ほかにナニカを混ぜていたんだろうなぁ。


 とりあえずそれを飲んでみました。

 その夜、さらさおばさんがトイレに起きることはありませんでした!!

 すごいぜ私のおばあちゃん!!



 そういえば昔、お母さんに『夜は牛乳飲まな眠れんのやで』と言われていたなぁ。毎日夜寝る前に、一杯の牛乳を飲むのが習慣でした。

 牛乳を切らして飲めなかった日は、『にゅーにゅー! にゅーにゅー飲まな、ねーれん!』と泣き、夜遅くまで起きていたさらさ幼女。




 そう、総じて私は……暗示にかかりやすいのです。ちーん。





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― 新着の感想 ―
[良い点] なんておおらかな田舎暮らし! [一言] 私も子供時代は似たような生活をしておりました。 川遊びも、焚き火も、栗拾いも、 家の外にある汲み取り式トイレも、 今の子供たちにも味わってほしい…
[一言] 火遊びはやったことありませんでしたね。 家の中にマッチやライターなどがなかったので、そういうことがまずできませんでした。近所のおじさんたちが畑でいろいろ燃やしているのを見るくらいでしたね。 …
[一言] 牛乳は神経を落ち着かせ、睡眠を促進する作用があるので、寝つきをよくする効果があったはずですね。 ゴマはどうだったかな?
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