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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?

冤罪で追放された悪役令嬢ですが、廃ダンジョンをドールハウス感覚でリフォームして引きこもります。え? 配信? 何それ美味しいの? (6)

作者: 伊部 なら丁 with Gemini3
掲載日:2026/02/16

【冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?】シリーズ No.6

「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……」


朝の優雅なティータイム。私の手元にあるのは、紅茶とスコーン、そして震えるタブレット端末。画面に表示されているのは、先日の「プライベートビーチ(星空オプション・カバナ付き)」の請求額だ。桁がおかしい。


思考、停止。


0の数が私の知る常識の範囲を超えている。「まあ、ダンジョンカードの限度額は無制限ブラックだから払えるけど……」。払えるのと、懐が痛まないのとは話が別だ。このままでは、老後の資金が海の藻屑と消えてしまう。


請求、発火。


「稼がなきゃ……!」私は即座に金策モードへ切り替える。前回の「ガンプラ」は大当たりだった。あのお兄様方の財布の紐の緩さは異常だ。しかし、同じネタでは飽きられるし、何より私が飽きる。もっとこう、私のスキル『ドールハウス』と親和性が高くて、女の子でも楽しめて、かつ「大きなお友達」も釣れるアイテムはないものか。私の脳内検索がヒットした。「そうだ、レゴ(LEGO)よ!」


方向性、決定。


兄の部屋に転がっていた、あのカラフルなブロック。あれならガンプラほど塗装や接着の技術はいらないし、何より「ドールハウス的」なセットも多い。私は早速通販サイトを開く。「レゴ・フレンズ」シリーズの「グランドホテル」。これだ。これなら可愛いし、建築欲も満たされる。ついでに「ハリー・○ッターの城」もカートへ。お値段は……うっ、高い。プラスチックの塊なのに、貴金属並みの値段がする。でもこれは投資だ。スパチャで回収すればいい。


投資、確定。


数日後、巨大な箱が届く。「開封の儀」配信スタート。「今日はこれを作りまーす♡」。私は愛想よく箱を開け、数千個のパーツが詰まった袋をぶち撒ける。ジャラララッ。硬質なプラスチックがぶつかり合う音。これぞASMR。私は説明書を開き、無心でブロックを積み始めた。「ここをこうして、パチン。次はこれ……」。


没頭、危険。


楽しい。楽しすぎる。ガンプラのような繊細な作業とは違う、パズルがハマっていく快感。私は完全に「配信」であることを忘れ、ゾーンに入ってしまった。コメント欄を見ることもなく、ひたすら手元だけを映し続けること5時間。「……よし、次は屋根のパーツ……あ」。カラン。乾いた音がして、小さな1×1の丸いパーツが床に落ちた。


紛失、焦燥。


「嘘でしょ……?」床には、先日敷いたばかりの「ふかふかの絨毯(毛足長め)」がある。最悪だ。砂漠でダイヤを探すようなものだ。私は這いつくばって絨毯をかき分ける。「ない。ないわ。あれがないと煙突が完成しないのよ!」。コメント欄が『あるあるw』『踏むと痛いぞ』と盛り上がっているが、私には見えない。


捜索、難航


「クゥ〜ン(どうした?)」私の殺気を感じ取ったのか、昼寝をしていたフェンリルが近寄ってきた。「フェン、これと同じやつ! 探して!」。私は予備のパーツを彼に嗅がせる。彼はふんふんと鼻を鳴らすと、絨毯の上をスンスンと嗅ぎ回り、ある一点で止まった。「ワン(ここだ)」。彼が前足で抑えた場所をめくると、毛足の奥に埋もれた小さな赤いパーツが出てきた。


救世主、モフモフ。


「ありがとうフェン! 愛してる!」私は彼に抱きつき、勢いのまま城を完成させた。「できたー!」。達成感に包まれ、ようやく画面を見る。


……視聴者数、激減。


コメント欄には『5時間無言とか修行かよ』『手しか映ってなかったぞ』『寝落ちしたわ』という冷たい反応。そして肝心のスパチャは……雀の涙。収支、赤字。「嘘……これだけ?」投げ銭の合計額は、高級レゴセット2つ分の購入費の半分にも満たない。


コスパ、最悪。


私の労働時間(5時間)と、フェンリルの嗅覚使用料を考えれば、完全な大赤字だ。「ブロック遊びは……お金持ちの趣味なのね……」。私は完成した城を呆然と見つめる。出来はいい。すごくいい。でも、来月の請求書が、さらに厚みを増したことだけは確かだった。


趣味、高嶺たかね


「うぅ……肩が……」5時間のレゴ建築は、アラサーの肉体に深刻なダメージを残していた。首から肩甲骨にかけて、まるで岩のようなコリがある。こんな時は、体を動かすに限る。私は凝り固まった体をほぐすため、重い腰を上げて「裏庭」のローズガーデンへと向かった。


凝り、限界。


扉を開けた瞬間、甘く濃厚な香りが鼻孔をくすぐる。そこは一面の薔薇、薔薇、薔薇。スキル『ドールハウス』で作り上げた英国風庭園だ。しかし、あまりにも環境が良すぎる。


肥料過多。


満開を通り越してジャングル化していた。「綺麗だけど……ちょっと野暮ったいわね」。咲き終わった花弁が散り、茶色くなった花殻が混じっている。これは美しくない。


花園、荒廃。


「よし、やるか」。私は愛用の剪定鋏(切れ味抜群のミスリル製)を手に取り、脚立を展開した。バラというのは、放置すれば上へ上へと伸びていく。まるで権力を求める貴族のようだ。美しい形を保つためには、無慈悲な管理が必要不可欠なのだ。


剪定、開始。


パチン、パチン。リズミカルな音が響く。終わった花を摘み、込み入った枝を透かす。どの枝を残し、どの枝を切り落とすか。全ての生殺与奪の権は、ハサミを握る私が持っている。「あんたは外芽だから残す。あんたは内側向いてるから邪魔。さようなら」。私の判断一つで、彼らの運命が決まる。


支配、快感。


「えーと、この子はなんだっけ……」。脚立の上で、名札を確認する。『ラ・レーヌ・ヴィクトリア』? いや、『スブニール・ドゥ・ラ・マルメゾン』? 名前が長すぎて覚えられない。「まあいいわ、貴女は『ピンクのフリフリちゃん』ね」。適当なネーミングをつけながら、容赦なくハサミを入れる。


忘却、適当。


ゾーンに入ってきた。無心で枝を切り落としていく作業は、レゴの時とは違う、破壊と創造の快感がある。「ふふ、私好みの形にしてあげるわ……」。バラの棘が指を掠めるが、痛みなど感じない。むしろ、その抵抗すら愛おしい。今の私は、この庭園の絶対的な女王なのだ。


独裁、満喫。


「ブブブ……」エプロンのポケットでスマホが震えた。「もう、いいところなのに」。私はハサミを握ったまま、不機嫌に画面をタップした。「もしもし? 今、バラの世話で忙しいのだけど」。


中断、無粋。


『国税局です。お時間は取らせませんので、少しだけ』。相手は事務的かつ粘着質な声で食い下がってきた。どうやら、物理(田中)で排除されたので、通信(電波)で攻めてきたらしい。「……はぁ。で、用件は?」

追及、執拗。


妨害、不愉快。


『単刀直入に伺います。先日、配信で飲まれていたビールですが……製造免許はお持ちですか? 酒税法違反の疑いがあります。直ちに納税を……』「ちょっと待って」。私は一番太い枝に刃を当て、冷ややかに遮った。「貴方たち、『どこの国』の国税局なの?」『は? それは当然、王国の……』「ここ、ダンジョンよ? 貴国の主権は及んでいないはずだけど。ここは私の庭、私の国。法律も税率も、決めるのは女王である私よ」。 


独立、宣言。


「ふぅ……いい汗かいた」。一仕事終えて部屋に戻り、熱い紅茶を淹れる。労働の後のティータイムは格別だ。私はソファに沈み込み、タブレットを取り出した。「さて、さっきのレゴ配信の反省会でも……ん?」。画面を見て、私は紅茶を吹き出しそうになった。


噴出、寸前。


配信中。の赤い文字が点滅したままだったのだ。「嘘、切り忘れてた?」。画面には、私が無言でハサミを振り下ろし、最後に国税局へ独立宣言を叩きつけるまでの「バラの断頭台」が、ノーカットで垂れ流されていた。


放送、事故。


恐る恐る同接数を見る。「……は?」。桁が違う。レゴの時の十倍、いや二十倍だ。コメント欄は『ハサミの音がASMRすぎる』『女王様かっこいい』『無慈悲な剪定たまらん』『国税局を論破したwww』と大盛り上がり。


理解、不能。


スパチャの雨も降っている。「なんで? ただ枝を切ってただけよ?」。あんなに苦労して組み立てたレゴ城よりも、私の日常の庭仕事の方が需要があるなんて。


需要、発見。


「園芸……もしかして、金脈?」私は即座に検索をかけた。『ガーデニング 動画』。すると、トップに出てきたのは『ガーデン君の園芸塾』というチャンネル。サムネイルには、麦わら帽子のおじさんが満面の笑みで「ニーム」という謎の粉を紹介している。


巨星、発見。


再生回数は……数百万回!? ただの土いじりで? しかも概要欄を見ると、企業案件タイアップの嵐だ。「天然素材で虫除け……ニーム……? ミームだっけ?」。パッケージにはご本人の顔写真まで入っている。園芸界、想像以上に金が動いている。


市場、巨大。


「勝てる……!」私は確信した。レゴはライバルも多いし金もかかる。でも、このダンジョンの「ドールハウス庭園」なら、資材は魔法で無限、ロケーションは最高、おまけに毒舌女王(私)付きだ。「よし、次は肥料の配合配信ね」。私は冷めた紅茶を飲み干し、不敵に微笑む。いつか私の顔写真入り培養土、「悪役令嬢の土」を売り出してやるわ。


野望、点火。


一方、王城の作戦会議室。元婚約者の王太子は、青ざめた顔で自分の首筋をさすっていた。スクリーンに映し出されているのは、私が無表情で「パチン、パチン」と太い枝を切り落とす映像だ。「見ろ……あいつの目。あれは枝を切っているんじゃない。余の首を想定している目だ!」。ハサミが鳴るたび、彼はビクッと肩を震わせる。被害妄想が暴走し、彼は完全に怯えきっていた。


処刑、幻視。


「しかし殿下、問題はそれだけではありません」。控えていたヤメ検弁護士が、渋い顔で口を開く。「彼女の最後の発言……『ここは私の国』。あれは事実上の独立宣言です。ダンジョンが統治外エリアである以上、国際法上は『隣国』扱いとなり、もはや王国の法律で裁くことは不可能です」。脱税で追い込むはずが、まさかの外交問題に発展してしまった。


主権、喪失。


その時、横で爪を噛んでいたヒロイン(聖女)が、食い入るように画面を指差した。「ちょっと待って! あの後ろに映ってる花……あれ、『幻の青いバラ』じゃない!?」。彼女の金切り声に、会議室がざわつく。青いバラ。一輪で城が建つと言われる伝説の花が、雑草のように咲き乱れているのだ。「あれを売れば……国庫が潤う! 私のドレスも買い放題よ!」


強欲、炸裂。


「なるほど……ならば手はある」。王太子が邪悪な笑みを取り戻した。法律も暴力も通じないなら、行政指導だ。「『植物防疫法』違反だ。ダンジョンの植物は未知の病原菌を持っている可能性がある。生態系を守るという名目で立ち入り検査を行い、あのバラを全て没収しろ!」。彼は即座に、王室御用達の『カリスマ庭師(選民意識高め)』と、植物検疫官の派遣を決定した。


検疫、悪用。


「誰か! 誰かあのバラを没収しに行ける者はいないのか!」王太子の怒声が響くが、会議室は静まり返っていた。まずは近衛騎士団長が、視線を逸らしながら一歩下がる。「無理です。あそこには白と黒、二匹のフェンリルがいます。あくび一つで精鋭部隊が空の彼方へ消えたのを、殿下もお忘れではないでしょう? 部下を犬死にさせるわけにはいきません」。物理的な戦力差は、もはや絶望的だった。


戦意、喪失。


「では国税局! 貴様らなら……」「いえいえいえ、無理です」。局長が食い気味に否定する。「電話口であの剣幕ですよ? 『ここは私の国』と独立宣言までされました。こうなると一国内の脱税ではなく、国家間の外交問題です。我々の管轄外ですし、何より……あの女性、怖すぎます」。彼らはペンと電卓しか持っていない。狂犬のような元婚約者と、魔獣の群れに勝てるわけがない。


管轄、外。


「ええい、役立たず共め! ではどうする? 指をくわえてあの女が肥え太るのを見ているだけか!?」王太子が喚き散らす。しかし、誰も目を合わせようとしない。全員の心が一つになっていた。『お前が行けよ』。沈黙の中、最年長の宰相がおずおずと口を開く。「……殿下。相手が独立国家の元首を名乗る以上、対等な交渉ができるのは……次期国王であらせられる殿下しかおりません」。


責任、転嫁。


「……は?」王太子の顔が引きつる。「余が? あのダンジョンへ?」。宰相は満面の笑み(目は笑っていない)で頷く。「はい。親善訪問という名目で、殿下が直接乗り込み、平和的にバラを譲り受けるのです。これぞ王者の外交」。逃げ場は塞がれた。プライドの高い彼に「怖いから行きたくない」とは言わせない完璧な布陣だ。


外堀、埋まる。


最後まで読んで頂きありがとうございます。


【冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?】シリーズ 展開中です。


宜しくお願い致します。


伊部 拝(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)ペコリ


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