生徒会合宿で広報のお仕事を知ろう
そして私と俊くんは美玲先輩と東堂先輩の下で広報の仕事を教わることになる。
が、仕事を教わる前に、忘れぬうちに東堂先輩にジャージを返しておく。
「ああ、相田に渡していたんだったな。洗濯までしてくれたのか。助かる。」
「いいえ、持って帰ってしまってすみません。マネージャーの方に渡す暇がなくて。」
未羽が夢城さんに渡すつもりはさらさらありませんでしたが。
「夏樹、雪くんと会っていたのか?」
「夏の合宿でたまたまな。その時に預かってもらっていたんだ。」
「ほう。それは確か、大事にしているA球団のジャージだろう?人に貸さないんじゃなかったのか?」
「こいつは信用できるからな。」
そう言って、爽やかイケメンスマイルを私に向ける東堂先輩。
先輩、無駄口たたいてないで、仕事の方説明して下さい!!!
私の視線に気づいた先輩がこほん、と咳払いして説明を始める。
「あれだな、美玲が副会長だから、相田はあとで直接美玲から副会長の仕事を聞いてくれ。とりあえず、先に広報の仕事を説明する。広報は、学校行事や新しい学校のニュースをポスターなどの形で作り、掲示する役割だ。お前たちも、校舎入ったところにある掲示板は知っているだろう?あそこの管理も仕事だ。」
「新聞部とは何が違うんですか?」
「いいポイントだ、俊。新聞部は当然報道内容を制限されていない。デマもあれば、ゴシップもある。俺たちが出すのは学校側からの公式のお知らせだ。」
なるほど。
「貼る場所は靴箱前の掲示板だけなんですか?」
「そんなことはない。学年掲示板に全てに貼る必要がある。だから2人割り振られているんだ。」
人数の多いこの学校には、靴箱が学年ごとに3か所ある。その上、1学年10クラスあるからニュースをくまなく伝えるために、各学年のフロアに3か所ずつ掲示板がある。それから、職員室の前、美術室の前、保健室の前、図書室の前に1つずつ、2か所ある購買の前にそれぞれ1つずつある。加えて、部室棟という別棟があり、その中に3か所掲示板がある。
つまり、全部で…
「21か所…それもあの広い学校全体に…。」
単なる肉体労働だ。
「ま、私たちもやるわけだから、4人でやることになる。1人5か所程度だ。大丈夫だろう。」
「今まで先輩たち、2人でやって来られたんですか?」
俊くんが愕然として訊くと、
「まぁね。でも、私たちがやろうとしていると大抵女の子たちがやってきて『私たちも手伝います!』と言ってくれたから、実際は大したことなかったよ。」
それは美玲先輩も東堂先輩も女子生徒にかなりのファンがいるからなしえた技。私と俊くんだと、学校中を走り回ること間違いなしだ。
「ポスターの作り方は、これから俺たちが教える。特殊なソフトを使うからな。それに慣れてもらわなきゃならなくてな。」
そう言ってパソコンを立ち上げる東堂先輩。
「俊。相田は副会長としての仕事があるからな、記事の内容は二人で考えるとしても、お前がもっぱら作るのはやってやれ。これから作り方を教える。」
「はい!」
「ま、俺らもいるしな、実際は四人で考えるんだろうけど。だが次の記事は二人に作ってもらおうと思っている。」
「え、どんな内容ですか?」
「新生徒会メンバーの紹介の記事だ。」
俊くんが東堂先輩と一緒にパソコンのモニターを覗き込んで作業方法を教わる間に私は美玲先輩に向き合う。
「美玲先輩、あの、ふく…」
ぎゅむ!!
「うえ!?」
柑橘系の香りが広がる。先輩、つけているんだろうか?それより、なぜ先輩の腕の中に入れられているんでしょうか?
「もう一回言ってくれ!」
「あの、副会…」
「違う、その前!」
「えーっと。美玲先輩?」
「あぁ、なんて甘美な響き!美玲先輩、なんて…!美少女の口から発せられる美玲先輩…その響きが私の胸をくすぐる…」
先輩、絶対演劇部ですよね、多分いや間違いなく演じる方だと思うけど、脚本もできるんじゃないですか?
「美玲、相田は副会長の仕事の説明を訊きたかったんじゃないか?」
「そうです。」
「すまない。ああ、私はこれからの生徒会生活が楽しみで仕方がないよ…!」
私は不安で仕方がないです。
「副会長のお仕事って何ですか?」
「あぁ、会長の補佐がメインだが、特別にあるのは、風紀維持だな。」
「風紀、と言いますと、風紀委員ですか?一学年600人、全校生徒1800人のマンモス校の風紀維持を一人でですか!?」
「落ち着きなさい、雪くん。そんな鬼畜なことは、さすがに海月もさせないよ。風紀の仕事は基本的に先生が行っている。校門前の風紀チェックも先生がやっているだろう?副会長の仕事は、先生から挙げられる風紀違反生徒リストの管理とその改善策の提案、そして没収品の管理だ。といっても、最後の没収品管理については先生がほとんどやってくれるから、反省文を書いた人と持ち物を照合して返すという仕事だな。」
よかった…。鬼畜な会長ならそれくらいやらせかねないと思った。マトモな仕事内容だ。
「安心しました。それなら出来そうです。」
「そうだろう?雪くんならそういうのは得意そうだからね。私も一緒にやるから、気張らなくていい。」
「はい。」
にっこり笑うと、美玲先輩が「可愛い、可愛すぎる、罪だ…!」と崩れ落ちた。
先輩、男前な美人が台無しです。
今日はバレンタインデーですね。2月14日の活動報告に、雪×俊くんでバレンタインデーif話を書いてみました。ですが、激甘(当社比)なので、秋斗ファンや上林ファンの方はがっかりされるかも。興味のある方のみご覧くださいませ。




