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ゲーム補正を求めて奮闘しよう!  作者: わんわんこ
【高校2年生編・2学期】
207/258

蛮勇は逆鱗に触れる。(対新聞部編その2)

夏休み明け試験を終え、こめちゃんたちの調査が終えるまで、私たちは他の仕事をしていた。この時期は構内見回りやら会計チェックやら、二学期の活動方針やらで忙しいから新聞部だけには構っていられない。

そんな日の放課後、桃に呼ばれた。

「女王陛下!」

「何?」

「ちぃかさんという方が女王陛下に用事がといらしてるんす。お知り合いなんすか?」

「ちぃか…?あぁ!!うん、友達!」

周りのみんなが仕事を片付けている間を縫って外に出る。

「ちぃかちゃん、久しぶり。」

「雪ちゃん!」

彼女はちょうど1年ほど前、昇降口の清掃を手助けしてくれた子だ。転校生だったとかで、少し話した覚えのある、ゲーム上はモブの女の子。

「最近ファンクラブで写真のことを探してるって聞いて来たの。あたし、話せることもあるかなって。」

「ありがとう!ちぃかちゃんも誰かのファンクラブに入ってるんだ?なんか意外!誰の?」

「…その、えっと。」

「あ、ごめんね、プライベートなこと訊いちゃって。この中にはファンクラブの対象の人たちがいるんだもん、話しにくいこと訊いちゃったね。忘れてくれる?立ち話もなんだし、入って?」

「ええええっ、いいの!?」

「もちろんだよ。」

「じゃ、じゃあ…!し、失礼しますっ!!!」

「ひ、ひ、ひ、秘密の花園ぉっ!!」という謎の言葉を呟きながらソファまで案内されて、縮こまって座るちぃかちゃんを見て冬馬がこっちにやってきた。

「雪、彼女は?」

「あ、友達!去年生徒会の仕事手伝ってくれて知り合ったの。」

紹介した彼女は「友達…」と小さく呟いて俯いている。

あ、さすがに1度話しただけで友達は図々しかったかな。

「あ、あたし、小見家知依佳(こみやちいか)って言って、雪ちゃんとは去年ちょっと話して!あ、えっと!と…友達っです!!」

挙動不審のちぃかちゃんに対して冬馬はにこりと外用の笑顔を向けた。

「そうなんだ。俺、上林冬馬です。」

「知ってます!冬王子…じゃなかった上林くん有名だから!」

慌てた様子でちぃかちゃんが言う。

「あーそのあだ名ね…それ恥ずかしいんだけど、誰もやめてくれないんだよな…。」

「そうですよねー?上林先輩。王子様ですもんね。白タイツとか履いたらどうですか?」

「白馬がいないから俺だけその役やってもね。太陽くんが白馬役やってくれるなら考えるよ。」

「なんで俺があんたの下で這いつくばらなきゃいけないんですか!」

太陽、あんたなんだかんだ冬馬好きなんじゃないの?さっきまで本気で怒ってたわりには自分から冬馬のところ行って話しかけてるし。

太陽と冬馬がバチバチといつもの低レベルの戦いを繰り広げるのを見て、ちぃかちゃんは慌てたように付け加えた。

「上林くんが有名なのは、別にそれだけじゃなくてっ。あ、雪ちゃんの彼氏さんだしっ!」

ちぃかちゃんのフォローに、冬馬が勝ち誇った顔で太陽を見て、太陽は悔しそうに冬馬を睨みつけている。

その様子をちぃかちゃんは信じられないという顔で見ている。

この人たちの外面(そとづら)だけしか知らない子から見たら、確かに仰天ものかもしれない。


「ちぃかちゃん。それで、写真だったよね?」

「はっ。そうそう、そうなの。雪ちゃん、新聞部の写真についての情報を集めてるんでしょ?あたしに出来る範囲で集めてみたの。」

「え、ありがとう!!ちぃかちゃん!!」

ちぃかちゃんの前に猿がお茶を出し、他のメンバーも彼女の周りに集まる。

彼女は豪勢なメンバーにちょっと引いていたようだけど、気を取り直してバッグからファイルを取り出した。

「あたしが友達とかから集められたのはこの辺り。まず、これは絶対表に出さないって条件で売られてるんだって。秘密裡で。その約束を破ったら二度と売ってもらえないし、持っている写真も没収されるっていうペナルティー付き。」

「なるほど、徹底しているんですね…。」

神無月くんが思案深げに眉を寄せ、ちぃかちゃんの方は頷きながらファイルの写真を並べた。

「で、えっと。値段は差があるらしくってね。これは50~100円。」

そう言いながらまず示されるのは、遠目から撮ったと見られる私たちの写真。ピンボケしているものもある。よく見えないものが多い。

「これが300円。」

それは体育祭とかでオープンで撮られた写真だ。一応私たちの承諾を受けているのもある。東堂先輩と太陽のサッカーシーンなんかは学校行事の一種なのでぎりぎりセーフ。

「これが500円。」

次に示されたのは、それぞれの個別の隠し撮り写真だ。中には私服の物もある。

「これなんか完全にアウトじゃない?」

祥子が、プライベートな私服で撮られた三枝兄妹の写真や美玲先輩と泉子先輩がショッピングしている写真を示す。

「あ、これ。こないだの祭の!」

射撃の銃を構える祥子を支えるために覆いかぶさったようになっている太陽の写真だ。

「げ。俺こんな恰好してたのかよ!?最悪だ…。」

「さ、最悪ってなによう…。」

頭を抱える太陽に祥子が地味にしゅん、としている。

げ、もしかして、私と冬馬のキスまがいのシーンとか…。

「雪、大丈夫。俺と雪のプライベートの写真はないはず。」

また心を読んだな!冬馬!!

「なんで分かるの?」

「俺、そーゆー時、特に周りに注意してるからな。気づかないわけないだろ。」

「…どーゆー時ですか?ちゃんと教えてもらえます?」

「さぁ?聡明な太陽くんなら分かるんじゃないか?」

「ああ、えっと。これが800円ラインです。」

冬馬と私が手を繋いでいる写真や、こめちゃんと会長の見つめあう写真とか、桜井先輩と夢城さんなんかキスしてる写真もある。

「…これはあれだね、恨みつらみを言いながら私の部分に五寸釘打つのに使ったりするんだろうね…。」

「なっ!!葉月がこれを手にしましたら枕の下にいれて寝ますのに…。葉月がこれ欲しいですわ!」

「だめだよっ葉月!!…あれだね、それぞれの先輩方の顔が優しいもんね。あんまりちゃんとは見られない姿だし、見てるとなんかどきどきします。」

祥子が羨ましそうにそれを見つめる。

だけどこんなのを隠し撮りされて、それも売られているなんて、いい気分はしない。

未羽については免罪符を与えているのでここではあえて触れない。あの子は少なくとも売ったりはしないし。

「ていうか、よくあの会長の撮れましたね、新聞部。」

「むしろ会長のは簡単だと思うよ?」

「え?なんでですか?」

ま、神無月くんを初めとして、祥子以外の一年生には分からないだろうね。会長は「一見」隙がないように見えるもん。

「会長は、増井と一緒にいるとき視野がものすごく狭くなるんだ…。」

「うん、普段は草食動物並、350度くらい見えてるような人なのに、こめちゃんがいると、肉食動物並、前方30度、こめちゃんが見えるくらいの範囲しか見えてないから。」

祥子はため息をつき、あとの一年生は豆鉄砲を食らった鳩状態。

「…でも、ばれたら…」

「間違いなくお怒りになるだろうね。」

「新聞部のやつら、勇気あるなー。俺ならぜってーしねーけど。あの会長には睨まれたくねーよ。」

太陽がぶるっと震えた。

さすが太陽。ちゃんと自分より上の相手を見極める力に優れている。

「あの、で、これが。…最高額の1000円です。」

おそるおそるちぃかちゃんが出してくる一枚に全員が凍りついた。

どこで手に入れたのか、こめちゃんのスクール水着写真だ。胸元谷間アップの。きわどい角度から撮られているようだ。

「やばい!!これ、会長の地雷だ!!!!」

「何が私の地雷なんです?」

「「「「「「「ぎゃああああああああ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」

「かかかかか会長っ!どどどどどうしてっ!?どうして今この瞬間にここにっ!?!?」

にっこりと氷点下の笑顔を浮かべて会長様がそこにいらっしゃった。

「何って、まいこさんに頼まれて私のファンクラブに行ってきたところですよ。」

後ろからげっそりした様子の俊くんと、会長と一緒にいられて嬉しそうなこめちゃんが入ってくる。

「あああああ、あ、うううう海月先輩っ。あのあのあのっ。」

「こんにちは。これはいただいてもいいですか?」

「あの…借りたもので…。」

「大丈夫です。今私が直接ファンクラブの統括会長にこれらを廃棄させることの徹底を丁寧にお願いしてきました。」

「…お願い?」

今、お願いって言葉が、「脅し」に聞こえました。空耳ではないと思います。はい。

「ごごごごごごめんなさい。」

会長は氷点下の笑顔を消し、本当に優しい、包み込むような笑みを浮かべてちぃかちゃんを見た。

「おや、私は貴女に『は』怒っていません。ご安心を。むしろ、このような貴重な情報をくださってありがとうございます。貴女は大変でしたでしょう?ペナルティーのあるこれらを友達から借りるなんて。友達がいなくなるかもしれないと思われたでしょう?それを相田さんのためにやってくださったんですね。相田さん、あなたはいいお友達をお持ちだ。」

「でしょう?私もそう思います。ありがとう、ちぃかちゃん。ちぃかちゃんのおかげで、証拠も得られたよ。」

私がちぃかちゃんの手を取ってお礼を言うと、ちぃかちゃんはしばらく黙ってから意を決したように顔を上げた。

「雪ちゃん!…あの。これは。言おうか迷ってたんだけど。」

「ん?」

「新聞部…あのね。新聞部が、盗撮してるって話があるの。」

「これ、じゃなくて?」

「その…女子更衣室。」

「「「「「「!!!!!」」」」」」

「あたし自身はないんだけど、それで脅されて泣いてる子も見たことあって。早く、早く言わなきゃって思ってたんだけど、なかなか言えなくて。…ごめんね。」

「…ううん。勇気出してくれてありがとう。」

私は俯くちぃかちゃんの手を固く握った。




ちぃかちゃんを無事に送りとどけた後、生徒会室に入ると、そこには既に地獄の閻魔様がいらっしゃった。

既に人を一人()ッたかのような顔をしていらっしゃる!

すぐ理由は分かった。こめちゃんが自分の水着盗撮写真に、それもきわどいところをどアップにされている写真に気づいて、酷い…と泣いているからだ。

そして全員が確信していた。


間違いない、新聞部はこの瞬間に握りつぶされ永遠に再建不可能になることが決まった!!!


「ふふふふふ。彼らは予算を減らされたようじゃ懲りなかったようですねぇ。せっかく猶予期間を与えたというのに。…上林くん。」

「はいっ!!」

太陽やあの、普段表情のほとんど変わらない三枝くんすら顔を蒼ざめさせる中、会長は冬馬を呼んだ。

冬馬は頑固親父に拳固を食らう寸前の子供のように怯えている。

珍しすぎる光景だ。

「しばらくこの件に関する全権を私に預けてもらいます。」

「そ、それはもちろんですっ。どうぞ。」

「あと、みなさんには『協力して』いただきます。いいですね?」

「「「「「「「「「「「「「「「もちろんでございます!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」


逆らえるわけありませんとも、生徒会の真の支配者様には。


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