episode2-6 奪還③
ちょっと長いです
魔法局は魔法少女同士の縄張り争いに関与することはない。それが、殺し合いにまで発展すれば話は別だが、力づくで縄張りを奪われたという程度では動かない。だからディスト発生の通知は、その地域を守っている魔法少女に対してではなく、その発生地点に近い魔法少女全員に機械的に送られる。
咲良町は一か月ほど前からディストの発生率が徐々に上がり始め、今では狩場と言われるほどに高まっている。ブレイドたちの訓練中も、ほぼ毎日マギホンにディスト発生の通知は届いていた。それを無視して、襲撃者たちに戦いを任せて訓練を続け、とうとう決行の日はやってきた。それぞれ違うディストの発生通知を受けたブレイドたちが、魔法陣の光に包まれて欺瞞世界へ転移する。
転移が完了したブレイドの視界に、堅い木の根に貫かれて消滅していくディストの姿が映った。
地中から突き出たその槍の根元には、ブレイドのよく知る魔法少女が一人。
心臓の鼓動が早くなるのを自覚しながら、冷静であることを自分に言い聞かせてブレイドはその魔法少女へ近づいた。
「まだ、辞めてなかったのね」
ブレイドが転移して来たことに最初から気づいていたのか、あるいは近づいてくる足音で気が付いたのか、振り向いてブレイドへ話しかけるドライアドに驚いた様子はない。
ドライアドのその第一声に、ブレイドの感じていた疑惑はほぼ確信に変わったが、まだそのことを指摘はしない。言い逃れをさせるつもりはなかった。
「先輩は、どうしてこんなことをしてるんですか?」
エレファントに諭され、ドライアドが本物であると受け入れたブレイドだったが、実際に本人を前にして平静を保っていられるかは自分でもわからなかった。だが、予想に反してブレイドは冷静だった。目の前の魔法少女がドライアド本人であると認め、その悪行を認識したうえで、対話と言う選択肢を選べる程度には。
「言うまでもないでしょう? こんなに魅力的な狩場は早々ないもの」
「他の二人にとってはそうだとしても、先輩のそれは嘘です」
ナックルが集めて来た情報を全員で共有した際に、とある一つの疑問が浮かび上がった。それは、ドライアドがなぜ今回の襲撃に参加しているのかと言う動機についてだ。
当初は、一度は出て行った古巣が割の良い狩場となったため縄張りを奪うためだと思われていた。しかし、事情はそう単純なものではなかった。ドライアドの現在の活動地域は頬月町という場所だが、この頬月町も狩場というほどではないがディストの出現率が高まっているのだ。それこそ、魔法少女の数が足りずに未熟な魔法少女が重傷を負うほどに。ポイントを稼ぎたいだけならば、そんな頬月町を捨ててまで新しい狩場に襲い掛かるというのは不自然だった。
加えて、そもそもドライアドは家庭の事情で咲良町から頬月町へ活動地域を変えることとなった。今は夏休み中だから何かしら言い訳をして咲良町に滞在しているのだろうが、8月が終わればずっと咲良町に居ることも出来ないはずなのだ。
つまり、ドライアドが咲良町を襲った動機は狩場を自身の縄張りにするためではない可能性が高い。
「先輩は派閥にだって入ってないですよね。なのにどうして自然派に手を貸してるんですか。もしかして脅されてるんですか」
「……はぁ。相変わらずごちゃごちゃとうるさい子だわ。あなたのそういうところが嫌いだったのよ」
面倒くさそうに溜息を吐いたドライアドが、太い枝を編んで作られた大きな杖を出現させた。
ブレイドにはドライアドのその言葉が嘘か本当かわからない。ただ、どっちであったとしてもやることは同じだ。話をする気がないのなら、話す気になるまで戦い続ける。
「うねり打つ樹根」
「剣の舞踏」
前回は一方的に呑み込まれかけた根の波を、六本の透明な腕が振るう剣が切り開く。単純に手数が増えたこともそうだが、フェーズ2への覚醒は専用武器だけではなく六本の腕が握るそれぞれの剣の性能も向上させていた。
「舞い落ちる緑葉」
このままでは突破されると判断したのか、ドライアドは刃のように鋭い葉を射出する魔法を発動し迎撃を図った。しかしブレイドはそれを、半身となり致命傷となり得るものだけを切り捨て、滑らかな歩法で回避する。サムライピーチのそれには到底及ばない、全身にいくつもの切り傷を作りながらも、ブレイドは全ての根を切り伏せ、刃葉の嵐を切り抜けてドライアドへ斬りかかった。
「立ちはだかる巨樹」
剣がドライアドへ届く直前に地面から太い巨木がいくつも伸びてブレイドの剣を遮った。攻撃のためのものではなく防御のためのその樹木は当然にこれまでのものよりもずっと堅く、ブレイドの専用武器を持ってしても一撃で断ち切ることが出来ない。立ちならんだ樹木の半分ほどを伐採したところでブレイドの剣は止まってしまった。
「突き破る樹根、動き出す樹木」
透明な腕が振るう六本の剣で強引に壁を突破しようとしたブレイドの足元から、鋭い木の槍が飛び出し串刺しにしようと襲い掛かる。咄嗟に壁に食い込んだ剣を手放しバックステップで回避するブレイドだが、それを追いかけるように着地先の地面からも槍が飛び出した。
着地の直前、六本の剣で槍を叩き壊し回避に成功するが、その隙にドライアドは更なる魔法を発動していた。ブレイドの一撃を防いだ木の壁の内、残った三本が根を足のように動かして一人でに歩き出し、枝を腕に見立ててブレイドに襲い掛かる。鋭く尖った枝を無防備に受け止めれば、身体中に小さな穴が空くことになるのは間違いない。
「間剣泉!」
ゆっくりと動く樹人の攻撃範囲に入るよりも早く、ブレイドが魔法を発動すると全ての樹人を覆うほどに大きな魔法陣が出現し大量の剣が噴き出した。数えきれないほどの刀剣に切り刻まれた樹人が細かい枝のように地面に崩れ落ちる。
「覆い浸す種油、爆発する堅果」
「刃の身体、剣鬼」
ドライアドが高く跳躍し民家の屋根に移動するのと同時に、滑りやすい油が地面を覆いつくす。一歩でも動けば転んでしまい、全身が油まみれになって武器を握ることさえ難しくなる厄介な魔法だ。加えて発動したのは、爆発する木の実の魔法。堅い殻に包まれた木の実が爆発し、更にはその破片を飛ばして攻撃する二段構えの凶悪な攻撃魔法。
降り注ぐ木の実が、ブレイドから少し離れた場所で爆発する。あまりにも近すぎれば六本の剣に爆発前に弾き飛ばされるからだろう。爆風で態勢を崩したところに破片が襲い掛かるだけでも魔法少女に対しては十分な威力を持つ。油の影響でもはや立っていることすら難しいはずのブレイドに、それをかわす術はない。もしもブレイドが、ドライアドの知るころのままであれば、それで終わりだっただろう。
だが、木の実が爆発し煙の晴れたその場所に、手放したはずの黄金の剣を携えブレイドは変わらず立っていた。小さな切り傷こそ増えているものの、致命的と思わしい傷はない。
魔女たちとの訓練によってブレイドが新たに習得した二つの魔法が、奇跡的に噛み合って窮地をしのいだ。
刃の身体は自身のどこからでも刃を生やすことの出来る魔法で、ブレイドはこれを足の裏から生やすことで地面に突き刺し、アンカーとして転倒することを阻止した。
さらに、自身剣技と身体能力を一時的に引き上げる剣鬼の魔法により、迫りくる破片の一つ一つを弾き、回避することを可能とした。
しかし、刃の身体はともかく剣鬼は魔力の消耗の激しい魔法であり、ここぞというとき以外では常用出来ない欠点もある。今はまだ余裕があるが、ドライアドが同じ攻め方を繰り返せばいずれはブレイドがガス欠となって倒れることになるだろう。もちろん、ブレイドはこのまま大人しくやられるつもりはないのだが。
「……少しは成長してるのね」
「やっと話してくれる気になりましたか?」
「面倒だと思ったのよ。一気に終わらせてあげるわ」
ドライアドが咲良町を去り、ブレイドたちと共闘することがなくなってからすでに五か月近い時間が経過している。そしてその五か月の間に成長したのはなにもブレイドたちだけではない。これまでドライアドの使った魔法は、全てブレイドの知るものだった。ドライアドが咲良町に居たころからディストを相手に使い、ブレイドも良く知る魔法だった。だから対処できた。あらかじめ、この魔法に対してはこのように対処するということを決めていたのだ。
だがブレイドが知っているドライアドの魔法はもうない。一気に終わらせるというのがブレイドの知らない大技であるならば、それに対処できるかはブレイドの本当の実力が試されることになる。
「環境魔法『森』」
環境魔法、それは自然系統の魔法少女の奥義とも言うべき魔法の一つだ。自身の扱う自然魔法と同じ環境を作り出し、他の魔法の威力向上や環境そのものを武器として扱う等、様々な効果を持つ。
奥義と言われるだけあって、フェーズ2魔法少女でも極わずかにしか習得していない高度な魔法であり、ドライアドのそれは環境魔法としては最低限度の規模だった。
詠唱が完了するのと同時にあちこちの地面からまるで動画の早送りのように樹木が伸び、生い茂る緑色の葉が空を覆う。それはブレイドの周辺だけではなくどんどん広がりを見せていき、直径100メートルにも及ぶ範囲を密集した木々が覆いつくした。
直接相対する環境魔法に圧倒されているブレイドへ向けて、周囲の高木の根が、枝が、葉が襲い掛かる。この森そのものが魔法となっているのか、ブレイドという異物を排除するように苛烈な攻撃が畳みかけられる。
足場まで森林化したことで油が流され足場ができ、致命的な攻撃だけは当たらないように立ち回るブレイドだが、今まで以上に刻み付けられる傷は多く、深くなっている。このままでは長くもたない。ブレイド自身それを理解しているからこそ、剣鬼の魔法は使えない。それを使えば多少はマシになるだろうが、その間にドライアドを見つけて打倒しなければ、自分が倒れるのが早くなるだけだ。
ドライアドを倒すには、この森は邪魔過ぎる。
「間剣泉」
自分の足元を中心に直径3メートルほどの魔法陣が広がり、無数の刀剣が勢いよく噴き出した。刀剣がブレイドを守るように迫りくる植物の群れを切り刻むが、その影響を受けるのはブレイドも同じだった。刃の魔法少女だからと言って切られても傷がつかないなんてことはない。ブレイドは、刀剣類にのみ干渉できる六本の見えない腕で自分の足元を覆い、持たせた剣とその腕そのものを使って噴き出す刀剣を防いでいた。
当然こんな荒業は長くはもたない。だが、ブレイドにはその短い時間が必要だった。何物にも邪魔されず集中できる時間。それが、切り札の魔法を使うのにどうしても必要だった。
植物の刻まれる音や金属同士がぶつかる音が鳴り響く中で、ブレイドは両手に持つ黄金の剣を正眼に構え目を閉じた。
瞼の裏に浮かび上がるのは、いつも自分の先を行っていたドライアドの姿。ブレイドは今、その呪縛を断ち切るように、瞳を開けて剣を水平に傾け腰の後ろにまで引き絞る。
「大いなる一振り!」
詠唱と同時に力強く踏ん張り、腰と腕を動かして大剣を振りぬいた。さらには遠心力のままに身体を一回転させ、最後は停止しきれない剣が地面に突き刺さった。本来のブレイドではとても待ちあげられないほどの重みが、その魔法の乗った剣にはあった。
そして次の瞬間、悠然とそそり立つ大樹たちは自身が切られたことに遅れて気が付いたかのように、重たい音を響かせて次々と倒れていく。
本来ならば届くはずのないずっと遠くの樹木も例外なく全てが伐採され、残ったのは地面に転がる大量の木材と切り株のみ。見晴らしの良くなった景色の先で、ドライアドが膝を付き、呆然としながら切り開かれた森を見ていた。その姿から最早戦意は感じられない。
「なんで……、どうしてよ……。私は……!」
「そんなに、私を引退させたかったんですか?」
「っ!」
ドライアドへ歩み寄ったブレイドが黄金の剣を地面に突き立てて疑問を投げかけると、ドライアドは目を見開いてブレイドを見上げた。
「……そう、知っていたのね。出所はナックルね」
「ヴァンパイアちゃんのことはそうです。でも、先輩の目的は私の推測です」
戦う前は取り付く島もないように見えたドライアドだったが、ことが終わってしまえば穏やかな、というよりは諦めているような様子だった。それを見て、そしてドライアドの言葉を受けて、ブレイドは自身の推測が正しかったことを知った。ドライアドの目的は最初からブレイドに魔法少女を辞めさせることで、戦いはそのための手段に過ぎなかった。だからどれだけ力の差を見せつけようと諦めず食らいつくブレイドを見て、ドライアドの心が先に折れた。ブレイドの魔力はほぼ尽きかけており、このまま戦いを続ければドライアドが勝つだろうが、それを悟らせないようにブレイドは涼しい顔をしている。
そして、その目的に至った理由もブレイドは予想していたが、自分で導き出した答えを今でも信じられずにいた。あのドライアドが、今更そんなことで悩むのだろうかと。
「馬鹿な話よね。あなたには怒る権利がある。私みたいな魔法少女に師事したことを」
「私は先輩に色々教えて貰ったことを後悔なんてしてません。間違っていたとも思いません。だから私は、魔法少女を辞めたりなんて絶対にしません」
ブレイドの答えを聞いてうなだれたドライアドが、かすれるような声で呟いた。
「私には、覚悟がなかったのよ……」
「でも、先輩はいつも命がけで戦ってました」
「っ――」
膝を付いたまま、勢いよく顔をあげたドライアドがブレイドに縋り付くように掴みかかった。襲うつもりではなく、激情をコントロールできなかったかのだ。
至近距離でブレイドの瞳を真っ直ぐ見つめるドライアドの目は涙に濡れ、唇は震えていた。
「自分の命を懸ける覚悟なんてとっくに出来てた! いつ自分が死んだって後悔なんてしない! でも! 誰かに命を懸けさせる覚悟なんて出来てなかった!!」
「先輩……」
「あの子が死んでしまうかもしれないって、あなたが命を落とすかもしれないって、そう思うだけで苦しくなるの……。わかってるはずだったのに、わかってなかった……。誰かに命を懸けさせることがこんなに辛いなんて、思ってなかったのよ……」
ずるずると力なく崩れ落ち、ドライアドはうずくまって涙を流す。
それはブレイドが予想した通りで、けれど今更そんなことで悩むのだろうかと疑った通りの理由だった。
ドライアドは魔法少女かくあるべしというタイプの魔法少女だった。魔法少女の使命を果たすことは、魔法少女にとって当然のことであり、同様に命を懸けて戦うことも当たり前だと思っていた。
それを見ず知らずの魔法少女に強要するほど分別がないわけではなかったが、自分の弟子に対しては魔法少女とはそうあるべきだと事あるごとに話していた。
そして、ブレイドやヴァンパイアが高潔な魔法少女として命を顧みずに活動することを誇りにすら思っていた。
だが、その思いは幻想だった。
「ヴァンパイアは、戦う力が残ってないのに逃げなかった……。そのせいで今でも目を覚まさない……。全部私のせいよ。私が、命を懸けろなんて言ったから……」
いざ自分の教えに従った弟子が死に瀕した時、ドライアドの胸は張り裂けそうなほどに痛んだ。それでも最初はよくやった、それでこそ魔法少女だとヴァンパイアを称賛することで痛みを紛らわせていたが、痛みは日に日に大きくなった。
そしてある日、ヴァンパイアの容態が悪化し生死の境を彷徨った時、ドライアドは心の底から後悔した。自分を慕い、いつも後ろを付いて回っていた子犬のような魔法少女。尊大な言葉づかいで生意気なことを言うこともあるが、根は真面目で優しい少女だった。当然ドライアド自身も、その少女のことを気に入り、目をかけていた。そんな少女が、ヴァンパイアが、自分のせいで死んでしまうかもしれない。二度と目を覚まさないかもしれない。そう思うと、居ても立ってもいられなくなった。
ドライアドに出来ることなど一つもなかった。出来るのはただヴァンパイアの傍にいるだけで、後悔と自責の念で死にたくなるような毎日。
「だから、私はそうなる前に辞めさせようとしたんですね」
ブレイドの問いかけにドライアドは何も答えなかったが、沈黙は肯定と同義だった。二度と同じような思いをしたくないと考えたドライアドが今回の凶行に及んだのは想像に難くない。
ナックルがリフレクトから聞き取った話の中に、もしもヴァンパイアが目を覚ましたら魔法少女を辞めるように伝えて欲しいという言伝があった。ブレイドがドライアドの目的に気が付いたのはそれを聞いた時だ。その時点では理由にまでは思い至らなかったが、自分に師事していた魔法少女を引退させようとしているのだと感じた。
あの襲撃の日にブレイドに対して辛くあたったのも、ブレイドを絶望させて魔法少女を引退させるためだったのだろう。事実、エレファントが居なければブレイドが今日この場に立っているかはわからなかった。
「ヴァンパイアさんがどう思うかは知りません。それは先輩が自分で決着をつけなきゃいけないことだと思います。だけど、私は」
ブレイドがうずくまるドライアドの胸倉をつかんで立ち上がらせる。
ドライアドの話を聞いて、ブレイドは思ったのだ。それならこんなところで、くだらないことをしている場合じゃないはずだと。もっとほかに、やらなくちゃいけないことがあるはずだと。
「私は自分の意思で、自分の信じる正義に従って戦ってます。先輩に影響されて今の私があるのだとしても、それを選んだのは私です。先輩に覚悟があるとかないとか、そんなの関係ありません。自惚れないでください。私の選択を背負うのは先輩じゃない。私自身です」
かつてのブレイドだったなら、今のドライアドを見て自分の道を見失っていたかもしれない。ドライアドが自分の教えていたことが間違いだったと言えば、標を見失っていたかもしれない。だけどブレイドはもう、思い出した。自分の信じていたものを、歩むべき道を。だから迷わない。たとえドライアドが迷っていても、ブレイドは迷わない。
「頬月町に帰って下さい。先輩の帰りを待ってる人が居るはずです。もしもヴァンパイアちゃんが目を覚ました時に先輩が傍にいなかったら、きっと寂しいって思いますよ」
掴んでいた胸倉を放して諭すようにブレイドは語り掛ける。
そのブレイドの力強い言葉に、ドライアドは少しだけ驚いたような表情を浮かべた。
「……少し見ない間に、強くなったのね」
「私はもう、一人じゃないですから。先輩だって一人じゃありませんよ。先輩が怖くて踏み出せない時は、私が背中を押してあげます」
「……なんだか生意気だわ」
「自立したんです」
かつて、ブレイドがドライアドを崇拝していた時にはなかった軽口を聞いて、ドライアドは涙をぬぐいながら小さく微笑んだ。
この後輩は、自分が心配するほどもないくらい強くなっていたのだと。




