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第107話 ゴーレム爆弾

デール王国軍に動きあり――その一報が知らされたファング隊は慌ただしく動き始めた。雨よけのためにカノン砲に被せてあった布を引っぺがし、屋内の冷所に保管してあった弾薬を引っ張り出してくる。同時に、大型バリスタには通常弾が装填され、いつでも発射できる準備がされていく。銃や弩を手に持った射手が各自持ち場につき、敵が来るであろう街道の向こうへと厳しい目を向けた。


前回の戦いで天翼団と竜鱗団の二つを潰した影響か、デール王国は最近目立った動きを見せていなかった。下手に手を出して無駄な犠牲を出す事を避けたためだ。そのおかげでファング隊には時間の余裕が生まれたため、彼等は即席の要塞を更に強固に発展させ、ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしないような巨大な要塞を完成させていたのだ。


街道を完全に塞ぐような形で作られた要塞の城壁は高い。コンクリートを積み上げた壁は以前の倍以上の高さを誇っており、敵魔法使いによる地震対策で、奥行きも同じように広がっていた。今の要塞を上から見ると大きな台座のように見えるはずだ。これならドラゴンに体当たりされてもしばらくは保つだろう。


忙しく動く兵士達の近くには、ファング隊にもともと所属していた魔法使いと城からの合流組が、リーフの指揮の下、ゴーレムの制作に取りかかっていた。


そう、リーフが珍しく前線に出てきているのだ。彼女は農業ばかりやる生活に嫌気が差したのか、剛士達が止めるのも聞かずに勝手に城を出てしまった。日ノ本公国では、建国に携わった剛士達四人を英雄視している者も多い。リーフなどは滅多に見られないハイエルフと言う事実も手伝って、王である剛士より人気があるぐらいだ。外見が良いなら中身は度外視されると言うのは、全世界共通の事実なのである。


そんなリーフは自ら発案した自爆型ゴーレムに自信があるのか、敵が来るのを今か今かと待っている。興奮気味の彼女を止められるのは、この場では同格であるファングだけだ。彼は少々呆れつつ、そんなリーフに釘を刺す。


「おいリーフ。何度も言うが、くれぐれも先走って攻撃するのは止めてくれよ。こっちにも段取りってもんがあるんだからな」

「わかってるわよ。仕掛けるのはファングが合図してからでしょ? まあ見てなさい。私が思いついたこの武器の威力、デール王国の連中に見せつけてあげるわ」


チートマニュアルから知識を得たとは言え地雷を発案したのは剛士だし、改良を施したのはマリアだ。控えめに言ってもリーフの功績は三分の一程度だろう。なのに全部自分が考えましたと言わんばかりの態度には、彼女と一緒にここに来た魔法使い達も苦笑しか浮かばない。


「それで、敵はどのぐらいの大軍なのよ?」

「数百ってところだな」

「はあ? やる気あるの?」


リーフが驚くのも無理は無い。名うての傭兵団を二つとも投入してビクともしなかった堅固な要塞に、数百の兵では何も出来はしない。近寄る前に粉砕されて終わるだろう。


「完全に斥候ってやつだな。こっちの武器の射程を詳しく調べるのが目的なのか、それとも無駄弾を使わせるのが目的なのか……どっちにしろ、今回はお前達のゴーレム爆弾に任せる事になる」

「言われるまでも無いわ。数百なら実験にちょうど良い数ね」


弾薬不足を解消するために発案されたゴーレム爆弾だ。ファングは一応配下の兵に戦う準備をさせているが、今回はリーフに任せるつもりでいた。


§ § §


「隊長、敵の要塞が見えてきました」

「ああ、わかってる。情報にあった武器の射程は、あの……地面がえぐれている範囲からだ。間違ってもそれ以上近づくんじゃ無いぞ」


度重なる砲撃で形の変わった地面を指さして彼は言う。デール王国から派遣された斥候隊の隊長は、二回行われた日ノ本公国との戦いに参加していない。つまりカノン砲や銃の威力を直接見ていないのだ。上官から聞かされた未知の兵器の威力は凄まじく、一瞬で大軍が粉砕されるとまで言われている。今回彼等に与えられた任務はその武器を更に詳細に調べる事。下手をすると一人も生きて帰れない任務なだけに、彼等は高額の報酬を約束されていた。


だからといって何も考えずに突撃するほど彼等は馬鹿では無かった。リーフ同様、ゴーレムを使って調査する事を思いついていたのだ。


「よし、魔法使い隊、ゴーレムの準備だ」


彼の命令に従って、数人の魔法使いが呪文の詠唱に入り、彼等の正面にある地面が盛り上がっていく。それは徐々に巨大化していき、最終的には身長三メートル程の巨大な人型に成長した。これはこの世界一般で使われているゴーレムの標準的な大きさだ。それが全部で十体。並の騎士や兵士なら蹴散らせる戦力だった。


「よし、進ませろ」


魔法使い達がコクリと頷く。すると彼等の意志に従って、ゴーレムが重い足音を立てながら、一歩ずつ要塞に向かって歩き始めた。ゴーレムの動作はゆっくりしているが、一歩が大きいので思ったほど遅くは無い。彼等はさしたる抵抗を受ける事無く、要塞までの道のり――その中間地点に到達していた。


「隊長! 何かこっちに向かって来ます!」

「なに!?」


隊長が慌てて視線をゴーレムの先へと向けると、何か丸い形をしたものが猛スピードでこちらに接近しているのが見えた。その数は全部で五十から六十。直径一メートルにも満たない大きさの丸いものが、正面のみならず、斥候隊を囲むようにして接近しているのだ。


「何だか解らんが……攻撃の準備だ! あれを近寄らせるな! 弓隊は順次攻撃を開始しろ!」

「た、隊長! ゴーレムが!」

「!?」


先頭で接近していた一つの丸が、斥候隊の操るゴーレムの足に接触した途端、耳をつんざくような破裂音と共に爆発四散してしまった。驚いている間に他のゴーレムも次々破壊されていく。爆発の余波で近くにあった丸い物体がいくつか誘爆していたものの、他は何事も無かったように接近を続けて来るではないか。


「な、何だあれは!? また敵の新兵器か!」

「こっちに来ます!」

「迎撃しろ! 近寄らせるな!」


ゴーレムを操っていた魔法使い達も加わって、斥候隊は接近するゴーレム爆弾の迎撃を開始した。しかし彼等の攻撃は悲しいほど効果が無い。高速回転する丸い物体に、矢は弾き飛ばされるか、刺さっても中にめり込むだけで終わるのだ。唯一魔法使い達の放つ魔法だけ効果があるものの、一つや二つ破壊したところで数の差はどうにもならない。隊長が逃げる判断をした頃には、もう彼等の目前にまでゴーレム爆弾が接近していた。


「それに触るな! 避けろ!」

「う、うわあああ! 来るな! あっちへ行け!」

「嫌だ! こんな――」


ゴーレム爆弾は逃げようとする斥候隊に情け容赦なく接触し、その体を周囲の兵士ごと肉塊へと変えていく。至る所で爆発が起き、人や土砂が降ってくるため、彼等はどっちへ逃げて良いのか見当もつかず、大混乱へと陥った。その間にも次々と兵士達にゴーレムが接触し、斥候隊の居た場所は阿鼻叫喚の地獄へと様変わりしたのだった。


後に残ったのは四肢を引きちぎられた無惨な死体の山と、運良く生き残った数人の兵士だけ。彼等は仲間の遺体に目もくれず、武器を放り捨てて逃げ出していった。


§ § §


「……なんか、思ってた以上に凄いわね」

「……そうだな。まさかこれ程とは……。使い方次第じゃ大砲より厄介な武器になるぞ」


あまりの威力に冷や汗を流すリーフとファング。この武器の出現が再びフランの頭を悩ませる事になるのだが、それは少し後の話だった。


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