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第105話 地雷

ファング隊の活躍によって日ノ本公国が押しているように見えるが、実は彼等の内情にそれほど余裕があるわけじゃ無い。彼等が数の不利を覆すために頼りにしている武器――銃や大砲は、弾が無ければ使えない。つまり日ノ本公国軍は弾薬の不足と言う深刻な事態に陥っていた。


もちろんすぐに枯渇するほどの備蓄量ではない。全軍で全力砲撃を行えば、あと二回は持つ程度だ。だが逆に言えば二回しか戦えない事を意味している。火薬の生産拠点である種子島では、各地から集めた硝石や硫黄などで連日大量生産をしているが、加工する手間がかかるために生産より消費の方が上回っている。この調子で敵が攻めてくれば早晩弾薬は尽き、彼等は従来の原始的な武器で戦うしか無くなってしまうだろう。


後方にいる剛士より前線で戦うファングの方が危機感は強く、彼は連日弾薬の補給を求めていたのだが、届くのは要求した量の半分程度でしかなかった。


当然剛士達もこの問題は深刻に考えていた。銃や大砲は自分達の命綱であり、それが無くなれば数に押されて蹂躙されるのが目に見えている。どうやって現状を打開するのか、必死で頭を悩ませていたのだ。


「火薬の備蓄自体はあるんだろう?」

「火薬の量は現存する火器に全て弾薬を補給したとしても、五回は戦える量があるわ。エギル達の加工が追いついてないのよ」


ルナールの言葉に剛士は自分の迂闊さを呪った。戦前、彼は職人達の熟練度を上げるために火縄銃の開発から進めさせ、望み通り今はミニエー銃の生産が出来るようになるまで腕の良い職人を増やす事が出来た。しかしここには落とし穴があったのだ。弾である。銃は似たような造りのために少し機構を変えるだけで良い。しかし弾はそう簡単にいかない。火縄銃の丸い玉とミニエー弾の尖った弾では形がまるで違う。せっかく作業に慣れてきたのに、また最初から覚えなければならないのだ。


「職人達を増やせば――」

「それはエギルが許可しないと思うわ。下手に素人が混じって変な物が前線に回されたら、それだけで暴発する危険性が高まるから。弾薬庫が吹き飛びでもしたら洒落にならないわよ」

「う……」


(イタリアの赤い悪魔みたいに敵と味方に恐れられる武器なんぞ必要ないからな。エギルの言うとおりにしておいた方が無難か……。しかしそれじゃ何の解決にもなってないぞ)


「いっその事空からばらまいて火でもつけてみる? その方が手っ取り早そうだし」


リーフの言葉に頷きかけた剛士だったが、即座に首を横に振った。粉状にして蒔いたところで、風に流されるだけで爆発する威力など期待できない。爆弾にしてから投下すればもちろん空襲代わりに使えるが、そもそもその加工が出来るなら弾薬不足には陥っていない。それに日ノ本公国軍には大量に火薬を空輸できる航空戦力が存在しないのだ。


「現実的じゃないな。アイデアは良いんだけど技術的に厳しい物があるから、今の状態では難しい」

「そっか……。いい手だと思ったんだけどな」


ファングが居ない会議室で、剛士達三人はウーンと頭を悩ませる。何か手は無いかと懐からチートマニュアルを取りだした剛士が適当にページを捲ったその時、ある内容が彼の目に飛び込んできた。


「……これならいけるか? でも、これをやると後が面倒なんだよな……」

「何かいい手があったの?」

「ちょっと見せなさいよ」


リーフとルナールの覗き込んだページには、丸い小さな円盤を重ねたような絵が描かれていた。それが何か解らず、二人は首をかしげる。


「何これ?」

「これが武器?」

「ああ。それは地雷って名前の武器だ。原理は単純。中に火薬を詰めたそれを地面に埋めて、踏んだ瞬間爆発させる。銃や大砲のように自分で撃ち込む必要もないし、放っておいても被害を与えられるから、便利な武器だぞ」

「そんなのがあるなら最初から出しなさいよ!」


リーフ達の憤りも最もだが、剛士にはそれを出来ない事情があった。言うまでもなく地雷の危険性だ。


「落ち着け。これはな、便利は便利だができる限り使いたくなかった武器なんだ。後の処理が面倒だから」

「後の処理?」

「そう。これは踏めば爆発させる事が出来るが、敵味方の識別はしてくれない。兵士だろうが女子供だろうが、踏んだ奴を殺す武器だ。おまけに一旦地面に埋めてしまえば掘り起こすのも難しくなる。辺り一帯に埋設してみろ。危険すぎて戦争が終わっても通れなくなるぞ」


現在は戦場になっている場所でも、平和になれば交易路へ変化しても不思議じゃ無い。そんなところに地雷を埋めればどうなるか? 行商人や旅人が片っ端から爆発して、辺り一面スプラッタな状況になるだろう。それを想像したのか、二人は渋面になる。


「しかしそうも言ってられん状況だからな。負ければ全てお終いだ。加工は簡単だし、木製でも作れるからエギル達に頼る必要も無い。木工職人を総動員して作らせたら、敵の進軍ルートに限って、ある程度目処がつく位置に埋めていこう。戦後はそこを危険箇所として一般人の立ち入りを禁じ、臨時の街道を作る。完全に除去が確認できたら通れるようにしよう」

「ちょっと待って! それよりもっといい手がある!」


突然声を上げたリーフに注目が集まる。彼女はもう一度地雷の書かれた絵を見ながら、不敵に笑って見せた。


「わざわざ地面に埋める必要なんか無いわ。私が思いついた手を使えば、戦後の心配なんかしなくても良くなる」

「マジで!?」

「そんな手があるの!?」


最近裏方に徹する事が多かったリーフは、自分の活躍できる場面が来た事で調子に乗り、ここぞとばかりに薄い胸を張る。


「あるわ。既存の魔法と組み合わせれば、この兵器をもっと有効に使えるんだから」


自信満々なリーフに一抹の不安を感じながらも、剛士とルナールは彼女の言葉に耳を傾けた。


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