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【極秘】特別対テロ緊急措置法 制定背景・施行解説および国際戦略機密分析レポート

※本章は、物語の背景を補足するために挿入された“報告書形式”の資料です。

本編の展開に直接影響する内容ではありませんので、読み飛ばしていただいても問題ありません。

もし世界観に少しでも興味を持っていただけた方は、この先もお付き合いいただければ幸いです。

報告書番号:NSC-2060-X07

報告者:国家公安委員会 特別監視室 室長 柴田隆文

提出先:内閣官房/国家安全保障会議(NSC)/公安調査庁/防衛省


第1部 制定背景および施行解説

1. 制定経緯

令和改元に続く泰新(たいしん)13年(西暦2060年)4月、日本国において「国会議事堂占拠事件」が発生。

未成年主体の武装集団“アダルトレジスタンス”による国家中枢制圧は、戦後最大の国家安全保障上の脅威となった。


政府は国家安全保障会議(NSC)を緊急招集。

憲法第41条(立法権)および国家緊急権を拡大解釈し、「特別緊急事態宣言」を発令。

これを根拠に、通常立法手続きを省略し、7日間で特別対テロ緊急措置法が可決・即日施行された。


平成27年(2015年)の「首相官邸ドローン事件」に基づく【小型無人機等飛行禁止法】(成立約2ヶ月)を超える、日本憲政史上最速の立法記録として記録された。


2. 法律の趣旨

本法は、“国家機能の喪失”を伴う非常事態において、平時の法体系では対応困難な下記事案を対象とする。


・未成年による武装蜂起・組織的テロ


・国家機関への直接武力攻撃


・治安機能の一時的崩壊・喪失


これらに対し、迅速・実効的な治安維持を目的とし、既存法体系の特例適用・制限解除を明文化した。


また、本法制定にあたっては、事件被害者・関係者の多くが国会議員やその親族、関係省庁の実務者であったことも特筆すべきである。


与党・野党を問わず、各議員が“当事者”として事件の衝撃を受け、従来の党派対立は事実上無意味となった。


その中で、前崎英二 内閣特命担当大臣(治安危機管理担当)が以下の声明を発表。


「本法の採用がなされない限り、国家機能・国民生命の保障は行えない」


この発言は、形式上“事務方見解”とされつつも、国家の実態に即した最後通牒であり、議論を一瞬で封殺するに足る圧力を持って受け止められた。


結果、与野党全会一致という極めて異例な形で、【特別対テロ緊急措置法】は可決・施行されることとなった。


3. 法律本文(抜粋)

特別対テロ緊急措置法(泰新特例第1号法)

第一章 総則

(目的)

第1条

武装テロ行為、国家中枢機関への攻撃、要人誘拐等、国家の存立及び国民の生命・財産に対する重大な脅威に迅速かつ的確に対応するため、平時法体系の限界を補完する特例的措置を定め、治安維持及び公共の安全確保を目的とする。


第二章 少年法に関する特例

(重大犯罪に関する実名報道)

第2条

次の各号に該当する未成年者については、少年法(昭和23年法律第168号)第61条の報道制限にかかわらず、氏名、顔写真、年齢、所属等の個人情報を報道することができるものとする。


刑法(明治40年法律第45号)に定める10年以上の有期懲役に相当する犯罪行為を行った者


社会的影響が著しいと認められる者


2項

前項の適用可否は、法務省及び内閣官房が社会的影響度を基準に個別審査し、これを承認する。


第三章 治安維持に関する特例

(対テロリスト武力行使の特例)

第3条

公安警察及び警視庁は、正当防衛及び緊急避難の範囲内において、テロリストに対し、実弾及び致死性兵器を用いた武力行使を行うことができる。


1項

公安警察及び警視庁は、正当防衛及び緊急避難の範囲内において、テロリストに対し、実弾、致死性兵器、並びに武力行使を行うことを認可される。


2項

本条の適用に際しては、年齢、国籍、性別を問わず、テロリストである限り例外を設けない。


3項

前二項の規定に基づき、公安警察及び警視庁は、通常の法執行活動においては使用が制限される特殊武装(重火器・電磁波兵器・非致死性制圧兵器等)及び専用装備(高出力防護装備・電子対策装備等)を使用することができる。




第四章 刑罰適用に関する特例

(未成年に対する重大犯罪刑罰適用の特例)

第4条

次の各号に該当する未成年者については、少年法による刑罰軽減措置を適用せず、刑法第11条(死刑)及び第12条(無期懲役)を適用する。


殺人、またはこれに準ずる重大犯罪行為を行った者


更生の見込みがないと法務省及び最高裁判所が認定した者


2項

適用の可否は、法務省による調査及び最高裁判所による個別審査を経て決定するものとする。


3項

年齢を理由とした刑罰の減免は認めず、行為責任及び社会的影響度を基準に適用を判断する。


第五章 附則

(時限措置及び見直し)

第5条

本法は、「特別緊急事態宣言」の発令期間中のみ効力を有する。


2項

施行後1年ごとに政府は本法の継続適否を審査し、延長又は廃止を決定する。


(施行期日)

附則第1条

本法は、公布の日(泰新13年4月24日)から施行する。


【参考法令】


■ 小型無人機等飛行禁止法(平成27年法律第12号)

2015年4月、首相官邸屋上に小型無人機ドローンが墜落した事件を契機に制定。

重要施設上空の無人機飛行を禁止し、警察官による即時排除を可能とした“迅速立法”の前例。


■ 刑法(明治40年法律第45号)

第11条(死刑)

重大な犯罪行為(殺人罪、強盗殺人罪、現住建造物等放火罪 等)に対する最も重い刑罰。

第12条(無期懲役)

死刑に次ぐ刑罰として適用。特に重大犯罪者、更生困難者に対して科される。


■ 少年法(昭和23年法律第168号)

第61条(報道制限)

家庭裁判所の許可がない限り、未成年被疑者・被告人の氏名・写真等の報道を禁じる。

本法では当該規定の特例解除を規定。


■ 警察法(昭和29年法律第162号)

第2条(警察の責務)

国民の生命・身体・財産の保護、公共の安全と秩序の維持を警察の使命と明記。

特別対テロ緊急措置法における武力行使特例の法的基盤。


■ 武器等製造法(昭和25年法律第145号)

武器・弾薬の製造・所持・輸入等を規制。

今回の法では、公安警察・警視庁による致死性兵器使用の特例根拠の一部として参照。


■ 国家安全保障会議設置法(平成25年法律第79号)

日本版NSC(国家安全保障会議)の設置根拠法。

国会議事堂占拠事件時、迅速な意思決定と特別緊急事態宣言の発令を可能とした法的基盤。


■ 緊急事態基本法(仮称・未制定)

現実の日本では未整備のため、今回の【特別対テロ緊急措置法】における緊急権発動は、憲法第41条および国家安全保障会議設置法を拡張解釈し対応。


■ 憲法第13条(個人の尊重・生命・自由・幸福追求権)

本法適用時における「公共の安全」と「個人の権利」の均衡議論において、適用制限の憲法的根拠となった。


■ 憲法第31条(適正手続の保障)

未成年者への死刑・無期懲役適用に際し、適正手続および個別審査義務の根拠規定。


4. 国際的影響

国際人権団体より「未成年への死刑適用」「武力行使拡大」に対する強い批判。


国連人権理事会における緊急審議対象となる見込み。


対日渡航勧告の引き下げ(Cランク)が発表され、日本の“世界一安全な国”ブランドは事実上失墜。


第2部 国際機密分析レポート

(対アダルトレジスタンス技術・外交動向)


1.主要技術脅威評価(★=リスクの大きさ)

■ホログラム転送

概要:個体の瞬間移動・ステルス潜入

・軍事脅威:★★★★★★★★★☆(9/10)

・治安リスク:★★★★★★★★★☆(9/10)

・経済影響:★★★★★★★☆☆(7/10)


■サイバー神経接続

概要:神経網経由でのデバイス制御

・軍事脅威:★★★★☆(5/10)

・治安リスク:★★★★★★★★★☆(9/10)

・経済影響:★★★★★★★☆☆(7/10)


■生体情報暗号化

概要:個体認証の突破・偽装

・軍事脅威:★★★★☆(5/10)

・治安リスク:★★★★☆(5/10)

・経済影響:★★★☆☆(3/10)


2. 各国の動向と思惑

アメリカ合衆国(FBI・CIA)

日本との共同技術開発名目で実質的な軍事転用を画策。


特殊部隊レベルでの実用化(瞬間転送・無音制圧)を目指す。


“安全保障協力”の名を借りた技術主導権の奪取。


中華人民共和国

「違法資本浄化」「サイバー統制」名目で協力。


実態は監視国家戦略の強化および経済圏支配を目的。


“デジタル植民地化”を視野に、対日影響力を拡大。


大韓民国・ドイツ連邦共和国

「東アジア・欧州共同対テロ技術連携協定」締結。


名目は国際治安協力、実態はAR技術の囲い込み・独占権確保。


ドイツは欧州主導権確保を、韓国は防衛産業振興を狙う。


3. 想定リスクシナリオ

技術流出による瞬間転送無人兵器の実戦投入。


サイバー・フィジカル統合攻撃による都市機能麻痺。


技術拡散による新世代“電子戦争”の勃発。


国内技術者・関係者の国外誘拐・亡命事件の増加。


対日外交・経済制裁圧力の常態化。


4. 推奨対応策

国家機密指定および経済安全保障法即時適用。


日本主導による国際共同管理機構(J-ARCO)設立。

J-ARCO:Japan-led Agency for the Regulation and Coordination Organization


国内防衛技術特区創設による封鎖管理。


“日本起源”を強調する国際広報戦略の強化。


【結論】

アダルトレジスタンスの保有する転送・制御・偽装技術は、

“国家の生存権そのもの”を左右する戦略資産である。


本件を制する国が、次世代の安全保障・経済覇権を握ることは確実であり、

日本が「技術大国として主権を守るのか」

あるいは「自国開発資産を喪失するのか」の岐路に立たされている。


国家は既に“牙を剥いた”。

今度は、その“牙”を如何に制御するかが問われている。


報告者:国家公安委員会 特別監視室 室長 柴崎隆文


機密指定:【Absolute Confidential】

配布制限:内閣総理大臣/NSC/公安調査庁/防衛省 関係局長級以上


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

この章は、本編とは少し異なる“報告書”という形式をとっていますが、物語の背景を補足するために挿入したものです。


国家がどう動き、何を恐れていたのか――

そうした一端でも伝わっていれば、これ以上ない喜びです。


もちろん、本編だけを追ってくださる方にも、何ら支障のない構成にしています。

世界観にもう少し触れてみたい、という方に届けばそれで十分です。


次回からは、再び物語の本筋へと戻ります。

よろしければ、引き続きお付き合いください。

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