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第267話 『南北戦争』

 文久元年十一月二十一日(1861/12/12) 


 イギリスの後にやってきたフランスであったが、内 容はイギリスとほぼ同じであった。表面上は友好を装ってはいるが、列強1位と2位のつばぜり合いにロシアは付き合うつもりはない。


 オランダはやんわりと仲介の労を申し出るに留まり、アメリカは言わずもがなである。


 ゴルチャコフは同じようなスタンスで対応した。



 


 ■江戸 大村藩邸


 発 精錬方 宛 筆頭家老


 上野彦馬 着色写真 開発セリ 然レドモ(しかし) 赤色ノ再現ニ 子細(問題)在リ 加ヘテ 紙ニハ 写セズ 改善要ス


 田中儀右衛門 連発銃 完成セリ 二十一式ト 命名セリ 


 新型転炉 炉壁ノ改良ヲ行ヒ 大量ノ鋼鉄ノ 生産 可トナリケリ





「おお! いいぞいいぞ! 対馬の件で頭が痛いが、こういうニュースは有り難い。それに、ロシアがどう出てきてもなんとかなりそうだ。オランダはあえて何もしなくてもいいだろう。アメリカは……今回の件は、大々的には介入できないだろう。せいぜい日本における公使館レベルで事実関係の確認と場合によっては遺憾の意を表すくらいだろうか」


 藩邸でブツブツと独り言を言っている次郎であったが、もう1つ考えている事があった。


 アメリカの南北戦争である。


 当時の誰もが知らない戦争の結果を次郎は知っているのだ。で、あればこれを利用しない手はない。さて、どうするか?





 ■<次郎左衛門>


 うーん、南北戦争か。北軍の合衆国が勝つのはわかっている。確か戦費の調達で南軍も北軍も独自の紙幣を発行するし、公債(戦時国債)を発行するはずだ。


 66年時点の価値が、69年だったか70年だったかに、3倍近くに跳ね上がるはずだ。これを使えばかなりの儲けになるぞ。戦争を使って儲けるなんて……と前世のオレなら思うだろうが、ここは戦時だ。


 いつ死ぬかわからないし、戦時も同様なんだ。


 うーん、一応金に余裕はある。一度には無理でも、数回に分けて購入していける資金は潤沢にある。ただ……金銀の流出問題があるんだよな。金の大量の流出は避けたい。


 そうだ! 精錬方の報告書にあった新型転炉の鋼鉄製品と儀右衛門の連発銃を、戦時国債と物々交換という形にすれば……。


 いやいや、武器の直接輸出はダメだ! 

 

 技術の流出になるし、第一アメリカが日本製の武器なんか信用するはずがない。弾薬や諸々の軍需物資を……火薬や銅、真鍮(しんちゅう)とかならどうだろうか。


 他に輸出できる軍需物資はあるか?


 そうだな……新型転炉で作れる物といえば……。


 まず、船舶用の鋼材。アメリカは南北に分かれて戦っているから、特に北軍は軍艦の建造に必要な鋼材が不足しているはずだ。それに大砲の砲身にも使える。


 確か……モニターとバージニアの海戦は、来年だったか。


 鉄道の建設資材も重要だな。レールや車輪、車軸。北軍は鉄道網の整備にも力を入れているはずだ。兵站(へいたん)の要となる鉄道用の鋼材なら、喜んで買ってくれるだろう。


 必要な品目を並べてハリスに提案すれば、大村藩の技術力と軍事力を知っているなら、断りはしないだろう。


 南軍にやるぞ、と脅そうか。ふふふふふ。





 しかし、問題は幕府だ。幕府がこれを黙認するだろうか……。


 対馬の件は対処を一任されていた。それから4か国との会談や箱館の領事との会談も、名目はオブザーバーでも、内情はオレが全権同様だったのはわかっているだろう。


 さて、どうすべきか。


 うーん。面倒くさいけど、幕府への対応は慎重にしなくちゃいけないな。今さらだけど、悪目立ちはしたくない。でも絶好のチャンスなんだよな。合法的なインサイダー取引。


 まずは、ハリスに内々に打診してみるか。


 北軍への物資供給と国債での支払いについて、どの程度の興味を示すか。モニターとバージニアの海戦の前に鋼材を供給できれば、北軍にとってはかなりの魅力になるはずだ。


 それでなくても鋼材は十分に魅力的な輸出品だろう。その反応を踏まえた上で幕府に打診する。


 ……そうだな。まず、北軍からの打診があった、という形を取ろう。


 こちらから提案したわけではない、という建前だ。アメリカ公使からの非公式な打診に、藩として検討している、という形なら幕府も受け入れやすいだろう。


 それに、金銀の流出を伴わない新しい貿易形態の実験として提案できる。

 

 幕府も金銀の流出には頭を悩ませているはずだ。物々交換での貿易、それも戦時国債との交換という形は、新機軸として評価されるかもしれない。


 さらに言えば、アメリカの内戦に深入りするわけじゃない。純粋な商取引という建前を通せば、幕府も受け入れやすいはずだ。


 手順としては……。


 1. まずハリスに非公式に打診

 2. 好反応なら、幕府に対して米国からの打診という形で報告

 3. 金銀の流出を伴わない新たな貿易形態として提案

 4. 実務は全て藩で担当する形を提示

 5. 幕府には監督権限を認める


 これなら、幕府の面子も立つし、実質的な主導権も握れる。


 ハリスは間違いなく乗ってくるだろうけど、幕府はどうだろうか? 南北戦争の事を知っていたとして、どっちが勝つなんて分からないだろうしな。


 言ってしまえば前倒しに戊辰(ぼしん)戦争が起きて、北軍が幕府で南軍が薩長(さっちょう)みたいなもん。普通に考えれば北軍(正規軍)が勝つだろうと予測する。でも実際は負けた。


 うーん、別に戦争に肩入れする訳じゃないから気にもとめないか? 仮に北軍が負けた(あり得ないが)としても、地方政府が勝手にやったこと、とすれば問題にはならないだろう……。





 ひとまずハリスに打診してみよう。





 次回 第268話 (仮)『ハリスと小栗上野介』

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― 新着の感想 ―
これまでの行動でバタフライエフェクトが起こりリー将軍が葉巻を置き忘れせずに作戦そのまま遂行したり、ストーンウォールジャクソンが戦死せずにゲティスバーグで戦えたりで南軍勝ったりしないかなぁ……?
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