グリズリーと清坂
「いや~、ビックリ、ビックリ!」
清坂は、世界を救った勇者みたいな顔で言った。
「ずいぶんご機嫌ですね。宝くじでも当たったんですか?」
グリズリーが冷静に尋ねる。
「いやいや、違う違う! 『クマ祭り後夜祭』だよ! 前日の22時すぎに告知したのに、初日で15作品も集まったんだよ!? 普通に事件だろ、これ!」
「確かに……すごいですね。過去作品だけでなく、新作まで投稿されていますし……」
「だろ!? 始める前は、自分の作品だけが虚しく並ぶ未来しか見えなかったんだぞ!? 砂漠に立つ自販機みたいな孤独感だぞ!?」
「たとえが意味不明です」
「とにかく皆さま、本当に──」
「「ありがとうございます!!」」
二人の声が完璧にシンクロした。
「ところで……」
グリズリーが、やけに真剣な顔で言った。
「あなた……誰ですか?」
沈黙。
世界が一瞬、止まった。
「いやいやいやいやいや!! 何を言ってんの!? 作者だよ! 作者!!」
「では……私は……?」
「君はグリズリーだろ! 熊のグリズリー!」
「清坂正吾とグリズリーは、同一人物(?)ではないのですか?」
「え?」
「皆さまは、清坂さんを“グリズリーのアニキ”と呼びます」
「うん……だから、君の兄が俺だろ?」
「違います。“アニキ”とは、兄のような存在という意味の親しみを込めた呼称です。実の兄ではありません」
沈黙。
「な、なんだって~!? じゃあ、俺は何なんだよ!? 戸籍上どうなってんだよ!?」
「私とあなたは、同一人物(?)です。したがって――融合しなければなりません」
「融合って……あの、『フュージ──』」
「いえいえ、それは怒られます。先月、書いていましたよね?」
「ああ、あれね……。でさ、ちょっと気になってることがあるんだけど……」
「何ですか?」
「もし君と融合したら、俺の見た目ってどうなるの? 毛深くなる? ごつくなる?」
「うーん……どうなんでしょう? 私にもわかりません」
「え? それ、嫌なんだけど。ごつくなりたくないし、毛深くなりたくないし──」
「ダメです!!」
「なんでだよ!? 選択肢ゼロかよ!? 『はい』しか選べないタイプのRPGかよ!?」
「安心してください。融合後も、最低限の人権は保証します」
「最低限って何だよ!? どこまで失う前提なんだよ!?」
「じゃあ、早速……融合しましょう」
「強引だな~。でもさ、見た目が嫌だったら元に戻せばいいんでしょ? 作者なんだから……できるよね? できるって言って? ねえ?」
清坂はそう言いながら、グリズリーと視線を交わす。
次の瞬間――
二人(?)は横に並び、なぜか両腕をグルグル回し始めた。
「え? 君、今なんて言ったんだい? い、いや……僕の聞き間違いかな……。うん、きっとそうだ。僕はてっきり――」
清坂が、突然、意味不明なセリフを語り始める。
「ち、違うって! そ、そんなこと考えてないってば!!」
(……何なの!? そのセリフ!! どこから引用してきたの!? 作者の脳内、どうなってるの!?)
グリズリーが心の中で全力ツッコミを叩き込んだ、その瞬間――
二人(?)が同時にバンザイのポーズを取り、清坂が叫んだ。
「魂のレボリューション!!」
次の瞬間、二人の全身がまばゆい光に包まれる。
光。
衝撃。
謎の効果音。
そして鳴り響く、懐かしいCMのあの曲。
やがて光が収まると、そこには――
クマが立っていた。
「ガウガウ……ガウガウ……ガウ」
清坂は、完璧にクマになってしまった。
しかし――
クマの姿のまま、器用にキーボードを叩き続けるのだった。
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