第15話
その後気を失ってしまったアリスを連れて控え室に戻り、俺たちは先ほどの襲撃者について話し合っていた。
アリスの背中には襲撃者により負わされた深い刺傷があり出血は止まらない。アリスは第八感によるフェニックスの加護でどんな傷でも炎を伴って一瞬で塞げるはず。なのにどうして加護が発動しない。
母さん曰く、フェニックスよりも高次元の存在につけられた傷はフェニックスの加護は受けられないという。フェニックスなどの神獣は八次元の存在なのでそれよりも高次元……すなわち九次元の存在がこの件に関与していることになる。九次元といえば神にも匹敵する存在のはずだぞ。
ノエルが九次元の存在というのはありえないので、アリスの背中を刺したノエルの短剣が九次元由来のモノだと仮定された。
自然治癒力を高める魔術も九次元までは及ばないので、アリスの傷を治せるのはアリス自身の自然回復だけ。救急車を呼んで病院へ連れて行こうと提案したが、1人になるとノエルに狙われて逆に危ないと母さんに却下された。今はオーラとオーラの護衛が優しく介抱してくれている。
母さんはノエルについて色々と教えてくれた。ノエル・シャルル・アラール=デキシュ389歳。混血種の吸血鬼であの真祖ブラド・ツェペシの孫。第九感は石化の霊眼。目を合わせた者の筋肉を硬直させ動きを封じる。
魔法や魔眼など「魔」がつく用語には神級>使級>霊級>魔級の順に上位互換が存在する。ノエルの石化の霊眼は霊級なので魔法による抵抗は不可能だったが、母さんの霊級封じこコンタクトレンズの前では無力だったわけだ。
母さんは風属性の魔法を得意として、空気を圧縮して槍のように発射したり、対象の周りから空気を失わせることで窒息させることもできるらしい。対象殺傷の手際の良さから一閃の魔女という二つ名がある。
「包帯は巻いといたけど傷がかなり深いから、このまま安静にしておかないと」
応急手当を終えたオーラが苦い顔で報告してくれる。
「アリスちゃんはワタシとオーラが見とくから、4人はノエルを追うといいわ」
「でも……」
チャールズがノエルを追えと提案してくれるが、正直不安だ。俺も一緒にいてやりたい。ノエルが入れ違いで入ってきたらこの2人にアリスを守り切れるのか?
「少なくとも今のあんたよりはマシよ。隆臣、今あなたかましないといけないことは私たちとアイラやミアを探してノエルを排除してもらうことよ。流石の私でも吸血鬼には勝てないからね」
母さんは冷静に言った。
「行きましょう隆臣さん。いざとなったらわたしが魔法を使えば……」
「……ああ」
俺、一夏、凛、母さんは再び控え室を後にした。




