第12話
目の前には俺の母親である品川信子が立っていた。水色の髪の毛と青色の瞳、そしてその顔立ち……間違いなく母さんだ。
その事実に驚いたのは俺だけではなく、本読み少女以外の全員が変身した母さんに注目していた。
「久しぶりね隆臣」
母さんはデカい胸の前で腕を組みながら言う。本当に久しぶりだ。1年振りくらいか?
「ママ!」
一夏が母さんの胸に飛び込んだ。母さんは一夏をぎゅっと抱き寄せ、
「はじめまして一夏……」
「ママ! ママぁ!」
母さんは涙ぐみ、一夏は泣きじゃくって抱き合っていた。16年越しに出会う母親と娘。それを見ていると俺までうるっときた。
「ノンちゃんにムスコがいることは知ってたけど、まさかムスメもいたなんてね」
「それにはじめましてってどういう……」
マッチョ魔女……魔っ女と犬みたいな女の子は不思議そうな顔をする。
「ああそれを語ると長くてめんどくさいから直接教えるよ」
母さんは片手で一夏を抱きかかえながら2人に手を翳すと母さんの手の平から水色の光の筋が2本放出され、それぞれ魔っ女と犬っ子の額に吸い込まれた。
すると、
「なるほど」
「そういうことだったんだ」
2人は俺たちのことを完全に理解したようだ。母さんは今何をしたんだ? 何かしらの異能を使ったんだろうけど。
「というわけで紹介する。こっちの大きい方は魔法管理協会リオデジャネイロ支部に所属しているチャールズ。土系統の魔術を得意とするだけでなく腕っぷしも強い魔女だ。そしてちっちゃい方が魔術協会ベルリン支部所属のオーラ・エーデルワイス。第九感で動植物や魔獣と会話することができ、彼らを意のままに操ることもできる。あと鼻が利く」
なるほど魔っ女はチャールズ、犬っ子はオーラっていうのか。
「そしてずっと本を読んでるちびっ子がミア・ローゼン=クロイツ。法院に所属する真祖の吸血鬼で、法院が定めた異能力者序列では錚々たるメンバーの中で4位に座している。準禁忌魔術である黒魔術の使い手で、その素質は第1位のリンカ・フォン・シュヴァルツブルク=ルードシュタットにも匹敵する」
母さんに紹介されてもミアはずっと真顔で本を読んでいる。その瞳からは正気が感じられない。それほど本に没入しているようだ。
真祖の吸血鬼ってのは普通の吸血鬼より身体能力や再生能力などが高い代わりに吸血衝動が強い個体のこと。監視役のブラド・ツェペシや序列1位のリンカも真祖の1人なんだとか。中には吸血鬼の弱点である日光を克服した真祖もいるらしい。
サバトに参加する500名の魔女のうち数名はすでにプトレマイオス以上の存在(序列でいうと上位94位までの者)で、晩餐会に出席しつつ参加者を評価したりサバトにおける秩序を保っている。
ミアを序列第4位たらしめているのは彼女が操る黒魔法だろう。黒魔術は準禁忌魔法の1つで、準禁忌魔法は禁忌魔法や禁忌級魔法には及ばないが十分に世界の理を改変させるに足る力を持つ魔法のこと。魔法界としては準禁忌魔法および準禁忌級魔法は法院および国際連合が使用を認めた極限られた者のみ扱うことができる。つまりミアは世界に最強であることを認められたうちの1人ってわけだ。
そして母さんは最後の1人――フードを目深に被る少女の方を向いて、
「すまないがキミ、自己紹介を……」
自己紹介を促すが少女はそれを無視して部屋から出て行ってしまった。恥ずかしがり屋なんだね。
ふと気になったので一夏のことを見てみると、一夏はまだ甘えた様子で母さんにじゃれていた。母さんも幸せそうに一夏の頭を撫でている。
このまましばらくそっとしておこう。俺、凛、チャールズ、オーラは顔を見合わせて部屋を後にした。
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