第11話
7月28日土曜日。太陽が西の空に傾きかけてきた17時頃のお台場に俺、一夏、凛はいた。現在のお台場はいわゆるカジノを含む統合型リゾートと呼ばれていて、カジノ設置以降さらに盛り上がりを見せている。
そして空港が近いことや周辺に電車の駅が多いことなどで年間の来場客数は予想よりも多い約1600万人。その影響で埼京線及びりんかい線やゆりかもめの乗車率はカジノ設置前の7年前と比較してかなり増加したそうな。
これコミケの日とかガチでやばそうだよな。コミケ客とカジノ客で超満員間違いなしだ。今回はカジノ施設が貸切なのでカジノ目的の乗客がいなかったので空いていてラッキーだぜ。
最寄り駅は青海駅だが東京国際クルーズターミナル駅で降りた方が若干早く到着するのでそこで降りたわけだが、豪華絢爛な雰囲気がすでに俺たちを歓迎していた。
駅から歩いて2〜3分のところに煌びやかなネオンをまとった不思議な形の建物が見えてくる。ここが今回のサバトの会場だ。入口の上部には日本らしい萌え〜なピエロの看板が取り付けられている。
入口付近には黒いローブを身にまとった女性と屈強そうな大男の2人が立っていて、どうやらここで招待状の確認を行っているようだ。
同じく黒のローブをまとう凛は懐のポケットから招待状を取り出し女性に渡す。
凛の黒ローブは魔術学園指定の準制服で儀式事の際に用いられており、防弾防刃防火性および耐魔力性がある。ローブの中は正制服でこちらも魔力を通さない。すなわち完全防備の状態だ。ちなみに一夏も黒ローブ&制服スタイルで防御面は完璧。
俺はローブがあると動きにくくて護衛に支障が出るので制服を改造して防弾防刃防火性能を追加してもらった。若干ごわつくがローブを羽織るよりは全然マシだ。そして腰には2本の刀――打刀の村雨と脇差の桐一文字。懐にはP420ピストルを忍ばせている。
凛から招待状を受け取った女性は25センチ前後の杖を取りだし招待状に向かって軽く一振。すると招待状が青色の炎を上げて燃え始めた。
「青色の炎を確認。どうぞお通りください」
女性が言い終わる頃には招待状は灰にもならず完全に燃え尽きていた。
魔法使いは杖を使って魔法を発動するイメージがあるが、あの杖はいわゆる魔力変換装置で杖だけでは魔法は使えない。やはり術式の展開には体内由来の魔力粒子が必要であり、特定の魔力でのみ展開する術式を使用したい場合には杖の柄の部分に自身の血を染み込ませて体内由来の魔力粒子を特定のものに変換させ、杖の先端で魔力を入力したい部分をなぞることでその術式を展開することができる。
杖の素材により変換される魔力は異なる。最もよく使われる素材として楢(オーク)や動物の骨などがあり、基本的にどんなものでも杖の素材になりうる。たとえばプラスチックやガラスでもね。複数の素材を複合することより(素材の含有率も関係する)無限通りの魔力変換装置を作ることができる。
また杖はその特性上魔力増幅装置に応用することもでき、初心者魔術師や体内由来の魔力が少ない術者が使用するケースも多い。
たとえば今みたいに招待状が本物かどうかを確かめるときには、あらかじめ招待状に特定の魔力で起動する術式を刻むことで本物であれば青色の炎を上げて炭にならずに燃えるという現象が発生するのだ。まあ鍵と鍵穴の関係みたいな感じだね。
□
俺、一夏、凛はカジノ中に入り控え室に移動した。
控え室にはすでに5名の魔女がいる。金髪でおっぱいボインボインでえっちな服装の艶やかな女性、ローブのフードを被って体育座りで本を読んでいる白髪の小さな女の子、明らかにマッチョなおっさんなのにツインテールやスカート、リボンや口紅なんかで女装している黒人ニキ、周りにたくさんの動物を引き連れている小さな女の子、フードを目深に被ってその顔を覗くことすらできない小さな女の子。なんかロリっ子が多い気がするが……たぶん気のせいだろう。
そして彼女らの護衛役がそれぞれ1名ずついる。魔女1人につき護衛役は1名のみだが一夏は俺のガイストなのでこの限りではない。
凛は部屋に入るなりローブに着けた大きなブローチを見せつけながら、
「わたしはアンドロメダ座のプトレマイオス三鷹凛です。今年が初参加ですがよろしくお願いします」
と自己紹介をした。
プトレマイオス48名にはそれぞれトレミーの48星座が割り当てられており凛はアンドロメダ座(鎖で縛られた少女座)である。そのためローブのブローチには濃紺の宝石に金色の線でアンドロメダ座が掘られている。
するとオカマニキ、ボインボイン姉さん、動物ちゃんはそれぞれ、
「あら、あなたがリンカちゃんの血を継ぐ小娘?」
「どうやらそうみたいね。その顔と溢れ出す魔力……そしてオーラ。どれを取ってもあの子そっくりだわ」
「でもあいつの方が全然強くね?」
と。
「そしてこっちが噂のサムライくん? あら、なかなかイケメンじゃない。食べちゃいたい……。お名前は?」
オカマニキはムキムキな肉体を黒光りさせながら舌をペロン。キモすぎる!
「ご、護衛役の品川隆臣だ」
キモイとはいえ相手はサバトに招待されるような優秀な魔女。名乗らないわけにはいかない。
「タカオミちゃん……いい名前ね。覚えたわよ」
続いて動物に囲まれた少女が、
「くんくん……この匂い、どこかで嗅いだような……」
とか言って身長の割に大きな胸を俺の腹に押し付けながらめっちゃ匂いを嗅いでくる。なんだこいつは! けど顔がかわいいから別に嫌な気はしない。
「やめなオーラ。隆臣が困っているだろう」
おっぱいねえはオーラと呼んだ少女の頭にゲンコツを振り下ろして叱りつけた。
「いてて……ノンちゃんのゲンコツは相変わらず痛いなぁ。てかさー、どうしてタカオミくんとノンちゃんは同じ匂いがするの?」
「ああ。それはそうだろう……」
みるみるうちにおっぱいねえの見た目が変化していく。ヨーロッパ系の顔立ちが日本人っぽくなり、金髪は根元の方から黒く染まる。
その顔を見た瞬間俺は絶句した。
「か、母さん……ッ!?」
「隆臣は私の息子なのだから」




