第290話 ブラドおじいちゃん
■ジョーカー
「んっ!」
わたしは凛に押し倒され、鼻を摘まれる。凛……あんた何がしたいの? 殺す気? 死なないけど。
顔を離しても凛はすぐにくちびるを押し当ててくる。
息が……できない! いや違う。凛はキスでわたしに呼気を送ってきている。
女の子同士なのに……それにこんなところで……てかキス下手すぎだし……。
でも凛の口の中……甘くておいしいわ。もっとキスしたい……かも? ああ、体の緊張がほぐれていく……少しずつリラックスしてきた。
鼻を摘まれているので凛から送られてくる呼気でなんとか呼吸せざるをえない。
何分経ったのだろう。体感では30分くらい? わからない。けど時間の流れが究極にゆっくりに感じられたわ。
キスが終わる頃にはわたしの過呼吸はすっかり治っていた。
凛は先に起き上がり、わたしの手を引いて起き上がらせてくれる。
そして小さな声で、
「(もう大丈夫だよ)」
と言ってにっこり笑ってくれた。その瞬間、体の緊張が完全に解ける。
ありがとう、凛。
「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。過呼吸の応急処置を行いました」
過呼吸の応急処置? そっか、今のキスはわたしのためだったのね。
凛の説明を聞いた瞬間、
「わっはははは!」
ブラドがお腹を抱えて大笑いした。
「ははははは! もうダメ! 耐えられない!」
ブラドの中からピンクの煌びやかなドレスを着たガイストの女の子が飛び出してきて2人そろって笑っている。
わたしと凛は顔を赤く染め上げた。
「久々にこんな笑ったわい。さすがはワシの子孫じゃ。ワシらの前でいきなりキスをするか普通?」
「すみません。紙袋を差し出す時間もありませんでした」
ブラドは笑いを堪えながら言い、それにレオが答えて紙袋を取り出す。
「師匠と対面して過呼吸を起こす者は少なくないからな。常に持ち歩いているんだ」
「それならもっとはやく言ってくれてもよかったじゃない!」
「そうですよ! はずかしかったんですからね!」
レオに対してわたしと凛は激怒した。
「ごめん。だってボクが気づくより凛の動きがはやかったから」
「言い訳よそれは! 部屋に入る前に渡してくれればよかったのよ!」
わたしがほっぺを膨らませて言うと、
「わっはは! ワシの子孫とワシの弟子がこんなにも仲がいいとは! よかったよかった。一安心じゃ」
ブラドはまた大笑いしてそれからわたしたちを孫を見るような目で見つめてくる。
わたしはブラドをキッと睨みつけ、
「こっち見んなっ!」
と言い放った。
瞬間、レオとブラドのガイストのシルキーの顔が青ざめる。
「リンカはあのときからまったく変わらないのぅ。おじいちゃん傷つく……」
「うっさい!」
わたしの言葉にレオとシルキーは更に青ざめた。そしてもっと青ざめた。
凛がブラドの頭をなでなでして、
「よしよし、泣いちゃダメですよ。おじいちゃん」
と言った。わたしもそうだけど凛もかなり命知らずね。
まあ凛には祖父母がいないから、凛にとってはブラドはおじいちゃんみたいなもんなのかしら?
「こら! リンさま離れてください! ブラドさまが怒ったら大変です!」
「そうだぞ! 師匠に許可もなく触れるなんて!」
シルキーとレオがそろって凛を叱るが、
「ぬぉおおお! めんこぉおおおい! これが孫か! これがおじいちゃんなのか! ワシの子らは孫の顔すら見せてくれなかったからのぅ……」
ブラドはリンを持ち上げてぐるぐるメリーゴーランドしながらそんなことを言った。
「おじいちゃん、わたしはもうぐるぐるされる年じゃないですよぅ〜」
「リンはめんこいからいいのだ!」
目を回しながら言う凛だったがブラドはメリーゴーランドをやめるつもりはないようだ。
「もういいでしょ。凛の目が回ってるわ。って、え!?」
わたしはブラドに持ち上げられていた。
「リンカもしてほしいのか? それならそうとはっきり言わんか」
「ちょっと! わたしは別に!」
わたしもメリーゴーランドされてしまった。
「く、くそじじい……」
「わっははは! どうしたリンカ! 楽しくないのか!」
こいつ……どうしてこんなに楽しそうなんだ?
リンに会えてうれしいのはわかる。でも因縁たっぷりなわたしに会えてもうれしいってことなの?
わたしは霊体化してブラドの拘束から逃れ、
「キモイ」
と、ジト目で言ってやった。だってほんとにキモイから。
To be continued!⇒
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