第289話 真祖ブラドとの対面
■ジョーカー
怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわいコワイコワイ!
ヤツの部屋の前に立った瞬間、わたしは恐怖に押しつぶされそうになっていた。
鼓動と呼吸が速くなる。膝から崩れ落ちわたしは小さくうずくまった。
ヤツはわたしの義理の高祖父――家族。怯える必要なんてないはず。でも生前の記憶が邪魔してヤツと恐怖を結びつけて離さない。
殺気を感じているわけじゃない。本能に訴えかけてくる恐怖のオーラを感じているのだ。法院異能序列1位……つまり世界最強の男。
序列48位〜序列25位までのプトレマイオスでさえクラスター爆弾以上の戦力があるとされているのに、じゃあ序列1位のアイツは何? 核爆弾? いや、それ以上に違いない!
わたしはヤツに大切なものをことごとく全て奪われた。ヤツに関わったらきっとまた奪われる! ヤツがその気じゃなくても、わたしから大切なものが零れ落ちる。きっとそうに違いない!
「ジョーカー?」
凛が心配そうにしゃがみこんでわたしの背中をさすろうとしてくれた。
しかし、
――パァン!
なぜかわたしはその手を払ってしまっていた。
わたしはハッとして、
「ごめんなさい」
とすぐに謝った。
凛は心配してくれただけなのにわたしは凛の手を払った。どうして……何をしているのかしら。
「うんん。ジョーカーはブラドさんが怖いだけなんだよね。大丈夫だよ。わたしがいるから。それにレオくんも」
「ありがとう凛。もう大丈夫よ」
凛は努めて笑顔で手をさし伸べてくれる。
大丈夫……そう言い聞かせなければわたしは凛の手を握ることはできなかった。
きっと大丈夫。だって今のわたしには凛がいる。そして騎士のレオも。昔とは違うわ。
わたしはレオに頷いた。レオは扉を開けた。
「うっ……」
扉の隙間から漏れるヤツのオーラに吐き気が込み上げてくる。我慢だわ。
扉が完全に開き、まずはレオが中に入った。
「プトレマイオス三鷹凛とガイストのジョーカーをお連れ致しました」
いる! 目の前にヤツがいる! 両手を組んで頬杖をしている白髪紅眼の男。クラシックな公爵の服装に黒い襟マントを羽織ったその姿は誰もが想像するドラキュラ。
「ようこそ法院へ、リン。そしておかえり、リンカ」
息が……苦しい! ヤツの目の前に立っただけで過呼吸になってしまった。耐えるのよ、絶対! ここで倒れてたまるか!
「ジョーカー! 大丈夫か! しっかりしろ!」
レオがわたしの肩を揺すってくれる。でもダメだ……わたしは本能からクソジジイを拒絶してしまっている。
そして次の瞬間、唐突に、
「ん?」
この感覚……、
「だめ、ジョーカー。離れないで」
凛とわたしはキスをしていた。
To be continued!⇒
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