第248話 スーパーデラックス人生ゲーム①
最近は殺伐としたお話ばかりでしたが、ここで一旦ほのぼのしたお話をどうぞ!
超豪人生ゲームのルール
①ルーレット(1〜10)を回して出た目だけ駒を進める。
②止まったマスの指示には基本従う。ただし、回避値(マスに書かれている数字)よりも自身やパートナーの戦闘力が高ければその効果を無視することができる。ただしストップマスには何があっても100パーセント止まらなければならない。
③戦闘力は他のプレイヤーと同じマスになったときに使用し、より戦闘力が高かった方を勝ちとする。また、負けた方は勝った方に自分の所持するアイテム1つと所持金の半分を献上する。
④バトル時の戦闘力=戦闘力✕(サイコロで出た数+ルーレットで出た数)である。また、攻撃力の一時増加([戦闘力+???]で戦闘力が表示されている場合の「???」の部分の追加)やクリティカルアタック([戦闘力1または戦闘力2]で表示されている場合に戦闘力を戦闘力2にする)は確率で行われる。
⑤他のプレイヤーと(ゲーム内での設定で)友達関係になると金銭やアイテム、パートナーを共有することができ、片方がゴールするともう片方も自然と上がることができる。
⑥最もお金を稼いだプレイヤーを勝者とする。
⑦とにかくなんでもあり
以上
■樹
僕の名前は桜田樹。今日は元ガチロリコン矢田太夫のお姉さんで小説家であり遊び部のOGでもあるあいさんが執筆に行き詰まってるとのことで、リフレッシュがてら久々に遊び部に遊びに来ていた。
あいさんは僕と同じで高等部からの入学で、上級感覚覚醒者でもガイスト使いでも魔術の名家出身でもない。そして魔術とは一切関係ない小説家になった。本当によくわからない人物だ。
けどあいさんの書く小説はどれも魔法のように世界観に引き込まれる。あいさんは魔術学園でそんな素敵な魔法を学んだのだろう。
「さて、超豪人生ゲームを始めよう!」
亀有さんがそう言うと、
「数あるゲームの中からそれを選んだか」
涼太はそう言って人生ゲーム盤をテーブルにドカンと置く。
「2人は初めてだからしっかりとルールを説明するね」
僕は人差し指を立てる。
「そんなの知ってよ」
「何回かしたことある」
真希と希望はそう言うが、
「これは普通の人生ゲームじゃないんだ。超豪人生ゲーム」
僕はその題名を叫んだ。
「「スーパーデラックス?」」
2人はそろって首を傾げる。
もちろんこれはあいさんが大好きな1996年に任天堂から発売されたスーパーファミコン用ソフト『星のカービィスーパーデラックス』ではない。
「遊び部の先輩方が開発した世界に一つだけの人生ゲームなんだぜ。そこにいるあいさんも開発者の1人なんだ」
涼太はイスに座って紅茶を飲むあいさんを手で示す。あいさんはにこやかに小さく手を振ってくれる。
「ああ、題名通りただの人生ゲームではない。覚悟して挑めよ」
亀有さんはそう言ってニチャアと気色悪い笑みを真希と希望に向けた。
ジャンケンの結果、順番は僕、涼太、希望、亀有さん、真希に決定した。あいさんは参加せず、見物しているらしい。
そして遂に超豪人生ゲームが開始された。
盤上は至って普通な感じだが、マス目に書かれている内容は普通ではない。
僕はルーレットを回す。
「5か。1、2、3、4、5」
僕は自身の駒を5つ進める。
「えーっと。空から魔法少女が降って来た。これからは行動を共にする」
初っ端からラッキーマスだ!
「おお! なのはちゃんだ! やった! えっと、ある日フェレットを救った女の子がロストロギアのジュエルシードを集めていると、乱気流に揉まれて地面に落下。しかしプレイヤーにキャッチされて怪我はなかった」
僕が魔法少女リリカルなのはを引いて喜びながら説明文をひとしきり読み終わると、
「くっそー! 早速いい手を引きやがってー!」
「全くだぞ」
涼太と亀有さんがなぜか拗ねた。えー……まだゲーム始まったばかりなのに……。
「まあいい。じゃあ俺な……。って1かよ! んーとなになに? 空からおばさんが降って来た。これからは行動を共にする……ってコンチクショウ!」
涼太はムンクの『叫び』の様な顔をして絶叫しながらおばさんカードを手に取る。
ちなみにおばさんカードはハズレカードで、後々何にも役立たない。
「いや、待てよ! こいつ、ただのババアじゃねぇーッ!」
涼太の声は非常に怯えていて、やがてガクガクと震えだし、
「UFOだ!」
UFOは未確認飛行物体の略称ではない。この極超豪人生ゲームにおいてUFOはウルトラファイアーおばさんという意味だ。
このおばさんはただのおばさんではない。安い野菜を求めるが故に高い戦闘力を身に付けた戦闘系おばさん、またの名を戦闘民族スーパー野菜ヤ人なのだ!
「スーパー野菜ヤ人だと……! そんな! もう終わりだぁー!」
亀有さんは頭を掻き毟りながら叫ぶ。言い換えれば絶望している。
「そんなに強いの?」
スーパー野菜ヤ人について何も知らない真希は大きな目をパチパチさせて問う。希望も首を傾げてこちらを見つめている。
「強いなんてもんじゃない。チート並の戦闘力なんだ! 戦闘力はサイコロの出た目とルーレットで出た数の和と初期戦闘力を掛けたものだから、魔法少女系では勝機がないんだ」
「「サイコロ? バトル?」」
2人はふにゃふにゃして頭上にハテナマークを浮かべている。
「このゲームでは他のプレイヤーと同じマスになるとバトルが発生するんだ。戦闘力が大きい方がバトルに勝つんだけど、負けた方は手持ちのアイテム1つと所持金の半分を勝者にあげないといけないんだ。サイコロはそのバトルのときに使うものなんだよ」
そう、この人生ゲームはさっきも言った通りただの人生ゲームではない。命を削り、血で血を洗い、互いを陥れるゲームなのだ。
「じゃ、じゃあ戦うためのカードが必要なんだね」
「そういうこと」
ちなみになのはちゃんの戦闘力は一定で360なので、戦闘力900〜1200のおばさんに勝つことはできない。
「と、とりあえずカード来て欲しい。えいっ!」
真希はかわいらしい声とともにルーレットを回転させる。
「10だ! えーっとなになに? 道端に落ちていた蛇の抜け殻を手に入れる? これなんの意味あの?」
真希はヘビの皮カードを入手した。
うーんなんだっけな。忘れちゃった。
「そんなもん、無駄無駄無駄無駄ァ!」
亀有さんはDIO様のマネをしてルーレットを回し、8マス進めた。
「よし! 当たりマスだ。ある朝、超能力に目覚める。ふははは! これは来たな……」
亀有さんは額に手を当てながら大笑いしている。そして特殊能力カードを無作為に抽出。
「力の大きさと向きの操作……! 神は私に味方してくれている!」
亀有さんは天を仰いで叫ぶ。
力の大きさと向き……つまりはベクトル操作か!
「くっそ! 学園都市最強の能力だと……!」
それまで鼻歌を歌っていた涼太の声にも余裕がなくなる。
特殊能力はプレイヤーの戦闘力(100)に能力による戦闘力をプラスできるものだ。
たしかベクトル操作能力の能力値は900プラス200。つまり亀有さんは1000もしくは1200の戦闘力を手に入れたということだ戦闘民族・スーパー野菜ヤ人のおばさんといい勝負。
な、何なんだこいつら! 強運スギィ!
続けて希望はマイペースにルーレットを回し、
「……7」
希望は7マス進んだところに駒を置き、
「左隣の人とお友達になる」
と、読み上げた。
「左隣ってことは……僕と希望が友達になるってこと?」
「うん」
希望はそう言ってこちらに無表情を向けた。
「お友達。よろしく樹」
希望は僕の顔をジーッと見つめてくる。
「え? 何? なんか付いてる?」
「ううん」
希望は首を横に振る。ところで友達システムってなんだっけ? えっとたしか金銭とかの貸し借りができたような……。
「じゃあ僕のターンだね」
ルーレットは8を示す。
「んーと、パートナーがいる場合は……。パートナーが入っていたお風呂を覗いてしまい1回休み。てかなんでお風呂を覗いただけで休むの!?」
遊び部の先輩たちが作ったマスについつい文句を言ってしまう僕。これ作ったの絶対あいさんだよ!
えーっとつまり、僕はなのはちゃんがお風呂に入っていたところを覗いたわけか! ごめんなさいなのはちゃん!
「じゃあ俺だな。……10マス進んでえーっと? 突然竜巻に巻き込まれて2マス戻る。ウガーッ! なんじゃこりゃあ! おい、おばさん! どうにかできないのか!?」
たしかに戦闘民族・スーパー野菜ヤ人のおばさんの手に掛かればどうにかなりそうなものだが、それがこのゲームなんだよな。
「うるさい黙れ! ババァコン! ババコン? ババコンガ!?」
亀有さんはまたアホみたいなことを言ってルーレットを回す。
「4……警察に変な容疑をかけられる。1ターン休み。はッ!」
そしてマスの説明を笑い飛ばし、
「学園都市最強の行く手を阻むたぁいい度胸だァ! 全員まとめてぶっ殺すッ! つまりは能力行使だァ。舐めんじゃねェーぞ、この三下がァー!」
警察官達が宙を舞って儚く散った。
似ている。今の亀有さんのモノマネ。一瞬だけ岡本信彦さん……いやアクセラレータが憑依してたんじゃないか?
「はわわわわ!」
「ひゃっ」
真希と希望は豹変した亀有さんに怯えている。
「警察って殺せるの?」
「各マスにはそのマスの効果を回避する回避値ってのがあるんだ。戦闘力が回避値を上回っていれば、警察官を殺すことは可能だよ。ここの回避値は700だから亀有さんは余裕で突破できるね。あと回避は何回でも、自分の好きなときにできるよ。でも強制マスは絶対に効果を受けるけど」
真希の質問に僕は丁寧に答える。
ちなみにさっき涼太が受けた竜巻は強制マスだから回避不可能。
このあたおか人生ゲームこと極超豪人生ゲームは初めての人にはルールが難しすぎると思う。
続いては真希の番。
目を輝かせてルーレットに注目している。健気だね。
「わーい! また10だ! あれれ? でもストップマス」
どうやら真希はストップマスに辿り着いたようだ。普通の人生ゲームでは結婚とかになっているが、プレイヤーキャラクターの設定が高校生なので結婚はできない。
「出たー! 定期テストマス〜!」
涼太が叫んだ。
「この世界でも定期テストってあるの!?」
「テスト好きじゃない……」
2人ともあんまり勉強が得意じゃないって聞いたけど……、
「定期テストってワード聞くだけで……」
「……頭がずきんずきんする」
真希と希望は頭をおさえながら言う。
こりゃかなり重症だな……。
「そんなに嫌いなのか。だがルールだから説明はさせてもらう。まず10回ルーレットを回して合計を求める。50以上だった場合は5マス先の無記入マスに進み、50以下だった場合は追試で2ターン休みだ」
亀有さんは2人にそのような説明をする。
「なるほど理解」
「わかっ……た」
2人ともすごく疲弊している。
だが真希は懸命にルーレットを回した。
1、5、9、3、7、2、2、8、10、6が出た。合計で53。つまりは前者のパターンである。
「5マス進むんだね」
真希は、5マス先の無記入マスに駒を進めた。
続いて希望がルーレットを回す。
「……4。目の前のおじさんが百万円を落とす。届けてキラキラした宝石を貰うか、そのまま百万円をゲットするか。どっちにしよう……」
百万円!? なぜ落とす!?
「うーん。迷う……。樹はどっちがいい」
「え? 僕!?」
希望は悩んだ結果、僕にその決定権を委ねてきた。あまりに突然だったから少しビックリしちゃった。
「これはゲームだよ? 1人で考えるべきだと思うけど」
「でも、樹と私は友達……」
希望は悲しそうに言って、無表情だが端正な顔で見上げてくる。
「そ、そっか。そうだなぁ。このゲームってお金よりも戦闘力の方が大事なんだよ。キラキラした宝石はきっと何かの役に立つ……と思う。だから届けてあげて」
「うん、わかった」
おじさんに100万円を渡した希望は、その代わりにキラキラした宝石をゲットした。
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