第236話 アザエルを追え
■ジョーカー
「……ディー! レディー! 目を覚まして! ジョーカー!」
誰かがわたしを呼んでいる。体を揺すられている。わたし……寝てたの? 閉じていたまぶたを開く。
「大丈夫!?」
「こわい夢……見たわ」
「怖い夢?」
「みんな死んでるの。わたし以外……みんな。でも目の前には悪魔がいて……」
「もういいよ、大丈夫。思い出さなくていいから」
レオはそう言ってわたしを横に抱き上げ、
「ここもダメだ。移動するよ」
人間離れした速さで走り出した。さすが吸血鬼ね。
左半分の視界が赤い。額に手を当てて目の前に持ってくると、手のひらは真っ赤だった。結界の隙間からは巨人が見える。巨人は結界を殴って破壊行為を続けている。
「あの巨人は俺たちを探してるんだ。でも俺たちは傲慢魔法で視認されないようになってる」
「足引っ張っちゃって……ごめん」
「謝らないで。レディーは悪くないよ」
「でも……」
「そういうのは全部終わってから言うものだよ」
「……うん」
レオはやさしいわね。わたしを責めないなんて。
しばらく移動するとレオは建物の中に入ってわたしをテーブルの上に座らせ、
「アザエルは巨人で俺たちを足止めして、そのうちに玄武の霊核を回収してこのコンテナ船を放棄するつもりに違いない。俺の第六感がそう言ってる。だからアザエルを追ってぶっ倒すよ。いい?」
「わかったわ」
■ジョーカー
わたしは万有引力操作と斥力操作を応用してレオと一緒にカイロの夜の空を飛び、アザエルが逃げた方向に向かう。少しの間飛んでいると、結界の壁面が見えてきた。結界の壁面の下の方は破壊されていて、人が1人通れる程度の穴があいている。ここを破壊して結界の外に出たのね。
わたしたちはその穴から結界の外に出た。雨が降っている。同じ時間を繰り返してるのに、雨が降ってるパターンは初めてね。アザエルの顕現によって天候が変わったのね。神霊には環境干渉作用――彼らが意図せず環境に干渉する能力がある。その効果により雨が降っているのね。
わたしは飛び上がって上空からコンテナ船を俯瞰する。
「アザエルはいないわよ。もう逃げちゃったのかしら」
「そんなはずはない。ヤツの残り香がまだ強い。たぶん地下だな」
吸血鬼は常人の何倍もの五感を兼ね備えている。だけどまさか残り香までわかるなんて。レオは吸血鬼の中でも五感にすぐれているのかもね。
わたしたちは船橋へ向かい、エレベーターで地下へ移動した。
To be continued!⇒
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