第126話 大惨事!
◾エース
私は第九感――分割高速演算を発動し、血の染み付いたアスファルトの方に目を向けた。
本当は血なんて怖いから見たくない。でも私の能力で多くの人が救われる。だからがんばらなくっちゃ!
しかし事件が発生したのは3日前。残滓粒子は拡散し、粒子構造解析が可能な最低限の濃度をかなり下回っている。
幸いにも、アスファルトに微量の残滓粒子が残留していたので、これを解析することができそうだ。
でも濃度が低すぎてこのままだと解析に移行できない。
私は分割数を4から6に上げる。でもまだ足りない。もっと分割数を上げなければ。
6から一気に10まで上げてみた。
かなりゆっくりと処理が始まったが、これだと何時間もかかってしまう。
分割数を上げるほど処理速度は加速度的に上昇する。しかしそうすると脳に負担がかかり、さらには生理機能がかなり低下してしまう。
今もちょっと呼吸が苦しいし、視界がぼやっとしていて耳鳴りもする。でもがんばらなきゃっ!
私は分割数を最大――13まで上げた。
瞬間、残滓粒子の構造解析がものすごい速さで進んでいった。きっとあと3秒後もすれば構造解析は完了するだろう。
しかし同時にまったく呼吸ができなくなり、視力や聴力、平衡感覚がまったく効かなくなった。
頭がチカチカして他のことはもう何も考えられない。何も見えないし、何も聞こえないし、何も感じられない。私だけが無の世界にいた。こわい! こわいよぅ!
今すぐ誰かに助けて出して欲しい。でも私はもう少し無の世界にいなければならない。あと3秒、この恐怖に耐えられるのかな……?
◾隆臣
俺はじっとエースの後ろ姿を見ていた。小さな背中に大きな期待を背負い、この子は今がんばっているんだ。かっこいいぜマジで。
急にエースがふらついたかと思うと、そのまま前方に倒れた。
俺は咄嗟にエースの腕を掴み、エースが地面に衝突するのを防いだ。ふぅ危ない。もう少し遅かったらエースが痛い思いするところだった。
「おいエース?」
目を閉じたエースはピクリとも動かない。眠っているのではない。きっと失神したのだ。脳をフル稼働させてオーバーヒートしたから。
なんも失神するまでやらなくてもいいだろ。どうしてそんなに無理すんだよ。
きっとエースは怖かったんだ。みんなの期待を裏切ることが。
エースの宿主だからわかる。3日も経てば残滓粒子解析なんてほぼ不可能なんだ。だけどエースは分割数を最大にして――あらゆる身体機能を犠牲にして解析をはじめた。成功したのか失敗したのかは、エースが目を覚ますまではわからない。けど俺は信じている。エースなら解析に成功したと。
俺はエースを胸に抱き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。こんなちっちゃいのに、本当によくがんばったな。
しかし次の瞬間、俺は膝に何か温かいものを感じた。生暖かく、スラックスに染み込んでくるような感じがする。
俺は地面を見た。
「まさか!」
アスファルトがどんどん黒く染まっていく。その部分の所々は、陽の光をてらてらと跳ね返している。
液体だ。何か液体が……。それはエースから――エースのふとももから伝ってきている。
それを見てようやく俺は気づいた。エースが失禁したということに。
To be continued!⇒
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