piece:5 公園
「「「「じゃーんけーん、ぽん!!」」」」
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
太陽がひたすら丸かった。
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
ぎらぎらした八月の陽光は大地を焼き、砂を焼き、水を焼き、なんか噴水みたいな水飲み場の蛇口を焼き、果ては少年少女老若男女神さま仏さま魔獣さまを焼く。手当たり次第の見境なしだ。
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
その殺意じみた熱はアスファルトを足場に猛烈に照り返し、この街から逃げ場を封殺しにかかる。止むことのない蝉の声は津波のように耳を掻き回し、押し寄せる。不快度係数は鰻登りだ。
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
視線を上げれば淡い青空。ゆったり流れる入道雲は、天界の霊峰の如くどっしりとそびえていた。ついその中に天空の城を夢想する。この時期になると仕方がない。金曜ロードショーでやるし。
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
夏だ。
紛れもなく。間違えようもなく。
今年も夏がやってきた。
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
そんな炎天下。街の公園で。
少年少女は拳を交える。
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
「…………」
「みんな中々やるわね」
「…………だな」
「強いね〜 腕がなるね〜」
「おおお前ら中々なかやるな。ここのオレが負けるかも知れないなんて考えたこともないこともないんじゃなね」
「おいマサ」
「なんだ。なにか用か?」
「不正はたらいてない?」
「はたらいてないぞ」
「しのかは?」
「なんにも〜」
「そうか」
「はいユウ。続き行くわよ。……せーのっ!!」
あいこでしょ。
戦いの拮抗。継続。そして決着への一歩を刻む合図。さらに数度繰り返す。
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
チョキ。チョキ、チョキ、チョキ、
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
パー。パー、パー、パー、
「「「「あーいこーで、しょ!!」」」」
……グー。グー、グー、グー、
「「「あーいこーで、しょ!!」」」
チョキ。チョキ、チョキ、チョキ
「「「あーいこーで、しょ!!」」」
パー。パー、パー、パー
「「「あーいこーで、しょ!!」」」
グー。グー、グー、グー。
「「「あーいこーでーー」」」
「なあしのか」
「なに〜?」
「不正はたらいてないか?」
「なんにも〜」
「マサ」
「んだよ」
「お前にこれからとても良いことがおこる予感があるんだけど」
「お、分かるか!! そうなんだよ、明日からオレのすんばらしいウワサが広がっちまう予定でな。いやーまいっちまうなモテモテだわ!」
「条件は」
「ずっとグーチョキパーを順番に出すこーー」
「やっぱ不正してんじゃん!!!!」
ーーそして元凶は明らかじゃん!!
少年は少女に詰めかかる。
しかし、少女は何食わぬ涼しい顔だ。
「ユウ。アタシは不正なんてしてないわ。ただ『共闘してはならない』なんて項目がジャンケンのルールブックには乗ってなかっただけよ」
「……僕が同じことやったら?」
「殺すわ」
「理不尽だ!!」
二文字で言うならば不遜。
四文字で言うならば傲岸不遜。
簡単に言うならばめっちゃ偉そうに彼女は言い切った。
そしてニヤリと勇ましい笑みを頬に刻み、下を見ろと視線で勝ち誇った。
少年の手は開かれ、
他の三つの手はーー
「わたしバニラ〜」
「オレはチョコ!」
「私はチョコミントね。ほら、走った走った!」
天からもたらせし魅惑の果実、『他人に買いにいかせたアイス』を巡る戦いは決着を迎え。
有無を言わさず押し付けられた小銭を握って少年は駆け出す。
やれやれと、彼方で燃え盛る太陽が笑っている気がした。
休み明け。
『学校一虫取り網が似合う男』『鼻に絆創膏貼ったら驚異的に映える男』『ツイッター映え』などと呼ばれる男子生徒が爆誕していたのはご愛嬌。
遠いあの日の、小さな思い出。




