piece:4 電話
自分の小説がどう思われてるかほとんど『謎』のままなので、感想とかドシドシ書いてくださると発狂して執筆速度上がります。よろしくお願い致します(^^)
「私、行かないわ」
キッパリと。これ以上ないぐらい断言された。
「……そんなこと言わないで。な?」
「この前も言ったけれどね。私、今忙しいの」
全くもって聞く耳を持たない少女は電話の向こうでしかめ面でも浮かべているのだろうか? 真顔でも同じ台詞を吐きそうである。
裕也は慣れ切った溜め息を一つ。
「はぁ……。いや、もう別にいいけどさ。しのかは悲しむぞ。部長は悲しむぞ。他は……どうかは知らないけど。せめて理由の一つぐらい教えてくれないと、僕は釈然とはしないな。ーー部活以上に何を優先してるんだ?」
「生徒会活動よ」
「メグの柄じゃないだろーーとは言えないか。……そんなやりたいことあるのか? 少なくとも僕には夢のある職場とは到底思えないんだけど」
「…………それは無い、けれど。優先すべきではあるわ。ーーこれ以上詮索する?」
「するね。当然するね。詮索フラグだよ」
「私にはアンタが分からないときがあるわ。たまにね」
「そりゃ僕もだ。お互い様。ーー言いたくないんだろうけど、隠す気もないんだったら言ったらいいのに」
スマートフォンの向こう側で、わずかながら感情の動きがあったのが分かる。観念したのか、強情を張るのか。少なくともコインを弾くところまでは運良く進めたようだ。
「私ね。貸し付けておく借りも預かっておく借りも選ぶようにしてるの。分かるでしょ?」
「だろうな」
「カガミーよ。分かって」
「…………よっぽどか?」
「……分かって」
平常ならば、いやもう彼女の発言的にそんな仮定は無意味極まりないのだが、もしも今が平常ならば。この場面での少女の『分かって』にはもう少し高圧的なニュアンスが残っていただろうと。裕也は悲しい現実を受け止めるのに秒として必要としなかった。
いったいどういう天の巡り合わせなのか。通話の向こうの少女は”化け猫”加賀美に一方的な『借り』を成立させられている。
それは少女同士に一種の信頼があるからこその失態であろうが、裕也少年としてはそこまでに至った経緯をどうにかして知りたいのは山々だ。しかし通話の向こう側の少女に尋ねるのはスプラッタ。片割れのニャーニャー少女に尋ねるのはスレイブである。これまた天の恵みを待つしかない。
いったい何を要求したのか。
いったい何を要求させられているのか。
きっとそこには互いに譲れないナニカがあるのだろう。
「メグ」
「……何よ?」
「からかっていいか?」
「ドタマかち割るわよ」
「いや既にスプラッタ!!?」
「冗談キツイわよ」
「こっちのセリフだけどなっ!」
「まあいいわ。とりあえず、そういう事だから私は参加しません」
「はいはい。……そもそも僕が問いただす以前にしのか辺りが同じことしてるだろうしな……」
分かりきっていた話だ。それでも直接、それもトークアプリによる文章ではなく通話形式を選んだのは、裕也の中にどこか噛み砕けないものがあったからーーなのかもしれない。
「やっぱり、なーんか納得できないな」
「必要ないわ。私が行かないという事実だけ噛み締めておけば」
「理不尽」
「今更ね。……銀英山に行くのも今更なのよ。実はね」
どういう風の吹き回しか。死角からのカミングアウトが始まった。裕也は当然のごとく驚いてみせるのであった。
「マジか。いつの間に」
「だから行っても正直二度手間かもしれないわ。新しい発見はあるかもだけど、優先度は下がってるってわけ。ーー大丈夫。ざっと見て危険な感じはなかったわ」
「なるほどなぁ。なんかちょっと腑に落ちた」
彼女が新しい案件を非優先として切り捨てるのが納得いっていなかったのだ。加賀美とのイザコザがどれだけのものかは測りかねるが、彼女にとって『未知』とは契約ひとつで握り潰せないほど大きな欲求であるのだから。たぶん。
「部長には伝えてあるのか? 行ったことと、その内容」
「いやよ。それじゃみんな面白くないでしょ?」
「そりゃそうだ」
「じゃあもういいでしょ。伝えるべきことはもうないし。私、長電話好きじゃないから」
そう言うと彼女はさっさと通話を終了してしまった。相も変わらずマイペースというか、振り回し体質なのか。
最後の声には吹っ切れたような軽快さが感じられた。そんなに言いたくなかったか? 先に銀英山行ったこと。
やっぱりよく分からない幼馴染みだと、少年は天井を仰ぎながらスマホを放り出した。
「………………て、僕は面白くなくてもいいのかよ」




