フラグ回収。
押すなよ、押すなよ? で、押す的なフラグを回収ハルさんです。
リュートはハル関係だけは女々しいですが、決める時は決める男の子ですよー(棒読み)
行間に関して意見をいただきましたが、今ガラケーで投稿してて、最近スマホで見られるようになって気付いたんですが、段落間違ってるとこがチラホラたくさんありますね。
ガラケーなんで気付けなかったです。
(……可愛くない)
わらわらわらわらわらと、低木を掻き分けて出て来たゴブリン達を見て、私は思わず呟く。
キモ可愛いとかいうジャンル地球ではあったけど、この世界でもあるんだろうか?
まぁ、このゴブリンに可愛い要素は一欠片もないな。
サイズは幼稚園児ぐらいで、事前に聞いてはいたけど本当に肌が緑色だ。
有名漫画の某楽器な名前の星人さんを思い出したけど、まだ向こうはイケメンだったしなぁ……。
こっちは意地が悪い小人って感じの顔で、ギャギャみたいな声で鳴いてる? と言うか、喋ってるのかな?
(まま、えさ、ちあうー!)
あ、私が餌扱いされてたみたいだね。
止める間もなく飛び出したルーが、先頭のゴブリンを体当たりで吹き飛ばし、華麗な着地を決める。
(ルー、気をつけてね)
(あい!)
良い子な返事をしたルーは、ぐにょんと体を引き伸ばし、そのまま鞭みたいにしならせて、襲いかかってくるゴブリンをバシバシしてる。
(……スライムって、あんな戦い方なんだね)
体当たりと丸呑み以外の攻撃あったんだなぁ、と状況も忘れて感心する。
「いえ、多分普通のスライムは伸びたりしませんし、あんな攻撃は出来ないと思いますよ?」
私の独り言に、リュートはちらりとルーを見やり、少しだけ驚いた様子で答えてくれた。
そう言えば、何に使えるかよくわかんないスキルあったけど、それがあるから出来る攻撃なのか、あれは。
天使の羽とか、四角にして遊ぶためだけのスキルじゃなかったみたいだね。
ぐにょんとなったルーがバシバシする姿は可愛いけど、直撃受けたゴブリンはあらぬ方向に体を曲げて動かなくなってる。
ヤバくない?
うちの子の可愛さ!
「ハルさん、落ちないでくださいね?」
もう一人のうちの子も、もちろん可愛さでは負けてないし、相変わらず強いね。
私の目では、もうリュートの太刀筋がよく見えないよ。
リュートの通り過ぎた後、ゴブリンがバッタバッタ倒れていくから、たぶん斬ってるんだろう。
うん、バッチリ血も出てる。
ゴブリンも武器持ってるから、ギャギャァとか言いながら抵抗……あれ、断末魔の声なのかな、もしかして。
あ、ギョギョって鳴いてるのがいる……だけど、リュートに斬られたか、ルーにバシバシされたみたいですぐ聞こえなくなった。
そんな解説してる私が何をしてるかって?
リュートから落ちないよう、しっかりしがみついてました。
いや、防御特化な私が出来る事なんて、この状況じゃないし?
下手に騒ぐと、リュートとルーの邪魔になっちゃうからね。
(リュート、ルー、頑張って)
「はい!(あい!)」
応援ぐらいしとくかと軽く応援したら、全力いい子な返事が聞こえた。
うん、倒すスピードも上がったね。なんか、ごめん、ごぶりー?
十分後、辺りにはゴブリンの死体が積み重なり、リュートとルーが討伐の証明になる耳の回収に勤しんでいた。
私? 私も手伝おうとしたよ?
でもリュートが、私の体が血で汚れたら嫌だからってギュッてしてきて、降ろしてくれなかったんだよね。
うむ、ちょいぷんぷんで怒るリュートが殺人級に可愛かったので、従ったとだけ言っておこう。
残念ながら生きている下卑組は、とーっても残念ながらまだ起きる気配はない。
端っこの一人を、ルーがべしべしやってるけど、起きる気配はやっぱりない。
そろそろHP的な意味で永眠しそうらしいから、べしべしやってるルーを呼び戻し、私はゴブリン達がやって来た方向を見つめる。
(確か向こうだったよね、村長さんが教えてくれたゴブリンの巣って)
「はい、そうですね。たぶん、いなくなった男とトラク達は……」
(下卑Aは魔物使いらしいから、ゴブリンを操ってたとしても、なんで手下まで殺られてるんだろ)
(ぷ?)
体全体を傾げて疑問を口にした私を真似して、ゼリー寄せ化したルーも体を傾けてる。うむ、グロ可愛い……やっぱり、ちょいグロいね。
「仲間割れでもしたんでしょうか?」
リュートがポツリと洩らし、周囲を見渡して首を捻っている。
普通に考えればそれしか考えられないけど、何か、腑に落ちないんだろう。私もだよ。
あと、ナチュラルに死んだ扱いしても、もう突っ込まれなくなったよ?
どうでもいいか、こっちは。
死んだとしても、私達には何の落ち度もないし?
いい子なリュートなら、助けましょう、とか言うかと思ったけど、そう言えばリュートは敵判定した相手には容赦なかったね。
特にこいつらは私に不埒な事をしようとしたから、全く気にしてないんだろう。
ルーに至っては、とどめを刺したくてうずうずぷるぷるして、周りをくるくる回ってるし。
(……んー、虎穴に入らんば虎児をってことで、巣の様子見に行こうか?)
「そうですね、こんな早い時間からゴブリンが活動してるなんて、巣で何かあったのかもしれません。トラクも心配ですし」
…………いたな、そんなヤツ。
この短時間で忘れてたよ、あははははは。
(この雑魚らは放置でいいかな?)
「動けはしないでしょうが……」
縛り直しますか、と下卑手下へ歩み寄るリュート。オン私。
亀甲縛りとか楽しいかも、とか私がゆる女神様ウケしそうな事を考えていると、不意にグッと体を引っ張られるような感覚に襲われる。
(っ!)
リュートから振り落とされそうになるが、すぐ伸びてきたリュートの腕に回収され、私は安堵の息を吐く。
「すみません! 何か飛んで来たので、反射的に避けてしまって……」
しゅんとしたリュートに謝られ、私は体を引っ張られるような感覚の原因を理解した。
要するに、土台リュートが素早い動きをしたから、ボーッとしてた私はついていけず、振り落とされかけたのだろう。
それより、飛んで来たってのが気になる。それ以上に気になるのが……。
「ハ、ハルさんを、落としそうになるなんて……」
(大丈夫だよ、リュートが掴んでくれし。ボーッとしてた私が悪いんだから)
今にも崩れ落ちそうなリュートだ。
うむ、可愛い……じゃなくて、この状況で崩れ落ちたら困るかな、少し。
ま、いざとなれば、私の中にリュートを収納して、私がもっふもふと立て籠ればいいか。
(大丈夫、大丈夫。リュートは悪くないんだよ? 当たらないように避けてくれたんでしょ? 何にも悪い事してないよ?)
「……はい」
あー、かなり凹んでる。
でも本当にリュートは悪くないのに。
これも、あいつらのせいだよね。
極端な話、あいつらは天気の悪さすらリュートのせいだとか言いそうだ。実際、言ってたと思う。
だから、リュートはすぐ自分を責めるんだろう。
何も悪い事してないのに。
なら、その度に私は否定して、リュートが大好きだと伝えよう、こうやって。
(ありがと、リュート。落ちないように支えてくれて。ボーッとしててごめんね。大好きだよ)
凹んでるリュートをもふもふでもふーっと包み、ぎゅうぎゅう抱き締める。
「……ハルさん」
えへへ、と嬉しそうなリュートを見て安心してると、またグッと体を引っ張られるような感覚が……。
今度はリュートを抱き締める、と言うか貼りついてたから、問題なかった。
「また……近い?」
確認するように独り言を洩らしたリュートは、私が貼りついてるのをチラチラ確認してから、ダッと駆け出す。
(しっかり掴まってるから、全力で行っちゃって!)
「はい!」
素直ないい子は、今日も復活が早いね。
私も反省して、しっかりリュートを鷲掴んでいる。
あ、ルー忘れた。とか思ったけど、いつの間にか戻っていたらしい。
もふもふの中から、ぽこっとルーが生えてきた。
(ぷ? ごぶりー、ちょと、へん?)
(ちょっと変なゴブリン?)
何なんだ、それは。
スライムは感知能力が高いらしいから、ルーには何か見えているのかもしれない。
「変なゴブリン? もしかして、上位種か特殊個体でしょうか?」
茂みを突っ切り、最短距離を全力で走りながら、リュートは律儀に答えてくれる。
息が切れる気配もないから、楽々答えてるんだけどね。
体力と肺活量ぱねぇ、って感じだよね、リュート。
(特殊個体はルーとか私みたいな感じだったよね。上位種って何?)
「文字通りですね。ゴブリンの上位種だと、知能が高くなったり、魔法が使えたりするんで、さっきの魔法もその上位種じゃないかと」
(へぇ)
うん、魔法撃ち込まれた事も初耳だったんだけど、とりあえず感心しておいた。
リュートが避けてくれたのは、どうやら魔法らしい。
(……魔法って避けられるもの?)
「え? あぁ、魔法は俺使えないですから、よくわからないですが、たぶん魔法で防ぐしかないんじゃ? 属性にもよるでしょうが」
矢より早いですし、風とかなら不可視ですし……とか周囲を見渡して走りながら、リュートは何でもないように答えてくれてるけど。
(ちなみに、さっきから撃ち込まれてるっぽいのは?)
「真空刃とでもいいますか、風の刃ですね」
ニコニコと笑いながら、リュートはひょいと軽く進路を変え、進むはずだった場所辺りの大木には、不可視のナニかが大きな傷を作る。
(……ソウナンダ)
思わず片言になった私は悪くない。
ここでリュートへ向かって、
「思い切り避けられないって言った風の刃じゃねぇか!?」
とか、突っ込んだら負けだろう。
「あ、確かに風の刃でしたね」
避けられちゃいましたー、とリュートがあれ? と首を傾げている。
駄々漏れたらしい。
――あと、
(リュートが一番規格外だからね?)
可愛さでもダントツだけど!
逆ギレして内心で叫んだら、また駄々漏れたらしく、リュートが照れながら幸せそうに笑っている。
エヴァンがいたら怒鳴られそうだ。
「緊張感を持て!」
って。
しょうがないよね、これがうちのパーティーの通常運行なんで。
さぁ、特殊個体か上位種かはわからないけど、さっさと殺って帰ろう、エヴァンの待つノクに。
「俺のハルさんなのに……」
エヴァンの事を考えてたら、うちの可愛い子が拗ねちゃいました。
もー、可愛い!
いつも感想くださる方が、アドバイスくださったので、早速実行中です。
早くスマホ慣れたい。
巻き込まれた。の方は、某筆頭魔術師の怨念か、なかなか進まず申し訳ないです。
ある意味、リュートより女々しくなりそうで……。
打たれ弱すぎる……。




