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まぁ、色々とお疲れ様です?

イライラ回ですが、あんまりイライラはしないと。

ナニしてるみたいな表現がありますが、本当に表現だけなんで。

どうしても気になる方はスルーで。

感想いつもありがとうございます!

 トラブルくん……あれ、名前違う? ま、(どうでも)いいや。

 トラブルくんとの待ち合わせは、午前十時なんで、エヴァンと朝食して、軽く注意すべき話を聞いてから、私達は待ち合わせ場所を目指していた。

(リュート、あれも、それも、あ、あっちのあれも買って、私に詰めて)

 その道中、何と無く嫌な予感がした私は、リュートに頼んで、手当たり次第色々買い込んで、ついでに詰め込んでいく。

「ハルさん、お腹空いてたんですか?」

(……まぁね)

 女の勘なのか、モンスターとしての野生の勘なのか微妙だから、リュートに説明しづらいし。

(馬車とかは、トラ……なんとかが用意してくれるんだよね?)

「はい。門の外で待っててくれる予定なんですが……」

 いつもの門番に一撫でされてから外に出た私達は、そんな会話をしながら周囲を見渡す。

 幸いというか、当然というか、待ち人は見つけられた。

(うわぁ、きゃぴきゃぴしてるねぇ)

「どうやら、向こうのパーティーは、トラクと女性三人のようですね」

 少し離れてても聞こえる耳障りな高い声に、私は耳を塞ぎたくなる。

 塞ぐ耳は無いんだけど。

 あ、向こうもこっちを見つけたみたいだね。

 指差して、何か笑ってる。

 あれは、気分悪いな。

 リュートは、笑われるような格好してないのに。

 装備の手入れも行き届いてるし、服装も華美ではないけど、清潔感あるのに。

 実際、リュートは、いい匂いがするんだから!

 ま、あんな軽そうな子には、嗅がせてあげないもん。

(もん)

「もん?」

 ルーとリュートが、そこだけ反芻したってこと、一部だけ駄々漏れたんだね。

 ちなみにルーが今まで静かだったのは、もふもふの中で寝てたから。

「来たか。早速出発するからな」

「あぁ、よろしく頼む」

 ニコッと人懐こく笑って、トラなんとかとパーティーの女性達へ挨拶するリュート。

 鑑定は出来たし、女性達は特に警戒しなくてもいいだろう。

 イライラすることは言われそうだけど。

 トラなんとかも、可愛い系の美少年だから、年上のお姉さんにモテるらしい。

 トラなんとか……面倒だから、もうトラブルくんでいいや。そのパーティーメンバーは、三人共年上で、なかなか美人なお姉さん方だ。

 まぁ、美人って言っても、ノクの受付嬢三人娘には、かなり劣るんだけどね。

「トラクには負けるけど、可愛らしい冒険者さんね」

「そぉ? トラクの方が可愛いってぇ」

「冒険者は顔ではなく、腕ですよ」

 自分イイ女でしょ感が透けて見えてるのが、ファース。

 語尾をゆるく伸ばすギャルっぽい派手な見た目の、セーカ。

 眼鏡をかけた理知的な雰囲気の、サディ。

「そうですね」

 面と向かって貶されたのをスルーし、リュートはニコリと笑って頷き、馬車へ近寄る。

 もちろん、乗り込むためだ。

 取り残され、肩透かしを食らった形のお姉さん方は、一瞬きょとんとしていたが、すぐに笑みを浮かべ、同じく笑顔のトラブルくんへ視線を向ける。

「悪いが、馬車の中は、俺達分のスペースしかないんだ。リュートは、御者の隣にでも座ればいい」

 御者がモンスター連れのお前を乗せればな、とニコニコとした笑顔で告げ、トラブルくんは、お仲間と馬車へ乗り込む。

 今度は私達が取り残されたな、とか現実逃避してたら、馬車からトラブルくんが顔を出す。

 やっぱり乗せてくれるのか、とか一瞬思った私は、甘々過ぎたようだ。

「あ、乗せてもらえなかった場合は、依頼不履行ってことで、違約金払えよな? 報酬の三倍にまけといてやるよ」

 最初から、これが狙いでリュートを誘いやがったな、こいつ。

 もともと、ゴブリンぐらいなら、倒せるんだろうな、トラブルくん達は。

 どうせだから、さらなる金を狙ったか、ただリュートが美少年だからムカついたか。

 後者かな。モンスター連れは、レアらしいし?

 そっか、しかし、馬車の御者ってモンスター乗せたがらないのか?

 トイカへ行く時の御者のおじさんは、特に何も無かった……って、あの御者のおじさんじゃないか、あの人。

「ハルさん、あの方は」

 リュートも気付いたらしい。

(やっぱり、あのおじさんだよね)

 ニヤニヤしているトラブルくん達の視線を受けながら、御者のおじさんの元へ近寄るリュート。

「おや、今日のお客様は、リュート君だったか」

「はい! 後ろはいっぱいで乗れないので、お隣にお邪魔してもよろしいですか?」

「そんなはず……いや、そうか、そうか。私は構わないよ。その代わり、座り心地に期待はしてくれるなよ?」

 一瞬後ろを振り返りかけた御者のおじさんは、すぐに納得した様子で頷き、悪戯っぽい笑顔で自らの隣を叩く。

「ありがとうございます! よろしくお願いします」

(よろしくお願いしまーす)

(よりょしきゅー)

 うむうむ、うちの子達は可愛いのう。

 ルーごとリュートをもっふもふと愛でてたら、いつの間にか馬車は出発してた。

 ちっ、企みが失敗して悔しがるトラブルくん達を見逃したか。

 どうでもいいんだけど。




 ガタゴトとのどかな道を、御者のおじさんの話を聞きながら、馬車の旅路は進んでいく。

 背後から時々、怪しげな声が聞こえるが、私は何にも聞こえてませーん。

 ったく、ナニしてんだか。

 おっと、私は何にも聞いてない設定だったね。

 後ろの謎の声より、御者のおじさんの話の方が楽しいし。

 今は、私と同じ名前の花が咲いてた国の話。

 とても優しい王が治める国だったらしいんだけど、優し過ぎて、臣下の裏切りにあって王座を奪われちゃったんだって。

 もちろん、国民は優しい王様が大好きだったから、国は荒れに荒れて、結局その国は、戦争で滅ぼされて地図から消えちゃった、と。

 王と王妃は、殺されたとも、心ある人間に助け出されたとも言われてる、か。

 助け出された云々は、散り散りになった国民の願いというか、願望なのかもしれないね。

(そんな優しい王様がいる国なら、住んでみたかったね)

「そうですね」

(花だけでも、絶対見に行こうね)

「はい!」

(ぷぅ?)

(もちろん、ルーも一緒だからね)

 ほのぼのと会話してると、御者のおじさんもニコニコと笑ってくれている。

 リュートが私と話していると知っているから、全く不審な目で見てくる気配もない。

 いやー、楽だよね。

 後ろから聞こえてくる、ギシギシとか、気のせいだって思えるくらいに。

 忘れがちだけど、私の声が聞こえるのは、リュートとエヴァンだけだから、リュートって大きな独り言言ってるように見えるんだよね。

 リュートが可愛いげのある美少年だから以下略。




 カナ村まではもう少しらしいけど、夜の森を走るのは危険だし、馬も疲れてるから、と野営することになってまでは普通の流れだったと思う。

 実際、私もそう思うし。

 で、時間的に夕食タイムな訳だよね。

「は? 何で食料持ってきてないんだ? お前らの分なんて用意してる訳ないだろ?」

 私も聞きたいよ。何で、食料とか用意しておくって話が、何処かへ消えたのか。

 私は無言でリュートの肩上から、ジトッとトラブルくんを見る。通じないのはわかってるよ。気分だ、気分。

「あれ、そういう話だったろ? 身一つで来てくれ。あとは、用意しておくから、って言わなかったか?」

 レアなタメ口リュート可愛いなぁ、とか思ってる私の視界の端では、お姉さん方が嫌味な感じで笑って、こそこそ話してる。

 食料用意してないとか冒険者としてあり得ない、的な話を、オブラート引っ剥がして話してるみたいだね。

 やり口が小物過ぎるって。

「あー、すまない。勘違いしたみたいだな、俺が」

「気にするなって。間違いは誰でもあるからな」

 本心からすまなそうに謝るリュートを、偉そうなトラブルくんが上から目線で慰めてる。

 あれ、ウザいな。

「ごめんなさい、ハルさん。俺が勘違いしたせいで……」

(いや、大丈夫だよ。私とルーは、道端の小石だって食べられるから。それより、リュートの方が……)

 現在進行形で、お腹から可愛らしい鳴き声聞こえてくるし。

(あっち行こうか)

 私がもふっと示したのは、野営場所から少し離れている御者のおじさんの所だ。

「はい」

 リュートはショボンとしながら、心配そうな御者のおじさんの側へと歩いていく。

 背後では、たかるのかよ、とか聞こえて、イラッとする。

 ま、確かにリュートは手ぶらにしか見えないし、そう思うのは当然かもね。

「少ししかないが……」

 ご飯を分けてくれようとする御者のおじさんの言葉を制するように、私はちょうど良い感じの切り株の上へ飛び降り、もふっと膨れてアピールする。

 御者のおじさんは、それで察してくれ、笑顔で頷いた。前回の旅路で、私のもふもふ収納とか見てたからね。

 トラブルくん達は見てないから、気にせず買い込んできた食料を数点吐き出す。

 ついでに、デザート用に青リンゴと、ぷるぷるなルーを……って。

「スライム?」

(ルーは食べないでね?)

 御者のおじさんもきょとんとしてるけど、流れで吐き出されたルーも、ビックリして無言で高速ぷるぷるしてる。

「食べませんよ。ありがとうございます、ハルさん」

 リュートは小さくクスリと笑うと、私を軽く抱き締めてお礼を言ってから、御者のおじさんと並んで夕食タイムへ突入する。

 食料は多めに買ってあるし、私のもふもふ収納は時間経過ないから、ノクへ帰るまでのご飯は問題無いだろう。

 私とルーは、最悪そこら辺の草花でも食べられるからね。

(まま、のこ〜)

 そう思ってたら、高速ぷるぷるしてたルーが、いつの間にか近くの木の根本で跳ねて呼んでる。

(のこ? あぁ、キノコだね)

 近寄ってみると、見事なザ毒キノコなキノコが群生している。

 食べると、残機が一つ増えそうな雰囲気なキノコを、一応鑑定してみる。

 ……うん、予想外は無く、普通の毒キノコだったよ。

 何なら猛毒だったよ。

 笠の部分が緑色で、白い斑点あるキノコなんて、見るからに毒ありそうだったから、違和感は無い。

(たべう)

(食べようか)

 どちらにしろ、毒耐性がある私とルーには、全く関係の無い話な訳で。

 見た目はアレだけど、味はエリンギっぽくて美味しい。

 ルーも地面を溶かす勢いで、でろっとしながら毒キノコを食べている。

 ちらり、とリュートを見やると、御者のおじさんと青リンゴを分け合って食べている。

 仲良きことは、美しきかな。

 私が毒キノコをはむはむしながら、ほのぼのしてると、

「え〜、青リンゴなんて高級品、ずるぅい」

と、間の抜けた声が近くから。

 ビックリして見やると、プンプンみたいな効果音が付きそうな、ギャルが予想外に近くで喚いていた。

 うわぁ、ぶりっ子可愛くない。

 別にぶりっ子嫌いじゃないけど、ギャルのは底意地の悪さが透けて見えて苦手。

 私がドン引きしてると、ギャルは青リンゴをリュートから強奪する。

 女性だからか、リュートは笑顔で大人しく青リンゴを渡している。

 せっかくリュートにあげたのに。

 まぁ、まだまだおかわりあるから、良いけどぉ。

「あ、そうだぁ、今日の夜の見張りは、そっちでお願いねぇ」

「はい、わかりました。任せてください」

 御者のおじさんが何か言いたげだったけど、リュートは何の躊躇いもなく笑顔で頷く。

 ギャルは、何でか悔しげな顔して……あー、リュートに反抗とか、不服そうな顔して欲しかったんだろうな、あの反応は。

 リュートは、奴隷みたいな生活長かったからねぇ、それぐらいじゃ不服そうな顔なんてしないよ?

 私としては、して欲しいけど。

 御者のおじさんは、見張りは交代ですべき、みたいな話をしたそうだね。

 リュートが頷いちゃったから、タイミング逃したっぽい。

 ま、トラブルくん達は知らないけど、リュートには私とルーがいるから、一晩一人で見張りでも、何の問題もありませんけどねー!(ドヤァ)




 逆に、水入らずでイチャイチャさせてもらえて、ラッキーだよねってことで、イチャイチャしようと思いまーす。


トラブルくんの悪意は、天然でいい子なリュートには、全く通じませんでした。

まぁ、まだまだ何かあるでしょうけど。


マイペース更新ですが、よろしくお願いいたします。

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