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改めてのはじめまして。

ちょっとぐだぐだ回です。

エヴァンの扱いは、雑です。

誤字脱字ありましたら、そっと教えてください。


感想返信、明日ぐらいからぼちぼちやっていきます。

いつもありがとうございます。

「言い訳は、それで終わりかしら?」

 一番の年長であるアンナさんが、代表して問いかけてくれるけど、眼差しは冷えきっている。

 これは絶対に、呼びつけたくせに、女を連れ込んでいた最低男とか思われてる、よね?

「エヴァン、あの……」

「あら、組合長が女性に名前で呼ばせてるなんて、珍しいわね」

 私の呼びかけに、エヴァンより先に反応したアンナさんは、心底驚いた様子だ。

 そう言えば、エヴァンを名前で呼んでる女性って、いないような気がする。

「私も、組合長って呼ぶべき?」

 今さらな気もするけど。

 小声でエヴァンに尋ねると、無言のまま苦笑いで首を振られる。

「あ〜、らぶらぶしてますぅ」

 目線で会話していたら、イリスさんに気付かれた。目敏いなぁ。

 イリスさんはゆるいけど、仕事は出来る人だから仕方ないか。

「……結局、何の用ですか?」

 ウィナさんが、いつもより刺々しいよ?

「誰か、こいつの買い物に付き合ってくれないか?」

 エヴァン、空気を読もうよ?

 いくら私でも、こんな刺々しい空気の中、お買い物とか嫌なんだけど。

 精神的な防御力は、普通なんですよぉ?

 内心はイリスさん風にゆるくお送りしましたが、居たたまれなくなってきたので、エヴァンの背後に隠れておく。

 よし、エヴァンの盾なら、最強……なはず。

 エヴァンの背後で安堵の息を吐いていると、振り向いたエヴァンと目が合う。

 瞬間、ぞわ、って髪の毛が逆立ちそうになったから、手で抑えておく。

 何で、そんな、肉食獣みたいな笑い方するの?

(まま、らいじょぶ?)

 胸の谷間から出て来たルーが心配そうに、ぷぅぷぅ鳴いて話しかけてくる。

(大丈夫だよ。エヴァンに食べられるかと思っただけ)

(ぷ? えばぱぱ、ままいじめう?)

 いじめられてないよ、とルーに小声で囁いていると、またエヴァンの視線を感じる。

 ひとまず、エヴァンの服を掴み、ギュッと背中に顔を埋めて隠れておく。

 まだ人の姿には慣れてないんだから、あまり見ないで欲しい。

 む。エヴァンが、いつもよりあったかい?

 ペタペタ探っていると、エヴァンに、くく、と笑われ、そんなエヴァンの表情に受付嬢三人が固まったようだ。

 どんな顔をしたんだ、エヴァンは。

 しばらくしてから、復活した三人は揃ってニッコリと笑い――。



「「「キモい(です)」」」


 声を重ねて言い放った。


 イヤー、ノクノ冒険者組合ハ、仲良シダネ?



「棒読みだぞ、ハル」

 駄々漏れたらしく、苦笑したエヴァンに、軽く小突かれた。

 バカップルぽいので、止めて欲しい。

 ほら、三人からの眼差しが呆れていて、さらに居たたまれなくなったよ?

 私がどうしようか悩んでいると、何の前触れもなく三人の背後にあるドアが開く。

 現れたのは、お風呂上がりなリュートだ。

「あれ? 皆さん、いらしてたんですね」

 こてんと首を傾げたリュートは、部屋の中のギスギスした空気を気にせず、無邪気に問いかける。

 良かった。下着だけは履いてる。

 私が一人ズレてるだろう安堵をしている中、リュートは髪の毛からポタポタと水滴を滴らせ、歩み寄ってくる。

「まさか、組合長、リュートさんにも、女性をあたがったんじゃ?」

「あり得ないです〜」

「……ハルさん、おこ、です」

 受付嬢三人が、怒りを露わにし、エヴァンを睨み付けてるが、濡れ衣だよね。

 ま、確かに実際してたら、激おこ、ですけど?

 ルーに頼んで、強制スキンヘッドの刑だから。

 エヴァンが言い訳する前に、私のとこへたどり着いたリュートは、不思議そうに口を開く。

「ハルさん、おこ、なんですか?」

「怒ってないよ? あれは、濡れ衣だからね」

 リュートの濡れた髪をタオルで拭いてあげながら、私はクスクスと笑って首を横に振る。

「そうなんですか」

 私につられたのか、リュートも楽しそうに笑いながら、髪を拭いている私を抱き上げる。

 あまりに自然な動きで、止める間もなかった。

 リュートの中で、本当に私の姿は、ケダマモドキでも人でも、あまり差異がないらしい。

 手足がある分、抱き上げ難いと思うんだけど。

 だが、周りはそうではなく、受付嬢三人は目を見張って、私を抱き上げたリュートを見つめている。

「あの、リュートさん? 何で、組合長のお相手を抱き上げてるの?」

「ま、まさか、三人で、ですか〜?」

「……不潔」

 おぅ。とんでもない誤解が発生してないか?

「俺、いつもハルさんを抱いてますよね? あ、肩じゃないから、ですか? でも、こっちの姿のハルさんは、肩だと安定しなくて……」

 うん。荷物みたいで、肩は嫌なんだよね。

「ハルさん? 本当に、その女の子が、ハルさんなの?」

「アンナ。名前が一緒なだけって、オチもありますよ〜?」

「……確かに、です」

 リュートの方が、エヴァンより信用があるんだろうか。

 刺々しかった視線が、少しだけ探るような視線へと変わり、私を観察し始める。

 エヴァンは、この三人なら信用出来ると思って呼んだんだろうし、私も彼女達なら信用出来ると思う。

 と言うことで、ドキドキの自己紹介、二回目と行こう。

 ちなみに、ドキドキの自己紹介一回目は、リュートだ。

「えぇと、あらためて、初めまして。私、ケダマモドキの、ハルなんですが……」

 緊張のあまり、口調がおかしくなったかもしれない。敬語だし、語尾は微妙だし。

 笑顔も引きつってたかもしれない。

 あ、しかも、リュートに抱っこされたままだった。

「リュート、降ろして」

 小さく足先を揺らして訴えると、リュートはシュンとしながら私を床へ降ろしてくれる。

 私が三人の方へと近寄ろうとすると、背後から何かが負ぶさってきた……と言うか、犯人はリュートしかいないけど。

「これならいいですよね?」

 何がいいかはわからないけど、リュートが満足そうだから、放置する。

 ちょっと歩きにくい。

 寂しがりの甘えん坊め。

 背後霊なリュートを引き連れ、私は固まっている三人の前へと立つ。

「あの、信じられないだろうけど、私は、ハルだったりするような……?」

 あまりにも無反応過ぎて、語尾がおかしくなったよ。

「何だ、その喋り方。お前は間違いなくハルだろ」

「そうです。ハルさんです」

 エヴァンとリュートからの突っ込みは来たけど、受付嬢三人の反応は芳しくない。

 さすがに、モンスターが人間に、なんて荒唐無稽過ぎたかな? それより、気味悪いかな?

「あ、あの……」

「トイカに行く道中、ハルさんは、馬車の中で、何してましたか〜?」

 私の言葉を遮ったのは、ゆるゆると笑うイリスさんだ。

「え? 行く道中の馬車の中で? イリスさんの、お尻の下にいたけど……」

 クッション忘れて、辛そうだったから。

 小首を傾げて告げると、距離を詰めてきたイリスさんに、ギュッと手を握られる。

「これは、本物のハルさんです〜!」

 本当は抱き締めてくれようとしたらしいけど、背後霊なリュートがいて、無理だったようだ。

 イリスさんの変わり様に、アンナさんとウィナさんは、顔を見合わせている。

 そりゃ、そうか。

「信じていいのかしら」

「イリスは、ゆるいけど、嘘言わない」

 ウィナさんは本人を前に、意外と毒舌だ。

「それに、あそこに、ルーいる」

 そう続けたウィナさんは、睨んでるイリスさんを無視し、アンナさんへ私の胸元辺りを指差している。

 そう言えば、ルーがいたよね。

 最初からルーを見せれば、納得してもらえたんじゃないか、とか、思ったりして。

(ぷぅ? よんだ?)

(お姉さん達に、ご挨拶して?)

 這い出て来たルーを軽くつつき、心の中で話しかける。

(あい!)

 うん、うちの子、可愛い。

 イリスさんは、私の手を握ったまま、ぷぅぷぅ、鳴いているルーを間近から愛でている。

 アンナさんとウィナさんは、少し後ろから眺めて、微笑ましげな雰囲気だ。

 エヴァン?

 苦笑いして、空気になってるよ。

 リュートは……。

 まだ、背後霊なままだね。

 少し経ってから、アンナさんとウィナさんも、私へと近寄ってきて、ペコリと頭を下げてくれる。

「ごめんなさい、疑ったりして」

「ごめん、ね」

「えと、私が逆の立場なら、きっと疑ってるから、気にしないで」

 申し訳なさそうな二人に、私はプルプルと首を振る。

 ケダマモドキの時は、体を振るしかなかったが、人の姿なおかげで、気持ちは伝えやすい。

 信じてもらえて嬉しくなり、ニコリと笑って返すと、アンナさんとウィナさんも突撃してくる。

 あ、リュートが迫力に負けて、剥がれていった。

 アワアワして半泣きなので、あとで慰めておこうと思う。

 そんな事を考えながら、私は受付嬢三人がかりのハグを受け取っている。

 ぎゅうぎゅう抱き締められながら、見事に大中小だな、とか思いつつ。

 え? 何が大中小かって?

 身長だよ、もちろん。

 えっちぃことなんか、考えてませんから。

「むぅ、ハルさん、アンナ並みに巨乳さんです〜」

 されるがままになっていたら、気付いた時には、イリスさんに胸を揉まれてた。

 エヴァンの方から、ブッ、と謎の音が聞こえたけど、気にしなくていいよね?

「や、くすぐったいよ?」

「うふふ、柔らかくて、あったかいです〜」

「……ありがと? イリスさんも、柔らかくて、あったかいよ?」

「人の姿になれるなんて、不思議よね。でも、髪色と瞳は、ケダマモドキの時と同じね」

「うん。自分でも、不思議だけど、みんなと話せるようになれたのは、嬉しいかな」

 イリスさん、アンナさんと、二人になでなでと、撫で回されながら、私はそれぞれと目線を合わせて、言葉を返す。

「ハルさん、エロい」

「……え?」

 不穏な言葉が聞こえたなぁ、と思った時には、私は床へとへたり込んでしまっていた。



「「「「ハル(さん)!?」」」」



 心配そうな呼びかけに、私はへたり込んだまま、大丈夫だと、ひらひら、と手を振る。

「ウィナさん、テクニシャン……」

「あ、そう言えば、ハルさん、いつもウィナに撫でられて、ヘタッてなってました〜」

「駄目よ、あんまり肉食獣の前で、そんな表情しちゃ」

 どんな表情してたかはわからないけど、イリスさんとアンナさんが私を守るように両側から抱き締めてくれる。

「ウィナも、やり過ぎよ?」

「ハルさんが、可愛くて、つい?」

 アンナさんに軽くたしなめられたウィナさんは、悪びれた様子もなく、手をワキワキさせている。

 まさか、人の姿でまで、ヘタらせられるとは、思わなかったよ。

 ウィナさん、テクニシャン過ぎて怖い。

「ハルさん、立てますか〜?」

「お買い物に行くなら、早い時間の方が混まないから、今から行きましょう?」

 イリスさんとアンナさんの手を借りて立ち上がり、私は笑顔で頷いて同意する。

「財布――じゃなかった。組合長、お金ください〜」

「……ください」

 イリスさんとウィナさんが、何でかちょっと前屈みになってるエヴァンを、カツアゲしてる。

 イリスさんに至っては、財布呼ばわりしたよね、サラッと。

 リュートが視界の端で、混じりたそうにチラチラしてるから、ふと思い出した事を伝えておく。

「リュート。エヴァンにお土産渡した? あと、風邪引くから、服を着てきて?」

「あ! はい!」

 キラキラとした笑顔になったリュートは、部屋を飛び出していくと、すぐにバタバタと戻ってくる。

 もちろん、服はきちんと着ていて、手には魔法袋がある。

 何処に買い物へ行くか相談している私以外の女性陣も、なんともなしにリュートの動向を気にしているようだ。

 リュートは、真っ直ぐにエヴァンの前へ向かい、魔法袋から、問題の『アレ』を取り出そうとし……。

 怯えたルーが、私の胸の谷間へ姿を消す。

 女性陣の興味津々な視線の中、リュートが魔法袋から、エヴァンへのお土産を取り出す。



「はい! 魔除けの人形です!」



「あ、あぁ、どうも?」



 期待に満ちたリュートの笑顔に、エヴァンは引きつった笑顔で、お土産を受け取っていた。




 嫌がらせじゃないよ?




 ――たぶん。

嫌がらせじゃないですよ?

本当ですよ?

99パーセント好意ですから(笑)

次回は買い物回予定。

財布はお留守番かな、と。

まぁ、予定は未定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] リュートのハルさんがみんなに奪われて?いる時の狂戦士感。いつかヤンデレにならないかなぁ。 エヴァンの照れる時に耳赤くなるの好きです。 受付3人娘も大好きです。 一番はやっぱりハルさん…と見…
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