お土産買おう。
基本的にイチャイチャしてる回です。
次回でトイカを旅立ち、その次ぐらいでノクへ帰りたいです。
感想返信、遅れていてすみませんm(__)m
やる気をありがとうございます。
ゆっくりですが、返信しますので。
帰りは甲冑アリもいないので、私達は早々と町へと帰り着き、組合支部での話を終えて町中を歩いているが――。
「……報酬貰い過ぎだと思うんですが」
(正当な報酬だからね?)
「でも、いくらハルさんが助けたといっても、元々はノーマン達が貰うべき分まで……」
珍しくリュートが駄々を捏ねてますよ?
理由は、本人も言ってるが、報酬の貰い過ぎ。
実際は、全く貰い過ぎではなく、正当な報酬だそう。
ギルバートさんからも、秘書風な受付嬢のマノンさんからも、後方支援してくれてたイリスさんからも、確認はとってある。
何だったら、少し少なめなぐらいだそうだ。
リュートはボンボン達の分を横取りした、と思っているようだが、それもおかしい。
ボンボン達は、クリスティンの捜索を頼まれていた筈なのに、その依頼を放棄した上、私達の手柄を脅して奪おうとしていた。
つまりは、本人達も自分達が何の手柄を立てていない事を、よーく知っていた訳だ。
そんな奴らに払う報酬……あ、毒で倒した分ぐらいはあるのか。
ちっ、仕方ない。
(リュートが貰ったのは、ボンボン達の分じゃなくて、クリスティンを助けた人への成功報酬。だから、私達のものになるのは、当然だよね。冒険者として)
「それは、そうですね……」
うむ、さすがたんじゅ……げふんげふんっ、いい子だ。納得するのが早いな。
(ボンボン達には、きちんと倒した分がいく筈だから、リュートが横取りした訳じゃないから)
「そうなんですか!? 俺、こんなに……」
そろそろリュートの口を、もふもふっと塞いでおく。
実はここが何処かと言うと、まだ宿にすらたどり着いてない大通りだ。
金貰ったぜ、と叫んでると、変な輩に絡まれるかもしれ……「おい、ずいぶん羽振りが良さそうだな。俺達に寄越せよ」ないとか思ったけど、遅かったね。
甲冑アリを駆除した冒険者達に、結構な報酬が出たって話は、町中に知れ渡ってるみたいだし、見た目弱そうなリュートは、カモネギ状態だよね。
そんな現実逃避をしながら、私は塞いでいたリュートの口を解放し、絡んできた相手を観察する。
どうしよう。
世紀末なヒーロー漫画の、雑魚みたいなヤツらがいる。
人数は三人。
(ウワーコワイナー)
何となく、本当に何となくだが、怖がってみた。
(ぷぅぅ!)
「ハルさんが怖がってるじゃないか!」
うちの子のやる気が上がりました。
結果、見た目だけは強そうだった三人は、ボロ雑巾と化して、連れていかれました。
最後は半泣きでした、と。
ちなみに、リュートの今現在使っている新しい剣は、ギルバートさん経由で、グランドさんが報酬として用意してくれたらしい。
女王アリとの死闘で、折れてしまったの聞いたそうだ。クリスティンから。
喋れないけど、意識はあったんだね、クリスティン。
ボンボンの悪事も聞いていてくれたから、新たな因縁をつけられる事も無かったようだ。
「ハルさん、もう大丈夫ですから!」
(ぷぅ、まま、らいじょぶ?)
(……うん、ありがとう)
悪ノリして、ごめんなさい。
うちの子達のキラキラした眼差しに、私は罪悪感が込み上げ、内心で謝っておく。
「俺達も、お土産買いに行きましょうか」
(そうだね)
リュートは気がかりがなくなったせいか、楽しそうに笑いながら、お土産を探しに出発だ。
イリスさんは、女性陣へのお土産を買うため、別行動をしている。
お土産を買ったら、トイカにもう一泊して、ノクへ帰る予定になっている。
「何買いましょうかね」
(良い物があるといいね〜)
(ぱぱ)
ルー、パパは売ってないからね〜。
「エヴァンさん、喜んでくれるといいですね?」
(……ソウダネ)
街の皆さんに、という訳にはいかないので、宿のおかみさんと留守番組の受付嬢達、それとエヴァンへお土産を買うと決めた私達。
おかみさんと受付嬢達へは、名物らしいクッキーに似た焼き菓子と巨大トマトを買った。
そこまでは良かったのだが、何故かエヴァンのためにリュートが選んだお土産は……。
「魔除けの置物なんて、珍しいですよね」
(そう、なんだ)
(ぷぅぅ〜……)
リュートの抱えている置物に、ルーが怯えてぷるぷるしている。
見た目は、二頭身のナマハゲっぽい。けど、さらにおどろおどろしい。
高さは、三十センチメートルくらい。
材質は木材かな? 木彫りなのかもしれないが、ふさふさした毛は植物っぽい。
全体的に茶色だ。
どうしてこれをお土産に、と思ったのかは、リュートにしかわからない。
でも、キラキラとした笑顔で、見つけました! と嬉しそうに報告してきたリュートには、否と言えなかった。
うん、処理はエヴァンに任せよう。
鑑定してみたけど、呪われたりしてはいないみたいだし。
もふもふ収納するのはルーが怯えるので、魔除けの置物は、リュートの魔法袋へ入る事になった。
(ふぅ、やっぱりお風呂はいいね)
(ぷぅぷぅ)
「疲れがとれますね」
前回は生娘のように照れていたが、だいぶ慣れたらしく、今回は腰タオルでリュートは入浴中だ。
そっちにいったか、って感じだけど、思春期なお年頃だから、無理強いはしない。
公衆浴場ならマナー違反かもしれないけど、ここは宿の部屋備え付けのお風呂だからね。
私とルーは、ぷかぷかとクラゲのように湯面を漂い、時々リュートへ体当たりをしてじゃれる。
「二人共、泳ぐの上手ですね」
ふふ、と笑ったリュートは、手で掬ったお湯を、私とルーの頭からかけてくれる。
(まぁ、浮かんでいるだけ、だけどね)
(ぷかぷか、たのし……)
おや? 何かルーの様子が……って、何か溶けてきてないか!?
(リュート、洗面器に水入れて、ルー入れて!)
ぷぅぅ〜……、と空気の抜けるような声を洩らすルーを、リュートがザバッと立ち上がり、水を張った洗面器で回収する。
「少し長く浸かりすぎましたか?」
(みたいだね。ルー、大丈夫? 気持ち悪いとかない?)
(ぷぅ……)
元気はないけど、頷いたので大丈夫みたいだ。
一応、ルーの浸かっている洗面器に、何個か氷を吐き出しておく。
レッサードラゴンに感謝だ。
スライムからアメーバに退化(?)しかけたルーは、無事にスライムへ戻ったようだ。
のぼせるんだね、スライムも。
「そろそろあがりましょうか?」
(そうだね)
ルーの介抱をしたいので、今回はすぐに水気を吸収し、もふもふっとなった私は、リュートの肩へとよじ登る。
「ルー、大丈夫か?」
(らいじょぶ〜)
らいじょぶらしいです。
あと、ルーを優しい手つきで洗面器から回収するリュートは、兄っぽい。
だとすると、ルーは私をママって呼ぶから、リュートも私の息子に……ならないから。
「ハルさん? ハルさんものぼせましたか?」
(大丈夫だよ。ごめん、少しボーッとしてた)
心配そうに見つめてくるリュートに、ふるふると体を振った私は、目を細めて笑顔を作る。
「今日は、激戦でしたからね」
(そうだね)
予想外に早く終わってしまい、宿に帰って来れちゃってるけど、激戦だったよね。
私達は免除されたけど、野営地に残って、甲冑アリの生き残りがいないか見張っている冒険者もいるし。
「ハルさんが、あの形のままにならなくて良かったです」
(あー、そう言えば、そんな事もあったね)
ある意味、理想な体型になったけど、無事に直ったようだ。
リュートの頭に乗って、髪の毛の水分を吸収しながら、私は笑って相槌を打つ。
直ったからには、もう笑い話だ。
私が笑っていると、少し沈みかけていたリュートも、笑顔になる。
「まだ、ギュッて、抱き締めちゃ駄目ですか?」
(もう少し我慢して)
リュートの全力ハグは、甲冑アリの顎並みに怪力だから。
シュンとしてしまったリュートをもふもふで撫でてると、復活したルーが、自分もとぷるぷるしてアピールしてくる。
リュートの頭から移動した私は、ぷるぷるなルーを、もふもふで抱き上げる。
(のぼせる前に、次は教えてね)
(あい!)
伸ばした触手で、ルーが元気良く挙手をする。うむ、可愛い。
「俺も混ぜてください」
ルーを可愛がっていたら、拗ねたリュートから、ルーごと抱き締められる。
力加減は、今のところ大丈夫だ。
そのまま、みんなでベッドへ転がる。
リュートが全裸のままだったので、ひとまず下着だけは履かせる。
お風呂では恥ずかしがるのに、部屋で全裸なのが大丈夫なのは、何が違うんだろう。
下着だけ履いたリュートは、いそいそとベッドへ戻ってきて、力加減をして私を抱き寄せる。
「ハルさんは、あったかいです」
(ま、もふもふだからね)
これから寒くなるから良いけど、暑い時期はさすがにくっついては寝れないかな。そう思って口を開く。口はないけど。
(暑い時期は別々に寝ようか)
「え!?」
この世の終わりみたいな顔をされたので、真夏だろうが添い寝は決定なようです。
甘えん坊め。
可愛いから許すけど。
それから、めちゃめちゃイチャイチャした後、私達は仲良く『ツ』の字で眠りに就く。
またリュートが部屋の鍵をかけ忘れ、真夜中に侵入してきた泥棒は、全裸で部屋の前に放置しておいた。かける三。
普通、二人目からは、部屋の前に全裸で放置された先客を見て、色々と察するものじゃないだろうか?
あと三人目は、リュートが起きてしまい、半殺しにされていた。
御愁傷様。
トイカ最終日の朝は、宿の従業員の悲鳴で始まる事になった。
眠かったとはいえ、やり過ぎたかな、とは思う。
後悔はしてないけど!
安眠妨害は大罪です。
エヴァンへのお土産は、魔除けの置物。と、ハルで(笑)
夜中に動いたりはしないですよ?
コメントも、ありがとうございます。
他の連載も、待っていてくれる方がいて、嬉しかったです。
マイペースですが、更新していきますので。




