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狂戦士?

リュートの進化(?)先は、ほのぼのとしてそうです。

ハルさんの目覚めそうなお楽しみ、バレバレですよね。(笑)

もう少し、目覚めません。ややこしくなるので。

『鑑定結果

 種族 ケダマモドキ(メス)

 名前 ハル

 レベル 19』

 うん。私は進化してないんだね。

 読めなかった部分は……。

『成長促進……もふもふの中で養った生き物の成長を促進し、潜在能力の開花を促す。ハルがいつもリュートを入れてるから、追加してみたわ』

 えーと、ありがとうございます、で良いのか、これは。

 そう言えば、ルーが特殊個体になったのも、私のもふもふが原因だって言われたね。

『早くレベルアップしてね。お楽しみまで、もう少しなんだから! あと、ハルとルーは、他の人からの鑑定を誤魔化すようにしてあるから』

 何と無く、お楽しみの想像はついてるけど、女神様は私を優遇しすぎなんじゃないだろうか。でも、鑑定を誤魔化せるのは助かるかも。

 私とルーは、たぶん特殊過ぎるだろう。

 鑑定持ちは稀有らしいから、そこまで心配しなくては良いと思うけど、転ばぬ先の杖は必要だ。

 自分の鑑定結果を見つめながら考え込んでいると、もふもふの中でリュートが動く気配がする。

「はる、さん……」

(いるよ。大丈夫だから、ゆっくり寝てなさい)

 昨日は、ベッドがふかふか過ぎて眠れなかったらしいし。

 私とルーは爆睡しちゃってたから、少しと言うか、かなり心苦しい。

 浮気した事ないけど、浮気したら、こんな気持ちになるのかな。

 ま、基本的にモンスターだから、思考は動物寄りなのかもしれない。

 人間だった時、私ドライじゃなかったと思うんだけど……。

 深層心理では、ドライだったのか?

 でも、ドライと言うより、好きと嫌いと興味がないの境界をハッキリさせただけなのかもしれない。

 前世では空気を読んで、曖昧に処理してた部分を。

 今現在の好きは、エヴァンと受付のお姉さん達、それとリュートに優しくしてくれる人達。

 嫌いは、リュートを貶す人。

 興味がないのは、ボンボン一行。うん、シネバイイノニ。

 リュートとルー、女神様は別枠。エヴァンを入れようか悩んだのは秘密だ。

 一応、メスなんで。

 よし、あんまり変化はなかった私はスルーして、最後はリュートだ。

『鑑定結果

 種族 人間(男)

 名前 リュート

 レベル 22』

 20オーバーしてたね、やっぱり。

 さて、特殊スキルは増えてるかな。

 私のもふもふで寝てるリュートは、才能開花しやすい訳だし。

 むふふ、と笑いながら、鑑定結果を目で追っていく。

 相変わらず浮いてる、素直ないい子を読み流し、次の単語を追う。

『毒耐性(小)……ちょっとだけなら、毒を耐えられるわ』

 リュート……。ドクイチゴなんて食べるから……。

 何だろう、さっきシリアスになりかけた空気が、一気に壊れたんだけど?

 特殊スキルって、これが普通なの?

 そう脱力感に襲われながらリュートの鑑定結果を見つめていると、新たに文字が浮いてくる。

『その子も、人間としては特殊なのよ。

ハルに会わなければ、新たに覚えていたスキルは、


 狂戦士


 盲信


たぶん、この二つよ?』


 緊急女神様通信でした。

 って、リュート、何処を目指してたの!?

 絶対に不穏な気配しかしない特殊スキルなんだけど。

『その通りよ。ハルと会わなければ、リュートはあのまま、彼らにこき使われ、気付いた時には、血塗れ、とか二つ名のついた壊れた生き物になってたわ』

 女神様通信を読みながら、私と出会わなかったリュートを想像する。

 厨二っぽい二つ名をつけられ、無表情で人間やモンスターを斬り伏せる狂戦士の姿が、私の脳裏を赤に染める。

(女神様、リュートは私と会えて、幸せなんでしょうか?)

『あら、私にはとても幸せそうに見えるわよ?

狂戦士なんて、あなたの可愛いリュートに似合うと思う?』

 うん、似合わない。

 断言しよう。

 あんな可愛いリュートに、血生臭い二つ名なんて断固拒否だ。

 再びシリアスになりかけた空気の中、女神様へ感謝を告げようとした時、新たな女神様通信が来る。

『大丈夫、戦闘用の特殊スキルも追々覚えるから。

今回のスキルはネタだから、心配しないで(はーと)』

 はーと、って、完全に遊んでるよね、あの人。

 と言うか――。




(マジで遊んでませんか!?)




 思わず絶叫した私は悪くない。


「……何か変な夢見ました」

 珍しく寝起きが悪かったリュートは、目を擦りながらポツリと呟き、私のもふもふに懐いている。

 ちなみに、リュートが抱きつきやすいよう、まだ巨大化したままだったりする。

 ルーはもふもふを出たり入ったりして遊んでる。

 うふふ。文句無しに可愛い。

 ルーを愛でてると、リュートのしがみつく力が強くなる。

「ハルさん……」

 可愛らしい、俺を見てアピールだね。

 うん。行動は可愛らしいけど、しがみつく力が尋常じゃない。

 ギリギリいってるし、私の体型、ヒョウタン寄りになってるからね?

 リュートは私の丈夫さを過信し過ぎじゃないかな?

 大丈夫なんだけどさ。

(それで、変な夢って?)

「俺が血塗れの狂戦士とか、呼ばれてるんです」

(……すぐに忘れなさい)

 ヤバい、夢現に聞こえてたのか。叫んだりもしたからなぁ。

 素直さを披露し、コクリと頷いたリュートの姿に安堵しながら、私はもふもふでリュートを抱き締め返す。

 やっぱり、手足は欲しいかもしれない。

 レベルは足りないけど、こっそり、服を用意しとかないと……。

 リュートを驚かせたいし、エヴァンに相談してみよう。

「ハルさん?」

 エヴァンの事を考えてたら、さらにぎゅうぎゅう抱き締められた。



 瞳孔開いてるよ……。

 狂戦士の名残部分か? 可愛いけど。




「リュート、ハル、おはよう。ちょうど良いとこに来たな」

 朝食を済ませ、冒険者組合に顔を出した私達を迎えたのは、渋面のエヴァンだ。

 何かあったのか? それより、私には気になる事があるけど?

(ルーもいますぅ)

「……あ、あぁ、悪い。ルーも、おはよう」

 私の渋面……伝わるかはわからないけど……に、エヴァンは苦笑しながら、無言でぷるぷるしていたルーに挨拶してくれる。

「おはようございます!」

(おはよ)

 ぷるぷる!

 うむ。今日もうちの子は可愛い。

(あげないからね)

「何をだ、何を」

 エヴァンがじっと見てくるから、思わずそう言うと、呆れ混じりに返され、がしがしと撫でられる。

 私は気持ち良さに目を細めていたが、不意にその手は取り上げられる。

「何か用事だったんじゃないんですか?」

 正確には、リュートが私を抱き締め直し、エヴァンに触られないようにしたのだ。

 うふふ、可愛らしいヤキモチだね。

 何か敵を見るような目をしてるけど。

 いやー、エヴァンの家でのお泊まりの話をしたから、だったりするかな、これは。

「あ、あぁ、そうだった。ついて来てくれ」

 エヴァンは大人な対応でリュートの視線を受け流すと、名ばかりらしい執務室へ向けて歩き出す。

(リュート、行こう?)

「……はい」

 渋々頷いて歩き出したリュートの、むぅ。という擬音が聞こえそうな表情に、私はくすくすと笑ってしまう。

 リュートは、拗ねてる顔も、堪らなく可愛い。

 真似をして、ぷぅ、と膨れているルーも、ね。




「おい、デレッとしてるが、俺の話は聞いていたのか?」

 エヴァンの呆れた声に、私はハッとして辺りを見回す。

 気付いたら、エヴァンの執務室の中だったよ。

(瞬間移動?)

「リュートが普通に抱いて運んでたぞ?」

 可哀想なモノを見る目で見ないで、エヴァン。

「……まぁ、いい。ハルに瞬間移動するような特殊スキルがないのは、リュートから確認済みだ」

(確かに瞬間移動は出来ないね)

 その他に、リュートには話してない特殊スキルもあるけどね。

「でも、ハルさんは他に色々出来ますから!」

 別に凹んでないから、リュートはそんなに張り切ってフォローしなくて良いよ?

(で、私が瞬間移動出来ないのが、問題あるの?)

 張り切りボーイなリュートをなだめながら、私は深刻な顔をしているエヴァンへ問いかける。

「いや。話がややこしくなるから、出来なくて良かったよ」

(意味がわからないんだけど……)

「それを今から説明するぞ? リュートも聞け」

 私をもふもふしていたリュートは、エヴァンの年押しに笑顔で頷く。

 どうやら機嫌は直ったらしい。

「ノクから東へ向かった所に、トイカという町がある」

 説明をしながら、エヴァンはテーブルに地図を広げて、ある一ヶ所をトントンと指で示す。

「ここには冒険者組合はないが、出張所がある。そこから救援要請があった」

「救援要請、ですか?」

(モンスターの襲撃でもあったの?)

 真剣な会話をする二人の脇で、もふっとする私と、地図をはむはむするルー。

「まだ襲撃まではいかないらしいが、大きな巣が見つかったそうだ」

 エヴァンはシリアスな顔を崩さないまま、小さく、こら、と叱って、地図をはむはむしていたルーを回収し、私の上へと乗せる。

「巣ですか? 何の?」

「甲冑アリだ」

(何か丈夫そうな名前だね)

 ルーをあやしながら、私は重々しいエヴァンの言葉に、軽い相槌を打つ。

「生半可な腕じゃ、剣が折れるな。魔法にも耐性がありやがるし、タチが悪いんだよ」

(それ、親近感覚えるけど)

「ハルみたいに話が通じるなら、折り合いもつけられるがな」

 苦笑して肩を竦めたエヴァンは、ルーを乗せた私をがしがしと撫でてくる。

(残念ながら、私も意志疎通が出来たモンスターは、ルーだけだしね)

「基本は駆逐するしかないんだよ。町の近くだからな」

(じゃあ、リュートに用って、甲冑アリの駆除?)

「俺は構いませんが……」

「あー、それも頼みたいんだが、トイカの町でちょっとした問題が起きてるんだよ」

 珍しく歯切れの悪いエヴァンは、私をがしがしと撫でながら、リュートを真っ直ぐに見つめている。

「問題、ですか?」

「……トイカの町で、リュートと名乗る冒険者が、色々と問題を起こしているらしい」




 やっと吐き出されたエヴァンの言葉を理解し、そりゃ歯切れも悪くなるわ、と私は遠い目をしながら思っていた。




「へぇ、俺と同じ名前の冒険者なんですね」




 少々抜け……ゴホンゴホン、素直でいい子なリュートだけが、事態を把握出来ず、ニコニコと笑っているけど。


定番(?)な、偽者現る!です。


リュートは、素直ないい子なんで、同じ名前なんですね、で終わらせます。

その分、ハルさんが突っ込むんでバランスは大丈夫かと。

やっと、冒険者らしく、町を離れそうです。

でも、ホームタウンはノクなんで。

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