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一気に色々ありまして。

サブタイトルが思い付きませんでした。


 ただ今、私達――どら息子へ肩を貸したリュートと、それを守っているエヴァン。で、リュートの白アフロな私は、中ボス部屋の前を通るルートを進んでいた。

 ネズミ顔男? ヤツなら、視界の端をチョロチョロしてますけど?

 リュートは守られるだけじゃなくて、ちゃんとどら息子を守ってる。ネズミ顔男も、そこを見てほしいものだ。

 どら息子のリュートを見る目、明らかに変わってるぞ?

 そうだろ、そうだろ。うちのリュート、強いだろ?

 えっへん、と胸(無いけど)反らしてたら、リュートの頭から落ちかけた。

「ハルさん、気をつけてください」

(うん、ごめんね)

 苦笑したリュートから、やんわりと叱られました。反省してます。

 どら息子は、あがあがなんだから、無理に会話へ参加しないように。

 そう言えば、どら息子は戦闘に参加してないから疲れてないんだと思ってたけど、普通に体力だけはあるんだな。

 今も、リュートのペースに付いて来れてるし。

 おかげで意外と早く脱出出来るかもしれない。

 そんなのんびりした考えは、あっという間に吹き飛びましたけど、何か?




 説明をするのが面倒臭いので一回端折って結論から言うと、私達は中ボスと戦う事になった。

 別にショートカットしようぜ? とか、ヤンチャをした訳ではない。

 主な原因はネズミ顔男。もう過去の人だけど。

 最初から、違和感はあった。

 まるで、待っていたみたいなタイミングで現れたし。

 普通、仲間の悪行がバレたら、逃げ出しそうなもんだよね?

 ボンボン達みたいに、本気で弱くて寄生したいならともかく。

 ネズミ顔男は、気配を殺すの上手かったし、普通に単独で脱出可能に見えた。それなのに、へりくだって私達の後ろをピッタリついてきていた。

 最初から、狙いは一つだったんだ。



「何を、しやがる!」



 ネズミ顔男の投げたナイフの一本を弾き、エヴァンが低く恫喝する。

 狙われたのは、リュートかどら息子。

 庇った時に掠めたのか、エヴァンの脇腹から血がにじんでいる。

「……仕方がないだろ? そいつが生きてれば、俺達が依頼を乗り換えたってバレるじゃないか」

 卑屈に笑うネズミ顔男が嘯くのは、あまりにも自分勝手な理論だ。

 さすがのエヴァンも、複数のモンスターを相手にしていた所を背後から、となると完全には防げなかったんだろう。

 それでも、どら息子は無傷なんだし、上級は伊達じゃないよね。

「カネノ様を始末するために、俺達に付いて来たのか」

 リュートが年上相手に敬語じゃなくなったって事は、完全なる敵認定だ。

 モンスターは始末したが、血の臭いで他のモンスターが寄ってくるかもしれない。

 リュートはそれに対処するため、どら息子を通路の端へ座らせ、ネズミ顔男と向き合うエヴァンと並び立ち、どら息子を背中に庇う。

 私? 私は嫌だけど、怯えるどら息子の近くへ着地し、周囲を警戒する。

 いざとなれば、盾にぐらいはなれるから。

 これで、安心だろうと、少し油断しかけた、私のもふもふセンサーに、ぞわ、と何かが引っかかる。

 一瞬、どら息子か!? と思ったが、どら息子はどら息子だけど、常識だけはある。

 実際、興奮して唾飛ばしたり、私を買おうとしたりはしたが、無理矢理リュートから奪おうとはしなかった。

 今回も、寒気の正体はどら息子ではなく、音も気配もなく忍び寄っていた。

(リュート、上!)

「エヴァンさん、上です!」

 私の警告を疑う事なく、瞬時に反応したリュートは、エヴァンへ警告を発しながら、自らも素早く動いていた。

「っち!」

 手負いのエヴァンも、即座に状況を判断して、自らを捕らえようとしていた糸を避ける。

 反応出来なかったのは、ネズミ顔男だけだ。

 私達を薄ら笑いで見ていたネズミ顔男は、抵抗する間なんてなかった。

 拍手したくなるぐらいの手際で、ネズミ顔男は薄ら笑いのまま、糸でグルグル巻きにされて、何処かへ引き摺られていった。

 うん。いたのは、大きな土グモでした。合掌。

(悲鳴上げる間もないって……)

 なんて、感心してる場合じゃなかった。

 こっちは、こっちでヤバいんだよ。

「あががが!」

(落ち着いて! リュート達から離れないで!)

 どら息子の事は、私が守ったんだけど、一回糸に捕まったのが悪かった。

 糸自体は、吸収してしまい無力化出来たけど、吊り上げられた私を見て、どら息子は私を守らなければと、パニックになったらしい。

 もー、どら息子はどら息子らしく、守られていれば良かったのに。

 冒険者を目指しただけあって、無駄な正義感はあるんだね。

 歩けるぐらいに麻痺が抜けてきてたのも、悪い方へ転がった。

 止める間もなく、私を抱えたどら息子が開こうとしたのは、手近にあったダンジョンに不似合いな重厚な扉。

 重厚な見た目だが、簡単に開いてしまい、私を連れてよろめくどら息子を招き入れる。

「おい、待て!」

「そこは駄目です!」

 ネズミ顔男に襲われた時より慌てた表情で、リュートとエヴァンが駆け寄って来て、私達を追いかけ、やけにゆっくりと閉まる扉の隙間へ飛び込んでくる。

「あがぁ?」

(なに、トラップ部屋なの?)

 リュートもエヴァンも、閉まった扉の前で、かなり引きつった顔してるけど。

 あと、なんか、どら息子、あがあがの方が、ゆるキャラみたいで愛嬌あるな。

 口だけ麻痺させとく方法ないかな。

 そんな呑気な事を考えていると、リュートとエヴァンが、私達と言うかどら息子を背中に庇い、部屋の奥を見据えてる。

 今さらなんだけど、この部屋は何なんだ?

 リュートとエヴァンの緊張具合から推測すると、ここ普通の部屋じゃ、ない……?

(リュート、まさか、ここって……)

「はい。中ボス部屋です。一度入ったら、部屋の主を倒すまで出られない」

「あが!?」

 良かった、どら息子は知らなかったんだな。確信犯なら、さっき収納した山々ナメクジぶつけてたからね?

 何かあがあが言ってるけど、多分謝ってるみたい。表情からすると。

「カネノは、ハルを抱いて下がってろ。お前まで守れる自信がないからな」

 エヴァンの言葉に、私は内心首を捻る。

 鑑定したエヴァンのレベルからすれば、いくら中ボスとはいえ、楽勝だろう。

 しかも、今ならリュートもいる。

 正式な鑑定してないから本人すら知らないが、もうすぐレベルは20を越える筈だ。

 先日、寄生したボンボン達を振り切った冒険者パーティーは、平均でレベル20後半だった事を思えば、エヴァンとリュートなら苦戦しないんじゃ……。

「グアァァァ!」

 私の思考を遮ったのは、奥行きのある部屋、まさに奥の方から聞こえてきた咆哮。

 中ボスってトカゲじゃないの? トカゲって、鳴くの? 異世界だから?

 反射的にリュートとエヴァンを見る。

 リュートは緊張してるからだろうが、何かエヴァンの顔色が悪い気がし、気になった私は、鑑定してみる事にした。

 名前やレベルに変化はなかったが、鑑定結果の一番下、見慣れたくないけど、見慣れた文字が浮かんでいる。

『状態異常 猛毒』

 そりゃあ、顔色も悪くなるわ。って、え? まさか、毒ムカデに?

 いや、リュートもエヴァンも、掠り傷すら負わなかった。

 唯一、エヴァンが怪我したのなんて、さっきのネズミ顔男の不意打ちぐらい……。

 また思考を遮るよう、聞こえて来たのは、ズシンズシンという、中々な重量級な足音。

 姿を現したのは、ゾウぐらいの大きさの……。

(緑色したトカゲ?)

 自分で言っといてなんだけど、明らかにこれじゃない感があり、私は即座に鑑定する。

『鑑定結果

 種族 レッサードラゴン

 ダンジョンの中ボス。

 羽がない、地上に住む小型のドラゴン。

 弱点は眉間よ。

 状態異常にも弱いからね』

 そりゃ、トカゲに見えない訳だ。これ、レッサーだけどドラゴンだし。

 だから、エヴァンは変な言い回しして、リュートは悩むような顔してた訳だ。

(リュート、弱点は眉間だよ!)

「はい!」

 せめて、手助けになれば、と思いを込めて、女神様情報を叫ぶ。

 エヴァンの状態異常は、知らせても仕方がないし、動ける間は頑張ってもらおう。

 動けなくなったら、私が回収するってのも、ありか?

 その前に、猛毒って死ぬんじゃ?

 でも、エヴァンは顔色が悪いぐらいで、元気に跳び跳ねてるし。

 あ、リュートが尻尾を斬り落とした。

 レッサードラゴン、怒ってる、怒ってる。って、まさか、あの体勢は……。

 エヴァンの体調は気になったが、危なげ無い二人の連携に、ちょっと観劇気分だった私は、慌ててどら息子の腕から飛び出し、リュートの元へと転がる。

(リュート! 投げて!)

 エヴァンは少し驚いたが、リュートの方は躊躇う事なく私を鷲掴みにし、レッサードラゴンの大きく開いた口へと放り込んだ。

「あがっ!?」

 リュートの暴挙しか見えない行動に、背後でどら息子が卒倒したみたいだけど、気にはならない。

 火グマより的はデカいから、今回は計算通り、もふもふした私の体は、レッサードラゴンの口へジャストフィットだ。

 間を置かず、体に感じるのは熱ではなく、刺すような冷気だ。

(アイスブレスだったみたいだね)

 歯に染みたのか、冷気が逆流したのかは謎だが、レッサードラゴンが暴れ出し、私を吐き出そうとする。

(そうはさせないから!)

 あなたは状態異常に弱いんでしょう? なら、こうすれば?

 私が放出したのは、山々ナメクジを食べた時に、とりあえず収納状態にしてあった粘液だ。

 効果は、どら息子を見れば、一目瞭然だね?

 しかも、口の中なら、一気に吸収されるから、余計効果的だろう。

 私の目論み通り、レッサードラゴンは自らの体重を支え切れず、よろめく。

 私はズボッとレッサードラゴンの口を抜け出し、油断なく剣を構えてるリュートとエヴァンを振り返る。

(今だよ!)

 私の声が聞こえないはずのエヴァンも、リュートと同時に反応し、明らかに動きが鈍ったレッサードラゴンへ止めを刺しに行く。

 私は、まだ僅かにピチピチしてた尻尾を、いそいそと収納する。

 気にしないで、非常食だから!

 だ、だって、鑑定結果の下の方に、人間でも焼けば可食、美味って書かれたから……。

 何かレベルアップしたら、鑑定結果もレベルアップしたみたい。

 主に食方面で。




 さすが、女神様。

 ある意味、裏切らないです。




 私が感心している間に、決着は着いたらしく、ズシンッとレッサードラゴンの体が重い音を立てて地面へ沈む。




 それを見届けるように、エヴァンの体もゆっくりと、地面へ崩れ落ちた……。


鉄板ネタをやろうか悩みました。


「ここは俺に任せて先に行け!」


止めました。何か、エヴァンの死亡フラグしか浮かばなかったので。


感想、評価ありがとうございます。

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