ご飯食べて寝てた。
そんなまったり回。
感想欄で質問ありましたが、じゃがいもっぽいじゃがいもは、じゃがいもです。
よく異世界もので、地球ではリンゴって言われてたのに別の名前だ! とか、リンゴの見た目なのに、味はリンゴじゃない! とかあるイメージだったので、そんな小ボケなつもりでしたm(_ _)m
「本当に、すまなかった!」
食事の場に向かう間、ずっとこんな感じなエヴァンに、私は仕方ないなぁと駄々漏れないようにため息を吐く。
ルーも私の肩の上で、ため息を吐く真似をしてる。可愛いなぁ、うちの子。
私は振り返ると、またすぐにでも土下座しそうな表情で付いてきてるエヴァンを、ちょいちょいと手招きする。
「な、なんだ?」
「……これでおあいこって事で」
緊張した面持ちで近寄って来たエヴァンへ手を伸ばした私は、エヴァンの胸辺りを遠慮なくペチペチと叩く。
「いやー、なかなかの胸筋ですなぁ」
「な、いや、それは……」
軽く目を見張りどもるエヴァンに、私はくすくすと笑って軽い足取りで歩き出す。
「相手がエヴァンだったから、そんなに気にしてないよ」
方向転換してしまった私は気付かなかった。
取り残されたエヴァンが、顔を手で覆って呻いた事を。
「気にしてない……そういう対象じゃないってことか? いや、でも、俺だったからって……」
何かブツブツ言ってるのは、それとなく聞こえたけど。
●
フリーズしてたエヴァンは、ちょい大きくなったルーに力技で引っ張ってもらい、無事全員でテーブルについてご飯タイムになった。
メリーさんも一緒が良かったけど、予定があるからって、さっき帰っちゃった。せっかくだから、みんなで食べたかったので残念だ。
「ハルさん、ハルさん! 準備出来てます!」
キラキラ笑顔で見て見てアピールしてくるリュートに促されテーブルの上を見ると、私とメリーさんの力作が綺麗に盛りつけられ並んでいる。
すみません、話を盛りました。
私もほんの少し手伝った、メリーさんの力作が並んでいる。
脳内のナレーションに、謝って訂正しておく。
誰に聞こえる訳でも無い?
私の場合、色々駄々漏れるから、念のためだ。
「いつも通り美味そうだが、ハルも手伝ったんだろ?」
やっと普段らしさを取り戻したエヴァンが、ソファへと腰かけて私へニッと笑いかけてくる。
うん、傷があっても平常運転なイケメンだね。
「ハルさんの手料理、とっておいてもいいですか?」
こちらも相変わらずのキラキラ美少年だね……って、なんか変な事言い出したよ。
「腐るから食べて欲しいなぁ。リュートが食べてくれるなら、また私作るから。ね?」
「はい!」
嬉しそうに笑って頷いたリュートは、早速スープを食べ始め、私が刻んだ野菜を笑顔で見つめている。
一人で作るから、ここまでは上手には作れないだろうけど、リュートなら食べてくれるよね。
「ハルさんの切った野菜、ハルさんのつけた味付け、ハルさんの焼いた肉……」
今もブツブツ言いながら食べてくれてるし。
「美味しいな。……このスープ、俺の好物なんだよ」
エヴァンにも好評らしい。
私は安堵しながら、ルーにスープを皿ごと食べさせる。
(まま、うまー)
(いっぱい食べて、大きくなるんだよ)
言葉通り受け取ったルーが巨大化しかけたのは、なかなかの修羅場だった。
●
(ごめ、なさいー)
(私の言い方が悪かったの。ルーは悪くないよ)
反省して高速でブルブルしてるルーを膝上に乗せて撫でながら、食事を終えた私はソファで寛いでいた。
片付けをしようと思ってたんだけど、リュートとエヴァンが、片付けは俺達がするから、と言ってくれたので遠慮なくのんびりしてる。
二人とも、美味しい美味しいって残さず食べてくれて、嬉しかったなぁ。私は手伝っただけだとしても。
次は、私一人で一品ぐらい作って、二人へ食べてもらいたいから、頑張ろ。
お腹いっぱい(気分)だし、だんだん眠くなってきた。でも、さすがに他所様宅でソファへ寝転ぶのははしたないよね。
うとうとしてると、高速ブルブルを止めたルーが、ゆらゆらとしながら私を見上げている。
もにもにと揉んであげてると、嬉しそうにぷぅぷぅ鳴いて可愛い。あと、私は気持ちいい。
なんかあれみたい。スクーターじゃなくて、スクリーンでもなくて……スク何とかってやつ。もにもにしてるストレス解消グッズみたいなの。
ルーの感触を楽しんでいた私は、妙案を思いついて、ルーをソファへ降ろす。
(ルー……これぐらいになって、枕になってくれる?)
ルーをクッションにしたら最高なんじゃ、って、思っちゃったんだよね。
(いーよー)
ルーは嫌がる様子もなく、逆に嬉しそうな声でぷるぷると震えると、私が手で示したサイズまで体を大きくしてくれる。
(ありがと、じゃあ、ちょっと乗せてね?)
手でたゆたゆとルーを軽く撫でて一声かけてから、私はルーへ上体を預けるようにして体を傾けていく。
(まま、だいじょぶ?)
(ふふ、大丈夫だよ。少し疲れたから、こうして休ませてね。ルーこそ、重くない?)
(まま、かるい。はね、みたいー)
おお、ルーが殺し文句みたいなこと言ってるよー。リュートが言ってるのを覚えたのかな。
(ありがと。ルーもぷるぷるしてひんやりで気持ちいいよ)
もふもふ派な私だけと、ルーのぷるぷるボディも捨てがたいよね。
ついでに言うと、鱗も嫌いじゃないよ?
ナメクジみたいなヌルヌル系は、微妙だけど。
そんな事をぼんやりと考えながら、少しだけ休もうと目を閉じ──ハッとして目を開ける。
熟睡してたっぽいけど、まだちゃんと人の姿だ。
そこまで確認した私は、枕にしていた筈のルーの上ではなく、ベッドへ寝かされている事に気付いて目線で辺りを窺う。
(ルー? 私寝てた?)
(まま、ねたー)
ルーを呼ぶとすぐに返事があり、シーツへ広がっている人の姿でも手触りのいい髪の中から、ポコッとルーが出てくるのが見えた。
おぅ、ファンタジーというかマジックみたい。平らになってるとこから、ルーが出たよ。
妙に感心しながら私は体を起こして室内を見渡す。
ベッドサイドのランプだけが照らすそこは、見慣れたエヴァンの寝室ではなく、高そうな調度品のある客間らしき部屋で。
(ここ、私とリュートが使わせてもらってる部屋かな?)
「そうですよ」
ルーが答えてくれる前に、もわ、と湯気の気配と共に答えが返ってくる。
ルーがついに声を出した──訳ではなく、リュートの声だ。さすがにリュートのの声を聞き間違える訳はない。
「ごめん、私寝たみたいで……って、リュート、拭いてから出てこようね?」
声の聞こえた方を向くと、裸族なリュートが風呂上がりなままの姿でこちらへ歩いてくるところで、思わず小言めいた言葉が口をついて出る。
見苦しい訳ではないが、水滴がポタポタ垂れていて気になる。
(ルーお願い)
(あい)
私の髪からぬるんと這い出したルーが、元気よくたゆんたゆんと跳ねながら、リュートの作った水滴の道を逆へと辿って浴室へと向かっていく。
ルーが跳ねた後から、水滴の跡が消えていく。
うん、うちの子お利口。
(ありがと、ルー)
「リュート、風邪引くよ?」
「だって、ゆっくりしてたら、ハルさんがエヴァンさんの所へ行っちゃうかと思って……」
しゅんとした表情のリュートを、いつも通りもふっとしようとして、そこで私は自分が人の姿だった事を思い出す。
きょろきょろと辺りを見回すと、ベッドの脇の椅子にバスタオルが掛けられている事に気付き、手を伸ばしてバスタオルを手に取る。
「そっか」
可愛いなぁと思いながら、私はしゅんとしているリュートに頭からバスタオルを被せ、その体を遠慮なく拭いていく。
「ごめんなさい……」
「怒ってはないよ。でも、リュートが風邪引いたら嫌だから、今度からはちゃんと拭いてから出て来てね」
パンツだけは履いててくれて良かったけど。
(まま、おわたー)
(ありがと、ルー)
私がリュートを拭いてあげてると、一仕事終えたルーが、ボフッと私の髪へ飛び込んで報告してくれる。
「ルー、ありがとな」
ルーにきちんとお礼を言うリュートは、やっぱりいい子だ。鑑定に出るぐらいだもんね。
「はい、終わったよ」
「ありがとうございます」
そのまま抱きついて来ようとしたリュートの腕を、サラッと避ける。
「ハ、ハルさん……」
この世の終わりみたいな顔されたけど、乙女としては仕方ないのだよ。
何キャラだよ、と脳内でセルフ突っ込みしながら、私は髪からもふっとお風呂セットを吐き出す。
なんでかさっき入ったばかりのルーも一緒に出てきたけど。
「私は、まだお風呂入ってないから」
汗かいたりはしないっぽいけど、やっぱり体臭とか気になっちゃうよね。
「ハルさん、いい匂いしかしません!」
「私もお湯に入ってのんびりしたいの。駄目?」
あざといかな、と思いながらも、上目遣いでリュートへお願いすれば、断られる訳もなく──。
(ルー、熱くない?)
(らいじょぶー)
私とルーは、のんびりと湯船に浸かっていた。
もちろん全身を洗ってから、大きなお風呂をルーと二人占めでゆっくりさせてもらっている。
ルーは時々私へよじ登ったり、滑り落ちたりして、楽しそうに遊んでいる。
頭の上から胸の上に落ちて、たゆんとお湯へ落ちてきたルーを両手で掬い上げてみる。
(楽しい?)
ルーは少しきょとんとした様子でぷるぷるしていたが、私の問いかけに答えるように嬉しそうなぷるぷるへと変わる。
(まま、いっしょ、るー、たのし)
(そっかぁ。私もルーとお風呂楽しい)
リュートやエヴァンも一緒だと、最近はなんかドキドキもするから少し落ち着かないし。
洗ってもらえるのは楽だけど、とか思っちゃうのは、すっかりケダマモドキな思考かな。
ただの横着な可能性もあるけど。
ルーの高速嬉しぷるぷるで、湯面がちゃぷちゃぷと揺れている。
(まま、まま、るー、ままのかみあらうしたいー)
(いいの? じゃあ、お願いしようかな)
体は洗ってから入ったけど、なかなかな長さのある髪はまとめてアップにしただけで、まだ洗ってなかったのをルーは気付いてたらしい。
ルーを抱えて湯船から上がると、すぐにルーはつるりと私の腕から抜け出し、うぬーと可愛らしいかけ声と共に変形していく。
どうなるのかな、と思って見守ってると、ルーから腕っぽくなった触手が伸びてくる。
じっと見てると若干ホラーなので、私はルーへ背中を向けて、木で出来た風呂椅子へと腰かける。
(お願いします。シャンプーとかわかる?)
(らいじょぶ)
頼りになる返事の後に、
(おゆ、かけるー)
と、声と一緒に伸びたルーの一部が、シャワーを掴んで器用にお湯をかけてくれる。
ルーに任せても大丈夫そうなので、私は目を閉じて大人しく洗われる。
(ルー、上手だね)
(ぷっぷぅ〜)
洗う力加減もバッチリなルーを誉めると、嬉しそうな思念がバンバン伝わってくる。
ついでに言うと……、
「ハ、ハルさん……っ」
浴室の外から、寂しげなリュートの声もバッチリ聞こえて来てるんだよね。
(まま?)
(何でもないよ)
メリーさんの有り難いお言葉に従い、スルーしてしばらく待たせて──、
「ハルさん……」
結局無視出来なくて髪を洗い終わったら、すぐあがることにした。
まったりし過ぎて、話が全く進まなかったです。
あと、リュートといちゃいちゃさせる予定が、ルーといちゃいちゃしていたのは謎。




