362 漆黒の瞳②
「母さんを復活させる……!? 一体、何の目的で……!?」
自分の頭の中で、この少年は危険だと警告音が鳴り響いている。
だが、その言葉の真意を確かめなければならない。
不気味な笑みを浮かべたままの少年からジリジリと距離を取り、剣先を向ける。
「フフ☆ そんなに警戒しないでよ~! ノーマンはね? ずぅ~っとキミの母親を想っていたんだよ? それこそ、復活させたいと悪魔に願っちゃうくらいにね~?」
少年はオレの後ろにある絵画を見上げた後、足元に置かれた二体の白骨遺体に視線を移した。
「……その遺体は?」
そんな事は有り得ないと、オレの心臓が早鐘を打つ。
剣を握る指先が冷たい。
それを嘲笑うかの様に、真っ黒な瞳が少しだけ弧を描いた。
「キミがいま、頭に思い浮かべた人で正解だよ☆」
「───……!」
魔法陣の上に横たわる二体の白骨遺体。
これがもし本当に母さんだとしたら、もう一体は……?
「教えてあげようか?」
「───ッ!?」
気を緩めたつもりは毛頭ない。
だが、瞬きをしたほんの一瞬、ニヤリと笑みを浮かべた少年の顔がオレの鼻先すれすれに現れた。
マズい
そう思った次の瞬間、青白い光と共に夥しい数の黒い触手が少年を捕らえようと一斉にオレの足元から飛び出した。
足下にはオレを守ってくれたレティのハンカチ。視界が一気に黒に染まる。
そしてすぐ傍らで声が響いた。
「ちかづかないで」
「レティ!?」
今まで聞いた事のないレティの冷ややかな声。
その声色に、ぞわりと背筋が寒くなる。
「アハハ☆ 御挨拶だねぇ~!」
「うるさい」
レティが放つその触手から逃れる様に、少年は部屋中を移動している。それを追う触手達。激しい衝撃に壁が削り取られ、土埃が部屋を舞う。
そして少年の隙を突き、オレの体を覆う様に眩い光が放たれた。
「どこに行っても無駄だよ~?」
少年の嘲笑うような声だけが、オレの耳にねっとりとこびりついて離れなかった。
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