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341 迎えに来たのは……

短いですが、更新しました。

久々のあの人達が登場です。


「おにぃちゃん、これももっていく?」

「うん! 役に立つかもしれないから持って行こうかな!」


 今日は王都に来た僕の一番の目的、お城での料理教室当日だ。

 朝食を食べ終えてから、並べていた調理器具と食材をトーマスさんの魔法鞄(マジックバッグ)へと詰めていく。


《 あ、あれは~? 》

《 それももっていこ~! 》

「ユイトくん、これも入れとくよ?」

「ありがとう! あ、あれも持って行こうかな~!」


 アイヴィーさん達のお店で購入したパスタに、ローレンス商会で購入した食材も忘れずに……。そしてレティちゃんとニコラちゃんと作った手土産用のお菓子も確認して……、っと。


「ユイトく~ん! お迎え来たわよ~!」

「わっ! はーいっ! 今行きますっ!」

「たいへん!」

《 もうじかん? 》

《 いそがなきゃ! 》

「ユイトくん、忘れ物は?」

「大丈夫! ……なハズ!」


 お迎えの声にバタバタと忙しなく準備をし、手伝ってくれたレティちゃんとニコラちゃん、ユランくん、そして僕の肩に乗ったノアと共に慌てて玄関に向かうと、オリビアさんが笑いながら玄関先で待ってくれていた。


「ふふ、皆そんなに焦らなくても大丈夫よ?」

「だって、待たせちゃうと思って……」

「ほら、トーマスものんびりしてるでしょ?」

「「「あ」」」


 オリビアさんが見つめる先に、メフィストを抱えたトーマスさんの談笑する姿が。そしてその隣には……、


「アーロさん! ディーンさん!」


 そこには、久し振りに会うアーロさんとディーンさんが立っていた。


「ユイトさん! お久し振りです!」

「レティちゃんも元気そうだな!」

「御二人もお元気そうで何よりです!」

「あえて、うれしい!」


 レティちゃんと一緒に慌てて駆け寄ると、二人とも満面の笑みで迎えてくれる。以前に見ていた鎧姿ではなくラフな軽装姿。

 そしてその足元には見慣れた小さな影が。


「ハルト……、ユウマ……」

「ひっついてる……」


 アーロさんの足元にはハルト、ディーンさんの足元にはユウマがぎゅうっと抱き着いていた。その様子に僕もレティちゃんも顔を見合わせる。


「ハハハ! こんなに喜ばれると嬉しいものですね!」

「ユウマくんは少し大きくなったかな?」


 二人とも嬉しそうに目を細め、ハルトとユウマをひょいと抱きかかえる。会えて余程嬉しかったのだろう。よく見るとハルトの頬は薄っすらと赤らんでいた。


「ぼく、いっぱい、けいこしました……!」

「うん。手の平が硬くなってる。たくさん頑張ったみたいだね?」

「はい!」


 アーロさんはハルトの手を握り、頑張ったねと頭を撫でている。その後ディーンさんも頭を撫で、ハルトは満足そうにアーロさんにしがみ付いていた。ユウマも撫でてもらいとても嬉しそう。そんな弟たちの様子を見てか、二人とも顔がデレッとしかけている……。


「あーろさんも、でぃーんさんも、きょうはいっしょに、あそべますか?」

「私達は非番……、休みだから、今日一日予定は空いてるよ」

「ほんとうですか? じゃあ……、また、けいこ、してくれますか?」

「勿論!」

「ハルトくんがどれだけ成長したか、我々に見せてもらおうかな?」

「はいっ! がんばります!」


 まさかこんなに懐かれているとは思わなかったのか、二人ともずっと満面の笑みだ。


「御二人とも、今日は非番なんですか?」

「あぁ。そのおかげでこうやって迎えに来るのを交代してもらえたんだ」

「本当は第二小隊の隊員が来る予定だったんですよ」

「えぇ~!? そうなんですか……!? わざわざ、ありがとうございます……!」


 まさか迎えに来てくれるのがアーロさんとディーンさんだとは思わなかった。それも交代してもらったと聞き、僕とレティちゃんはまた顔を見合わせる。

 トーマスさんもオリビアさんも笑いながら二人にお礼を伝えていた。二人とも私達が会いたかっただけだからと言ってくれたけど……。

 確かライアンくんも今日は休みだと言っていたし、ハルトとユウマにしたら今日は一番楽しい日になるかも知れないな。


「クルルル~!」


 すると、使用人のお兄さん達が準備してくれていたサンプソンの馬車の中から、ドラゴンが楽しそうに声を上げる。まるで、まだ行かないの? と言っているみたい。そして幌の上にはセバスチャンも。


「おぉ~……! この子が陛下が言っていたドラゴンですか……!」

「人懐こいな……!」

「クルルル!」


 ドラゴンは初めて会うアーロさんとディーンさんに興味津々。ハルトとユウマを抱えているからかも知れないけど、警戒心が全くないな……。これはこれでちょっと心配だけど……。


「このドラゴンの主は……」

「あ、ボク……。私はユランと申します」

「私はフェンネル王国騎士団第一小隊隊員、アーロと申します」

「同じく、フェンネル王国騎士団第一小隊隊員、ディーンと申します」


 丁寧な挨拶の後、二人は顔を見合わせユランくんの前へ。


「「……触っても?」」


「あ、どうぞ!」

「「やった!」」


 ハルトとユウマを抱えガッツポーズをするアーロさんとディーンさん。今日は非番だからか、服装も相まって随分とくだけている感じがする。鎧を着ている時はキリッとしていたからなぁ~。


「では、失礼して……」

「触れてもいいかな……?」

「クルルル~?」


 近付く二人に首を傾げていたけど、警戒もせず大人しく撫でられているドラゴン。撫で方が優しいのか、気持ち良さそうに目を瞑ってしまった。


「す、スゴイ……! ひんやりとしているんですね……!」

「ドラゴンを撫でているなんて夢の様だ……!」


 皆に自慢しよう! とはしゃぐ二人を見て、僕達は思わず笑ってしまった。

 

 出発する予定は少~しだけ遅れてしまったけど、年相応な二人を見れたので問題は無し。ドラゴンを堪能して満足したのか、やっと皆の暖かい視線に気付き照れていたけどね。


 そして僕はこれから向かうお城に緊張しつつ、お城の人達に美味しいと言ってもらえる様に頑張ろうと気合を入れ直した。



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