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252 らぶらぶ

今回は短めです。


「ご飯出来ましたよ~!」

「「「はぁ~い!」」」


 コンラッドさんと一緒にテーブルに作った料理を並べ、ソファーの周りで遊んでいるイドリスさんたちを呼ぶ。メフィストはイドリスさんが全力で遊んでくれたおかげか、とってもご機嫌……、というより眠そうだ。


「おぉ~! すっげぇ豪華だなぁ~!」

「こんなに作ってくれたのか! スゴイな二人とも!」

「まぁ~! とっても美味しそう!」


 テーブルに並んだ料理を見て、皆ホォ~、と感心しきり。ハルトとユウマ、レティちゃんも早く食べたいとソワソワしている。


 広いテーブルに並んでいるのは、皆の大好きな鶏の唐揚げ(フライドチキン)

 そして少し大きめに作ったマルゲリータのピザと、トーマスさんも好きな照り焼きチキンのピザ。

 イドリスさんが用意してくれたお肉で焼いたサイコロステーキに、おろしソースと、以前レティちゃんとユウマも作った事のある焼き肉のタレの二種類をお好みで。

 パスタはベーコンとポルチーニ茸のクリームパスタに、お店の定番人気メニューのミートパスタ。

 野菜も食べてほしいから、彩り良く盛り付けた棒棒鶏(バンバンジー)サラダを大皿に盛り、ミキサーにかけた胡麻(セサミ)醤油(ソーヤソース)、お酢に砂糖にセサミ油を混ぜた手作りソースをたっぷりかけて。

 そしてユウマの好きなとうもろこし(マイス)のポタージュに、僕が食べたかったオムライス。ふわふわ卵もいいけど、今日のは薄焼き卵で包んでいる。


「セバスチャンとノアたちには、ちゃんと別に用意してるからね」

《 それは楽しみだ 》

《 ぼくも~! 》


 喜ぶノアたちを、コンラッドさんは食い入る様に見つめている。

 家に入って来た時は二重の意味で声を失っていたけど、暫くすると慣れたのか、今は足元にいるセバスチャンの頭を優しく撫でている。セバスチャンもその手付きにうっとりしている様だ。


 そして今回の一番の目玉と言っても過言ではない、大きなお皿にキレイに盛り付けられた数種類のサンドイッチ。

 茹で卵を粗く刻み、マヨネーズで和えた玉子サンド。

 千切りにしたキャベツ(キャベジ)と豚肉を揚げて挟んだカツサンド。

 ベーコン、レタス(レティス)、トマトに、半分にカットした茹で卵を挟んだBLTサンド。

 そして最後に、生クリームにバナナとオレンジ(オランジュ)を挟んだフルーツサンドの四種類を盛り付けてある。


「おぉ~! やっぱり美味そうだな!」


 何を隠そうこのメニュー、イドリスさんが初めてお店に来てくれた時に出したもの。イドリスさんはユウマを膝に座らせると、早く食おう! とコンラッドさんと僕も早く席に着く様に急かしてくる。

 本当に子供みたいな人だなぁと笑ってしまう。


「お待たせしました! さ、皆で手を合わせて~? いただきます!」

「「「いただきます!」」」


 トーマスさんとオリビアさんはピザを美味しそうに頬張り、ハルトとレティちゃんはオムライスをパクリ。ユウマはまいしゅ! と嬉しそうにポタージュをスプーンに掬い、味わって飲んでいる。


「メフィスト、今日はいっぱい飲むねぇ」

「んく、んく」


 メフィストはたくさん遊んでお腹が空いたのか、僕の膝で粉ミルクを凄い勢いで飲んでいる。隣に座るコンラッドさんも、その姿を目を細めて眺めている。


 ふと顔を上げると、イドリスさんが嬉しそうにサンドイッチに手を伸ばす姿が目に入る。コンラッドさんはその姿をそっと窺う様に見つめている。

 そして大きな口を開けてバクっと一口。ん~! と嬉しそうな声が漏れていた。



「あ、イドリスさん、そのサンドイッチどうですか?」


 イドリスさんが一種類ずつ食べたところで声を掛ける。

 隣に座るコンラッドさんが見るからにソワソワしていたので僕が代わりに訊いてみると、満面の笑みを浮かべ、


「やっぱ美味いな! 最高!」


 グッと親指を立てて満面の笑み。


 それを聞いて安心したのか、コンラッドさんは口元を綻ばせる。

 イドリスさんがお替りに手を伸ばしたところで漸く種明かし。


「今日のサンドイッチ、全部コンラッドさんが作ったんですよ」


 ね? と隣に座るコンラッドさんに声を掛けると、ユイトくんみたいに上手には出来ませんが……、と少しバツが悪そうに顔を上げ、



 食べたい時は、今度からは私が作ります……



 と、恥ずかしそうに呟いた。


 まっ赤な顔で口を開けたままポカンとするイドリスさんには悪いけど、向かいに座るトーマスさんとオリビアさんのニヤけるのを我慢する顔が面白くて、つい我慢出来ずに笑ってしまった。


 そしてまっ赤になった二人を見守っていたハルトたちも、よかったです! とにこにこ笑顔を浮かべている。


「いどりすさんと、こんらっどさん、らぶらぶです!」

「いどりしゅしゃん、らぶらぶ!」

《 らぶらぶって、なぁ~に? 》

「らぶらぶ……! とってもなかよしってこと!」

「「「ねぇ~!」」」


 ハルトとユウマ、レティちゃんの言葉に、更にまっ赤になったお二人が可愛くて、僕は何だかお腹も胸もいっぱいだ。


「おじぃちゃんも、おばぁちゃんも、らぶらぶです!」

「じぃじとばぁばね、いっちゅもらぶらぶ!」

「ねるときもいっしょで、らぶらぶなの!」

「こらこらこら……!」


 まさか自分たちにも矛先が向くとは思わなかったのか、今度はトーマスさんとオリビアさんがまっ赤になり慌て始めた。


「おにぃちゃんも、あれくさんと、らぶらぶです! おにぃちゃんのこと、とくべつって、いってました!」

「あれくしゃん、にぃにのこと、だぃちゅきなの! にぃにもね、おてがみみて、じぇんじぇんねないの!」

「おにぃちゃんも、あれくさんとらぶらぶなの! あれくさんのはなしすると、いっつもうれしそう!」

「こらこらこら……!」


 まさか僕にも矛先が向くとは思わず、自分でも分かるくらい顔が熱い。



《 らぶらぶ……。勉強になるな…… 》


 僕の足元で蒸しパンを頬張りながら、片目をチラリと開けて呟くセバスチャンの声が、妙にハッキリ聞こえる……。


 この日の夕食は何故か、子供たち以外は全員まっ赤なまま食事をする羽目になってしまったのだった……。



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