195 大人のお子様プレート
「皆さぁ~ん! 夕食出来たので席に着いてくださぁ~い!」
「「「「はぁ~い!」」」」
さっきはフレッドさんにしてやられた感が否めないけど、お米が色んな所で食べれる様になれば嬉しいし、まぁいっか!
僕が呼び掛けると皆は各々席に着き、ソワソワしながら待っている。
「お待たせしました! 今日は特別に盛り合わせになってます!」
「「「「おぉ~~~!」」」」
そう言いながら、皆の前にオムライスをのせたお子様プレートもどきを並べていく。
さすがにこの人数だと、炊いたお米が足りなかった。
「これはオムレツでは……?」
クリスさんがマジマジとプレートを見つめ、そう訊ねてくる。
「これがお米を使ったオムライスという料理です! 鶏肉や野菜をご飯と一緒に炒めてトマトソースで味を付けています。上にはふわふわのオムレツと同じものがのっているので、一緒に召し上がってください! ハルトとユウマも大好きな料理なので、皆さんにも気に入ってもらえると嬉しいです!」
一枚のプレートの中に、ミニオムライスとハンバーグ、鶏の唐揚げとサラダを一緒に盛っているから、これなら大人でも楽しめると思う。
大人のお子様ランチ? みたいな感じかな?
「ごうかです……!」
「しゅごぃねぇ……!」
「見ているだけでワクワクします……!」
「おいしそう……!」
ハルト、ユウマ、ライアンくんにレティちゃんはお子様プレートを前に目をキラキラさせている。
旗があれば可愛かったんだけど、それはまた次の機会に!
ライアンくんにはウェンディちゃんの分もあとでお肉抜きで準備するねとそっと耳打ちすると、嬉しそうに笑みを浮かべてくれた。
ふとライアンくんの左肩辺りが光った気がしたけど、もしかしたらそこにいるのかもしれない……。
「ユイトさん、私も何故か胸が高鳴るのですが……」
「これは絶対に美味い……」
フレッドさんもサイラスさんも、プレートを見て興奮しているみたいだ。
アーロさん、ディーンさん、クリスさんに商会の人たちもうんうんと頷き、ゴクリと唾を飲み込んでいる。
「あぅ~……!」
自分の分が無いとでも言う様に、トーマスさんに抱えられたメフィストが不満げな声を上げる。
「メフィストのご飯はこっちだよ~」
「うぅ~?」
「お! これもコメか……! 色々出来るんだな……」
僕がメフィスト用に準備したのは、十倍粥。
それに南瓜をペーストにしたものを少しだけ混ぜ込んである。
少しだけ甘めにしたから、食べてくれるといいんだけど……。
トーマスさんも感心した様にお粥を眺めている。
「メフィストのも皆と同じお米だからね~!」
「あ~ぃ!」
皆と一緒と分かっているのかは分からないが、さっきよりは機嫌が良さそうだ。
「さ、冷めないうちに食べましょう! オムライスは出来ませんが、他のならお替りできますので!」
「「「やった……!」」」
食いしん坊なサイラスさんたちは嬉しそうにガッツポーズ。
心なしか、表情があまり動かないクリスさんも嬉しそうに見える。
「では、お米を持って来てくれたローレンス商会の皆さんに感謝を込めて! いただきます!」
「「「「いただきま~す!」」」」
皆は早速ウキウキとした様子でスプーンを手に取った。
クリスさんたちは急に自分たちの事が出てきて驚いていたけど、嬉しそうな雰囲気。
そして皆はオムライスをスプーンで掬い、そっと口に運ぶ。
僕は皆がオムライスを頬張る瞬間を見届けようと、ちょっと緊張気味だ……。
気に入ってもらえるといいんだけど……!
「ん~~! ほぃひぃ~~!」
「これは美味い……!」
「初めての味です……!」
食べた人たちから次々に声が上がる。
ハルトとユウマも夢中になってオムライスをパクパクと頬張っているし、ライアンくんとレティちゃんも美味しいと言って興奮気味。
皆、スプーンを動かす手が止まらない。
オリビアさんも幸せだと表情が物語っているし、皆には好評の様でホッと胸を撫で下ろす。
これで僕も安心して食べれるよ!
……ん! やっぱり美味しぃ~~~!
一口食べると、久し振りのお米に感動が押し寄せてくる。
オリビアさんの焼いてくれた卵もふわふわトロトロで、チキンライスの味付けも上出来!
口の中が幸せだ……!
「さっきのコメも甘味があって美味しかったですが、味付けを加えただけでこんなに満足感が出るんですねぇ!」
「これは子供だけでなく、我々も夢中になりますよ!」
「この卵のふわふわとした優しい口当たりが、さらに味を引き立てていますね……!」
「まさかあのコメがこんなに美味いとは思いもよりませんでした……!」
商会の人たちは、正直期待していなかったコメの付加価値を見出せたと興奮気味だ。
気に入ってもらえた様で何よりです……!
「あ、皆さん! このお米は、焼いたお肉と一緒に食べると、か・な・り! 美味しいですよ!」
僕がニコッと微笑むと、商会の皆さんは目を真ん丸くして、これは会長に知らせねばと意気込んでいた。
これでまた注文しやすくなるかも!
「メフィスト、どうだい? 美味しいかい?」
「ん~まっ!」
「ハハ、そうか! 美味しいか!」
トーマスさんの声が聞こえそちらを向くと、メフィストを大事に抱えて離乳食を食べさせている真っ最中。
にこにこしながら、お粥をもぐもぐと食べるメフィストを優しい目で見つめていた。
口元についたお粥をスプーンで優しく取るトーマスさんの姿に、商会の人たちは呆然としている。
「あんな優しい顔をするのか……!」
「噂は本当だったんだな……!」
ヒソヒソと小声で話してるけど聞こえてますよ……!
もうサイラスさんたちは慣れたのか夢中でオムライスを食べているんだけど、知らない人にしたらまだまだ衝撃なのかもしれない……。
トーマスさんって一体、皆にどんな風に思われてるんだろう?
気になるなぁ……。
「コレを食べたら、アーロさんとディーンさんには明日の準備をお願いするつもりなんですけど……。大丈夫ですか?」
夢中でお替りをするお二人を前に、僕は恐る恐る訊ねてみる。
もしかしたら忘れているかもしれないし……。
「「もちろんです!!」」
二人はいい笑顔で快諾してくれ一安心。
これで明日の準備は間に合いそう……、かな?
「おにぃちゃん、あしたもおこめ、たべたいです!」
「ゆぅくんも! おこめ、ありゅ?」
口元にトマトソースを付けたハルトとユウマがおねだりしてくる。
お米が食べれてよっぽど嬉しかったんだな~。
オリビアさんがあらあら、と笑いながら二人の口元を拭っている。
「うん! もちろん用意するよ~! あ、どうせなら焼きおにぎりにしようか?」
醤油もあるし、バーベキューだし、僕も食べたいし……!
「ほんとう!?」
「やきおににり! ゆぅくんしゅき~!」
「じゃあ明日は、普通のおにぎりと、焼きおにぎりも作るね!」
「「うん!」」
二人の嬉しそうな顔が見れて、僕もすっごく嬉しい。
やっぱり食べ物って大事だなぁと、今日はしみじみ実感した。
*****
「ユイトくん、改めて見るとスゴイ量よね……」
「そうですね……」
夕食後、オリビアさんとアーロさん、ディーンさんと一緒に明日のバーベキューの準備に取り掛かる。
作業台の上にはこんもりと載った大量の肉・肉・肉……。
そして野菜も肉には劣るけど、こちらも大量……。
アーロさんとディーンさんもその量に少し引き気味だけど、これが明日全部無くなると思うといっそ清々しい気持ちになる。
お金は明日、イドリスさんが予め参加者から集めて持って来てくれるから安心だ。
と言っても、新人は腹いっぱい食えとまたイドリスさんがほとんど出すんじゃないかとトーマスさんが言っていた。
あの人ならやりそうだな……。
美味しいサンドイッチをたくさん作らなきゃ……!
クリスさんとはまた正式に書類を持ってくるという事で話が進み、お米や粉類の納品は継続的になりそうだ。
ハルトたちはトーマスさん、フレッドさん、サイラスさんが面倒を見てくれている。
商会の人たちが帰ってすぐにウェンディちゃん用に肉抜きのオムライスとじゃが芋のチップスを準備すると、大喜びで僕の周りを飛び回っていた。
キラキラしてキレイだったけど、ずっと目で追っていると目が回りそうなのですぐに止めた……。
皆はお腹いっぱいになって目がとろんとしていたから、あの様子だと僕たちが戻った頃には寝てるかもしれないな。
「じゃあ早速、取り掛かりましょうか……」
「そうですね……」
まだ前日だと言うのに、この大量の肉を前にちょっとだけ胸やけが起きそうになった……。
明日はとうとうバーベキュー当日!
レティちゃんとライアンくんの快気祝いと一緒だから、二人が喜ぶものも作らないと!
「皆さん、頑張りましょう……!」
「「よろしくお願いします……!」」
明日はどうか、問題なく皆で楽しく過ごせます様に!




