192 秘伝のタレの作り方?
「さて! 片付けも終わったし、私はトーマスたちと一緒に追加の食材買ってくるわね~!」
「はい! お願いします!」
あのお昼の騒動後も難無く営業は続き、通常よりも長めの営業時間に来た人たちは皆喜んでいた。
やっぱり夜も開けた方が、皆は喜んでくれるのかもしれないなぁ~。
オリビアさんはトーマスさん、アーロさん、ディーンさんと一緒に明日のバーベキュー用のお肉と野菜を買い足しに行ってくれた。
営業終了後のお店の食材が減った後じゃないと、冷蔵庫に入りきらないって分かってるからね!
力持ち三人を連れて行ったし、大量の食材が来る事は間違いない。
「じゃあ、これから皆には、お肉用のタレとお菓子作りを手伝ってもらいます!」
「「「「はぁ~い!」」」」
「あぃ~!」
そして僕たちは今何をしているかと言うと、明日の為にハルト、ユウマ、レティちゃん、ライアンくんにバーベキュー用の焼き肉のタレと、ウェンディちゃんとアドルフたち用のお菓子を作ってもらう事にした。
これなら皆が食べるし、量が多いから僕とオリビアさんも大助かりだ。
メフィストは留守番組のフレッドさんに抱っこされ、僕たちの応援をしてくれている……、のかな?
「あと、このお肉にはまだ味が付いてないんだけど、この秘伝のタレを漬け込む事によって、柔らかくて、ジュ~シィ~なお肉に変わります……!」
そう言って僕は、皆が興味を持つように予め作っておいたタレが入った瓶を見せる。
「じゅ~しぃ~……」
「おぃちぃの~?」
「ひでん……」
「そ、そんな物が……」
案の定、皆の視線は瓶に釘付けだ。
カウンター席で見守るフレッドさんも、僕が持つ瓶をジッと凝視している。
「そうだよ……。皆が夢中になっちゃうかもしれないから、内緒にしてたんだけど……! これを今から、皆に覚えてもらいます……!」
「「「「おぉ~~……!」」」」
「あぅ~!」
子供たちの掴みはオッケー! 中身は何の変哲もないタレなんだけどね!
メフィストも元気よく声だけの参加だ。
抱えているフレッドさんと、隣に座るサイラスさんの顔が緩んでいる。
「では早速、皆で作っていきましょ~!」
「「「「はぁ~い!」」」
「あぃ~!」
「ユイト先生……!」
すると、ライアンくんが恐る恐る手を挙げた。
料理を教えるときは、ライアンくんにユイト先生と呼ばれてるけど少し照れくさい。
「ライアンくん、どうしたの?」
「あの、このボウルに作るんですか……?」
「うん! 明日はいっぱい来るからね! 頑張って作ろう……!」
「は、はい……!」
ライアンくんが見つめる方には、大きな大きなボウルが四つ。
二つには一晩お肉を漬けておく漬けダレ。
もう二つには、焼いたお肉を漬けて食べる甘めの焼き肉ダレを作ってもらう。
あとは塩胡椒のみと、レモンで食べる予定だから、たぶん大丈夫……。足りるハズ……。
「じゃあ、ハルトとライアンくんには一晩漬ける用のタレを。ユウマとレティちゃんには、焼いたお肉を漬ける甘いタレを作ってもらいます!」
「「「「はぁ~い!」」」」
早速二手に分かれて作業開始。
まずハルトとライアンくん組が用意するのは、醤油にすりおろしたにんにく、ジュンマイシュに砂糖、胡麻油。そしてお肉を柔らかくするためのすりおろした大量のオニオン!
子供用にはこの材料だけを使う。
大人用には唐辛子を加えるんだけど、目を擦ったりしたら危ないのでこれは僕が後から加える。
そしてユウマとレティちゃん組には、ソーヤソースにすりおろしたガーリクと生姜、砂糖に煮立たせたミリン、ネギに煎ったセサミとセサミ油。
そして味の決め手になる林檎のジャム。
朝食用にオリビアさんが作ってるジャムだけど、これを入れるとフルーティーな甘味が加わってとっても美味しくなる。
これはソフィアさんに教えてもらったタレの作り方を応用してる。だって美味しいんだもん……!
味噌があれば加えたかったんだけど、それが無くても十分美味しいタレに仕上がるから子供たちにはいいと思う。
「ハルトとライアンくんには大変な作業を任せちゃうんだけど……。辛かったらすぐに言ってね?」
二人にはオニオンをすりおろすという過酷な作業が……。
僕がすると言ったんだけど、全部やってみたいと言う二人の意思を尊重して任せる事に。
一応換気はしているけど、かなり辛いと思う……。
「だいじょうぶ、です!」
「私もやります!」
「オニオンの汁は目に入ったら痛いから、手で擦らない様に気を付けてね?」
「「はぁ~い!」」
元気よく返事をする二人だけど、大丈夫かなぁ……?
念のためにマスクだけはしてもらったけど……。
「にぃに~! ゆぅくんとえてぃちゃん、これしゅるの~?」
「おいしそう……!」
ユウマとレティちゃんの前には、美味しそうなメーラのジャム。
ジャムが甘いと知っているからか、ユウマはこれをお肉に使うの? と不思議そうに見つめている。
「うん! そうだよ! このジャムが味の決め手になるから、二人にはちゃんと味見をしてもらうからね? 責任重大だよ~?」
「しぇきにん……!」
「が、がんばる……!」
ふんふんと鼻を膨らませ、二人は早速、真剣な表情で分量を量っている。
お料理に関しては少しだけ先輩のユウマが、秤の使い方をレティちゃんに教えているのが微笑ましい。
僕も他の仕込みをやってしまおうと顔を上げると、店の窓辺りに人影が……。
何だろうと思っていると、その人物は扉の方へと歩いてくる。
「こんにちは」
扉が開くと、そこには先日あったばかりのローレンス商会のクリスさんの姿が……。
「あ、クリスさん! こんにちは……! どうされたんですか?」
確か納品はまだ先だった筈なんだけど……?
すると、クリスさんはそれが分かっていた様で一枚の紙を僕に手渡す。
「これは……?」
「先日ユイトさんがおっしゃっていた商品の見積書です。今回は支店に僅かですが在庫もありましたので、試供品として取り急ぎお持ち致しました」
そう言って、店の外にいる商会の人……、かな? おじさんと若い男性に、商品を店の中に運ぶよう指示を出している。
フレッドさんたちもこちらに興味津々だ。
「え? え? 僅かって言ってましたよね……?」
「はい。ユイトさんの御眼鏡に適うといいのですが……」
そう言って店の中に運ばれてきたもの……。
そこには大量の麻袋に入った……、
「お……、お米だぁ~~っ!!!」
作品へのブックマークに評価、ありがとうございます。
投稿を始めて一日一回は更新していたのですが、仕事の方が多忙になってきて寝る時間を確保しないと体力がもたない為、今週から更新の頻度が落ちてしまうかもしれません。
毎回読んで頂いてる皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいです…。
休みの日には多めに更新出来るよう頑張りますので、何卒宜しくお願い致します。




