表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/238

177話 天使少女の現代旅行記・その28『真正面から堂々と叩き潰す』

「ふぁ……」


 屋敷の表門。

 そこの警備を任されている男は、一目で一般人ではないとわかる風貌をしていた。


 短刀。

 及び、拳銃。

 そんなものを隠すことなく、堂々と持ち歩いている。


 他の男達も同様だ。

 計四人の武装した男達が表門の警護に当たる。


 が、気が緩んでいた。

 時にあくびがこぼれるくらい、気を抜いていた。


 それも仕方ない。

 『長良の要塞』を攻める者なんて、いるわけがない。


 国に手を回しているため、国が動くことはない。

 唯一の懸念材料だった藤堂は、なぜかわからないが大打撃を負い、逃げるように表舞台から去った。


 敵はいない。

 故に、完全無欠。

 難攻不落の要塞だ。


 そんなところにやってくる者がいたとしたら……

 それは、よほどの阿呆だろう。

 あるいは……


「ごきげんよう」


 化け物。


「……あ?」


 いつの間にか、見知らぬ少女がいた。

 その姿を見るに、女子高生だろう。

 日本人離れした容姿をしているが、日本語は丁寧に口にしていた。

 日本生まれの外国人だろうか?


 門番の男はそこまで考えて……

 自分の務めを果たすべく、少女を睨みつけて、ドスの効いた声をぶつける。


「迷子か? どこの誰か知らねえが、とっとと失せろ」

「いえ。わたくし、迷子ではありませんわ」

「あん?」

「こちらに用がありまして」

「なんだと?」


 門番達は顔を見合わせた。


 長良の要塞に用がある?

 もしかして、カチコミだろうか?


 いや、バカな。


 門番達は、すぐにそのバカげた考えを消した。

 自衛隊でもなければ落とせない要塞だ。

 そんなところに、たった一人の女子高生が殴り込みをかけてくるわけがない。

 なにかしら敵意を持っていたとしても、真正面からではなくて、どこか抜け道を探そうとするはずだ。


「おい、旦那に連絡をとってくれないか?」

「こんな子供が来るなんて話、聞いてないが……まあ、旦那の関係者って可能性もあるからな。すぐに連絡を取る」

「ちょっと待っててくれ、嬢ちゃん。今、上の者に連絡を取るからな」

「あら? ということは、わたくしを中に入れていただけるので?」

「ちゃんと確認がとれたらな。ああ、そうそう。名前は?」

「イリス、ですわ」


 イリスはにっこりと笑い、軽くスカートの裾を摘みつつ、優雅にお辞儀をした。


「イリス、イリス……やっぱり予定にねえな。それに、旦那の親戚や交友関係に、そんな外国人がいるなんて話、聞いたこともねえ」

「おい、旦那につながったか?」

「……ダメだ。すぐ保留にされた。例のガキを捕まえたから、今後のことを考えているんだろうな」

「どうするかな……勝手に中に入れたらまずいが、旦那の知り合いだった場合、適当な対応をする方がもっとまずい」

「少々、よろしくて?」


 イリスが会話に割り込んだ。

 相変わらず笑顔は浮かべたままだ。


「なんだい? もしかして、嬢ちゃんから旦那に連絡を取ってくれるのかな?」

「いえ。そうではなくて……さきほど、例のガキを捕まえた、と言いましたが、それは柚月芹那で間違いありませんか?」

「……なんで、その名前を知っている?」

「わたくし、彼女の友達なので」

「……あぁ、なるほど」


 門番達は理解した。


 この少女は、主の知り合いなどではない。

 友達を心配してやってきた、心優しい少女。

 そして、特大の阿呆だ。


 冷たい目をして、懐から取り出した拳銃を少女の額に突きつけた。


「一緒に来てもらうぞ」

「あら、ナンパですか?」

「オモチャだと思っているのか? 大した余裕だな」


 門番はイリスから銃口を外して、そして引き金を引いた。

 タンッ、と乾いた音が響いた。

 近くの石が弾けて砕ける。


「見ての通り、本物だ。痛い目に遭いたくないなら、おとなしくついてこい」

「俺達、ついているのかもな。本当にあのガキの友達ってなら、言うことを聞かせやすくなるだろうしな」

「ああ、まったくだ」


 門番達は下品に笑い、


「ふむ……やはり、ここに芹那さんがいるみたいですわね。問題は、どこにいるか、ですが……まあ、この門にいるということはないでしょう」

「さっきからなにを言っているんだ? さっさとこっちに……ぎあっ!?」


 門番の一人がイリスに手を伸ばして……

 逆にその手を掴まれて、くいっ、と捻られた。


 手がありえない方向に曲がる。

 骨が折れて、肉が断裂する鈍い音が響く。


「あっ、があああああ!? お、俺の腕が……このっ、クソガキがぁあああああ!!!」


 それでも戦意を喪失しないのは、さすが裏社会のプロといったところだろう。 

 門番は激怒しつつ、迷うことなくイリスに銃を向けて、引き金を引いた。


「あいたっ」

「……は?」


 銃弾は確かに直撃したはずだ。

 しかし、「あいたっ」という気の抜けたような声で済まされてしまう。


「いきなり、なにをなさるのですか? まったく、レディの扱いがなっていませんわね」

「ふ、ふ……ふざけるなぁっ!!!」


 残りの銃弾、全部を撃つ。

 他、三人の門番も弾切れを起こすまで銃を連射した。


 しかし、今度は弾丸が少女のところに届くことはない。

 その手前でピタリと止まり、宙に浮いてしまう。

 まるで映画のワンシーンだ。


「それ、そこそこ痛いので、防がせてもらいますわね」

「なっ、あ……」

「な、なんだよ、こいつ……」

「ば、化け物だ……」

「……正解ですわ♪」


 イリスは、ニヤリと笑い。

 そして、背中に八枚の翼を広げてみせた。


「さあ……せいぜい、虫らしく涙ぐましい努力で抵抗してみてくださいな? もっとも、それを飲み込み、踏み潰して、蹂躙させていただきますが」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://book1.adouzi.eu.org/n8290ko/
― 新着の感想 ―
[一言] >「ば、化け物だ……」 >「……正解ですわ♪」 いやいやいやw そこは「違いますわ、私は悪魔ですわ♪」でしょw
[気になる点] イリスは、ニヤリと笑い。 そして、背中に八枚の翼を広げてみせた。 「さあ……せいぜい、虫らしく涙ぐましい努力で抵抗してみてくださいな? もっとも、それを飲み込み、踏み潰して、蹂躙させ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ