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メイドのお仕事

作者: 衣谷強
掲載日:2024/10/31

思い付き短編です。

お楽しみいただければ幸いです。

「アーシャ! 貴女はまた大事な積荷を……!」

「ご、ごめんなさーい!」


 またか……。

 凄まじい音に続いて、我が家のメイド、アーシャが、メイド長のオーサに叱られているのが聞こえてきた。

 やれやれと溜息をつきながら、僕は自室を出て階段を降りていく。


「アーシャ。今度は何をやったんだ?」

「あ、坊ちゃま!」

「アーシャ! 旦那様とお呼びしなさい!」


 昔ながらの呼び方に、オーサの叱責が飛んだ。

 僕は別に『坊ちゃま』呼びでもいいんだけどな……。


「は、はいー! 旦那様すいませーん!」

「まぁいいよ。それでどうしたの? すごい音がしたけど……」

「旦那様。私の不徳の致すところでございます。アーシャがゴチエ商会からの積荷をひっくり返しまして……」

「あー……」


 確かゴチエ商会からは、陶器を買ったはずだ。

 アーシャの足元で逆さまになっている木箱の中身は、おそらく絶望的な状態だろう。


「……じゃあ我が家の取り決めに従って、給金から弁償する形になるね」

「……はい」

「オーサ、被害額は?」

「金貨六十枚相当です」

「となると、追加で半年はただ働きだね……」

「はい……」

「追い出されないだけ感謝なさい! さ! 片付けに行くわよ!」

「わ、わかりました!」


 オーサに引きずられるように、アーシャは荷物を持って倉庫へと向かった。

 僕の父は変わり者だ。

 借金で売られそうになっている子を買い取り、家で奉公させながら教育を施し、借金分を仕事で相殺すると、新たな奉公先を探して送り出す。

 アーシャもその一人だ。

 だがアーシャはおっちょこちょいで、よく物を壊したりお客様に失礼を働いたりする。

 その度に弁償という形で借金が増え、十年経ってもまだ完済の目処が立たない。


「……困ったなぁ」


 アーシャが我が家にいてくれるのは嬉しい。

 子どもの頃からずっと側にいた存在。

 彼女が家を出る事を考えるだけで胸が詰まる。

 だが今のままでは使用人と主人。

 こんな気持ちを今伝えたら、拒否権のない命令になってしまうだろう。

 それでは駄目だ。

 だから早く借金を返済してほしいのになぁ……。


「はぁ……」


 僕の溜息は深くなるばかりだ……。




「……この白い粉が話していた御禁制の薬ですか……。壺の底を二重底にするなんて、先輩じゃなければ割るまでわからないですね……」

「ええ、これでうちを陥れようとするゴチエ商会の尻尾は掴んだわ。まさか運び込んだ当日に割られるとは思わないでしょう」

「私のドジの勝利ですね!」

「……ごめんなさいアーシャ。お家のためとは言え、あなたに罪を着せる事になってしまって……」

「いいんですよ! ドジなのは本当ですし、弟みたいに思ってる坊ちゃ……、旦那様を守るためなら、弁償の一つや二つ、楽勝です!」

「……ありがとうアーシャ」

「それに私、借金全部返しちゃったら出て行かないといけないですよね? 借金が減らなければ、私はいつまでもここで働けますし、良い事ずくめです!」

「まったく、あなたって子は……。なら今後も私が見破った害意ある品は、アーシャにうっかり壊してもらう事にするわ」

「お任せくださいっ!」




 どんがらがっしゃーん!


「アーシャ・クーラ!」

「ごめんなさーい!」

「……またか……」


 メイドのお仕事は続く。

 主人の溜息をより深くしながら……。

読了ありがとうございます。


え?

最後のがやりたかっただけだろって?

……な、何を根拠に……(震え声)。


お楽しみいただけましたら嬉しく思います。

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― 新着の感想 ―
こ、これは・・・ お仕置きされるメイドを・・・(*´Д`)ハァハァ (やりませんよ、他でなら掲載しますが(*´Д`)ハァハァ
拝読させていただきました。 ここの主人は徳があるのでしょうね。 ここまで陰でメイドたちに慕われるとは。
きっと、某ナースの朝倉さんも(違 それはそうとまさかの真相でしたね! ありがたい……というか弟扱い……旦那の気持ちはいつ伝わるやら( ´ー`)フゥー...
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